7月5日に神戸元町で行われた、在特会のヘイトスピーチに対するカウンターに参加した。10人あまりの差別主義者に対し、100人近くのカウンターが集結し、差別主義者を圧倒していた。
ヘイトスピーチを行ったのは、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」。
在特会は設立10年近くになる人種差別団体の草分けで、特に在日朝鮮・韓国人を排斥することを主な目的として活動している。
「在日朝鮮・韓国人は『在日特権』を有しており、日本人より不当に得をしている」と主張、日本人の嫉妬心を煽ることにより在日を攻撃するのだが、この「在日特権」は、まったくのデタラメ。根も葉もないデマである。
出発点がデタラメなのだから、在特会の主張は、その先も全てがデタラメ。嘘とデマで塗り固められた妄言を、街頭宣伝やデモにより街角にたれ流す。
これは悪質なヘイトスピーチで、深刻な被害を生み出す犯罪だ。在日朝鮮・韓国人を深く傷つける言葉の暴力であるとともに、関東大震災後の日本でも起こったような、朝鮮人虐殺の種をまく。
1995年に日本も加盟した「人種差別撤廃条約」に、ヘイトスピーチは「法律で処罰すべき犯罪」と明記されているにもかかわらず、その適用を日本は留保し、人種差別を規制する法律は、まだ制定していない。
しかし法律の成立を待っていては、被害が拡大するばかりだからと、日本では2年前から、市民の自主的なムーブメントとして「カウンター」が立ち上がり、ヘイトスピーチに対する抗議活動を続けている。
カウンターは2年間で大きな成果を上げ、一時は100人以上を集めるのが普通だった在特会のデモや街宣などへも、参加者は激減している。
しかしそれを根絶するには至っておらず、きのうも神戸元町駅前で、在特会のヘイト街宣が行われたわけである。
この2週間ほど、関西でヘイト街宣が頻発していた。うちの近所の西院では、在特会元会長・桜井(本名 高田)誠も現れる街宣が無告知で行われたし、東大阪市・布施では、2週にわたり、毎日ヘイト街宣が行われた。
関西カウンターの人たちは、それらに対応しなくてはならなかったから、かなり疲れていたはずだ。おれ自身もそのうちの2回に参加し、できればきのうは、カウンターへは行きたくなかった。
しかし神戸のヘイト街宣は、いつもカウンターが少ないのだ。差別主義者は巨大な拡声器を使うし、さらに本来は彼らを規制すべき警察が、いまだ人種差別規制法がないからと、逆に彼らを保護するから、カウンターは人数が少ないと、どうしても劣勢になってしまう。
そこできのうは少し頑張って、予定を一つキャンセルして神戸のカウンターに参加した。
すると同じ気持だった人が多かったということだろう、きのうはいつもの倍ほど、100人近くのカウンターが集結し、10人あまりの差別主義者を完全に圧倒できるに至った。
カウンターの目的はいくつかあり、まずは差別主義者にヘイトスピーチを楽しませないこと。差別主義者はヘイトスピーチを、一つの娯楽として捉えているのだ。
そこでカウンターは差別主義者を罵り倒し、差別主義者に不愉快な思いをさせる。在特会のヘイトデモ・街宣への参加者が激減したのは、この効果が大きかったのだと思う。
ところが今現在、ヘイトデモや街宣に出てくるのは、そうして何度となく罵声を浴びながらも、それに挫けなかった奴らなのだ。
いわば筋金入りのヘイト中毒患者であり、こいつらには、すでに罵倒はあまり効果がないのである。
それどころか、こいつらは現在、「いかにカウンターに対抗できるか」を中心テーマにしつつある。
カウンターの罵声を逆手に取り、カウンターは大多数が日本人であるにも関わらず、「在日である」と言い募り、さらに差別が多数者の少数者にたいする圧倒的な数の優位を背景に行われることを思えば、まったく意味を成さない「日本人に対するヘイトスピーチ」などと主張する。
そこでカウンターの現場では、現在ではむしろ「一般の通行人への周知」が重要なテーマになっている。
罵り合いだけだと、どうしても「カウンターも悪い」と通行人に思われてしまいがちだから、「そうではない」ことをきちんと知らせる必要があるのである。
そこで登場するのが、まずはダンマク。
これは差別主義者より、むしろ一般の人に見えやすいように張られる。
またチラシを配ったり、トラメガによって解説をしたりもされる。
反対側でビラ撒きしてるけど、全然街宣の声聞こえません。#レイシストは元町から失せろ pic.twitter.com/eXrGeNtTla
— まえ田まえ田 (@KaoruGillespie) July 5, 2015
おれもきのう、トラメガで周知をしていたら、通りがかったご婦人お二人から、
「あいつら、差別でしょ。応援してるよ、頑張って!」
と声をかけられた。
それからきのうは、「とても新しい」と思える戦法が、カウンターに登場した。
延々と「コール」をくり返すのだ。
カウンターの大きな目的の一つとして「ヘイトスピーチをかき消し、聞こえないようにする」ことがある。ヘイトスピーチは、被差別者の耳に入れば心を深く傷付けるし、日本人の耳に入れば、差別を拡大する種をまく。
罵声はこの目的のためにも、一つの有効な手段なのだが、それはカウンターが差別主義者に、近距離から罵声を浴びせることができた場合の話である。
ところが神戸元町駅前の街宣では、カウンターは警察により、差別主義者からかなり離れたところに押しやられ、個別の罵声は、トラメガを使っても届きにくい。
そこで「コール」が活躍するのだ。これは布施でのカウンターで初めて見たもので、カウンターの先輩がやり始めた。
要は最近の学生デモの、ラップ調のコールを真似したもので、
「差別はやめろ!ネトウヨ帰れ!」
などと、全員が声を合わせ、テンポよくくり返していく。
きのうは、単純な「帰れ!」コールだったのだが、地声であってもそれが同じリズムで集まるから非常な大音量になり、ヘイトスピーチはほとんど聞こえなくなっていた。
またコールは、個々の罵声に比べ、一般の人にとっても聞き取りやすいし、印象もいいのではないかと思う。カウンター現場の状況によっては、とても有効なやり方だと思った。
きのうは1時間半のヘイト街宣の時間中、100名近いカウンターによって以上のようなアクションが展開され、ヘイトスピーチを圧倒できた。
警察に守られて集団下校。 pic.twitter.com/b1UiqRYs1G
— 李信恵 이(리)신혜 (@rinda0818) July 5, 2015
差別主義者は街宣を終え、警官に守られながら、逃げるように帰っていった。
カウンターが終了し、あとは仲間と慰労会。
けっきょく2軒回って、終電ギリギリで家に帰った。
きのうは、カウンターの現場で初めて顔を見る、やや年配の人も多かった。
こうしてカウンターの層が厚くなってくることは、心強い限りである。
◎参考サイト
◎参考書籍
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