きのう京都で「戦争立法に反対する学生デモ」が行われ、参加してきた。主催は「SEALDs KANSAI」、先週金曜、国会前で大規模な抗議行動をおこない、テレビなどにも大きく取り上げられた「」の、関西版という位置づけだ。
1600人という、当初の予想を大幅に上回る人数でスタートしたこのデモ、到着時には2200人に膨れ上がり、大成功のもとに終了した。
市民運動が活発化したのは、4年前の東日本大震災と原発事故がきっかけになっているようだ。反原発運動が盛り上がり、毎週金曜に総理官邸前で抗議行動が行われるようにもなって、多数の人を集めるようになった。
その後政府が、おととし10月の特定秘密保護法案の強行採決、去年7月の集団的自衛権・閣議決定をし、さらに現在、戦争立法を強引に推し進めようとするに至り、危機感は急速に高まってきたようだ。
多くの市民団体が立ち上がり、デモや抗議行動をするようになっている。
学生による団体も、いくつか立ち上がってはいたようだ。しかしこれまでは、主流はもう少し上の世代、20代~40代の、原発事故以前から運動を続けていた人たちが中心となっていたようである。
ところが今回、「自由と民主主義のための学生緊急行動」として立ち上がったSEALDsが国会前で抗議をおこない、2500人もの人を集めた。つづいてSEALDs KANSAIがデモを大成功のうちに終了させ、いよいよ学生たちが運動の主役に躍り出てきた感がある。
おれ自身、デモなどに参加するようになったのは、この1年だ。原発事故以前は完全なノンポリで、小泉政権時代は小泉首相を支持していた。民主党の政権交代では民主党を支持したが、それも深い理由はなく、「そろそろ自民党にも飽きたから」というくらいのことだ。
それが原発事故があってから、初めて政治を深く考えるようになった。原発事故の事故処理がきちんと行われないのを見て、「これではいけない」と思うようになった。
しかし、運動には参加していなかったのだ。
原発事故のすぐ後に大阪で行われた反原発デモに参加してみたのだが、そのデモの雰囲気が自分にはなじめなかったことが大きい。
「サウンドデモ」だったから、新しい流れを汲んだ運動だったと思うのだが、おそらく昔から運動を続けてきた人たちなのだろう、ガスマスクをしたり、ヘルメットをかぶったり、毒々しいノボリを持ったりする人たちがいて、拒否反応が起こってしまった。
またその他の、おれと同様ノンポリと思しき人達も、音楽に合わせて「原発はんた~い」とコールするも、どうもチャラチャラしていて、緊張感がないように見えた。
「こんなことをしていても意味がない」と思ってしまったわけである。
ところが1年くらい前になり、運動のスタイルが急速に変化していることを知った。
まずとにかく、若い人たちが「普通にカッコいい」のである。
きのうのデモを主催した学生たちも、街を歩くのと変わらない、オシャレな格好をしてやってくる。
女の子などは、ほんとにカワイイ子が多く、きれいに化粧し、ワンピースなどを着ている子もたくさんいた。
ガスマスクやヘルメット、毒々しいノボリなどは皆無。プラカードも英文のものが多く、とにかくスタイリッシュなのである。
これは一つの理由として、現在の運動が、動員のされ方が以前の運動とまったく違うことがあるようだ。
以前の運動に来る人は、基本的に「組織動員」された人たちだ。動員の方法として、それ以外のやり方がなかったのだから、仕方がない。
ところが今は、ネットで人が集まるようになっている。きのうのスタート時に集まった1600人も、組織動員は全くなく、すべてツイッターやフェイスブックを見て集まった人たちだ。
そうして動員のされ方が違うから、集まる層も自ずと違ってくるもののようだ。
実際SEALDsやSEALDs KANSAIも、以前の学生運動のように大学内には拠点を持っていないようである。初めから大学を超え、ネットでつながった学生たちが、現実社会で行動を起こすようになっているのだ。
それから運動がスタイリッシュになったもう一つの理由として、以前から活動を続けてきた上の世代の人達が、「一般人」に支持を得られる運動のスタイルを、考えに考え続けてきていることがあるようだ。
「ガスマスクやヘルメットでは、一般の人の支持を得られない」と、はっきりと見切っているのだ。
なので、そのようないわゆる「極左」がきのうのデモに来ないよう、以前から広くアナウンスされていた。またもし極左が現れ、問題を起こすようなら、速やかにそれに対応するためのバックアップ体制も、きちんと組まれていたのである。
デモは、一般の人の支持を得られなければ、勝ち目はない。現在の運動は、その「勝つためのやり方」を、真剣に考え抜いてくる中で生まれてきたところもあるようだ。
午後2時の集合時間に、集合場所の円山公園へ行ってみると、すでに驚くほどたくさんの人が集まっていた。
Tシャツなどの販売もされている。
これは寄付も兼ねているから、早速購入。
まず主催者の学生たちによる趣旨説明。
そしていよいよ、出発する。
京都の街に、長蛇の列が伸びていく。
隊列は、当初はデモ隊前方に学生を中心とした「第1梯団」、後方にそれ以外の人達による「第2梯団」と、2グループが予定されていた。
しかし人数が膨れ上がったため、出発時に第3梯団が設けられ、さらに最終的には第4梯団もできたらしい。
デモのコースが、またスゴイ。
コース表できました。暑くなると思うので水分補給等お気をつけください。 pic.twitter.com/OH00Xvndm7
— SEALDs KANSAI (@SEALDs_Kansai) June 16, 2015
通常、円山公園を出発するデモは、四条通を西へ行き、河原町通を北上して、三条大橋下で終わる。ところがきのうは、三条大橋からさらに川端通を南下して、ふたたび四条通、河原町通をまわる「2周コース」。
さすが「若さゆえ」だと感心した。
デモのスタイルは、「サウンドデモ」。
先導するトラックに音響設備が積み込まれ、大音量のラップに合わせ、コーラーがコールする。
最近の新しいデモは、このコールが、いいのである。
昔のコールは、
「安倍首相は~~~、戦争立法を~~~、や~めろ~~~!」
など、美しい声の女性が先導する、間延びしたもののイメージがある。
ところが今のコールは、ラップの音楽に合わせるから、まず速い。ほとんど「ラップそのもの」といっていいものだ。
「シュウ・ダン・テキ・ジ・エイ・ケン・ハ・イラ・ナイ」
など、「エイ・ケン・ハ」のところがシンコペーションを踏んでいて、異常にカッコいい。
そしてラップだから、口調が怒っているのである。
「憲法」「まもれ!」「憲法」「まもれ!」
「安倍」「やめろ!」「安倍」「やめろ!」
の連続コールなど、ほぼ「怒号」といっていい調子になる。オシャレでカッコイイ集団が怒っているわけだから、これはかなりの迫力だ。
このオシャレでありながら、同時に「怒り」の感情を、直接的に表すことが、今の新しい運動の特徴ではないかと思う。
そうなのだ。おれたちは、安倍に対して怒っているのである。
その怒りの気持を、デモの怒りのコールが改めて、素直に思い出させてくれるのだ。
沿道でデモを見る人達も、おなじ気持ちになったのではないだろうか。
今回のデモが、600人もの人達を沿道から吸収したのは、この「カッコイイ人達の怒り」が、共感を呼んだことが大きかったのではないかと思う。
デモは出発から2時間あまりの後、無事に終着地点の京都市役所前に到着した。
最後にコールをくり返し、デモ隊は解散となった。
あとは三々五々、それぞれの場所へ。
おれは知り合った仲間たちと、ビールを一杯。
いま日本の政治状況は、日に日に悪化していると思う。
しかしこうして、一人ひとりが、小さくても声を上げることで、それを押し返していくことができるのだと、おれはきのうのデモに参加して、あらためて確信したのである。
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