きのうは、鶏団子と白菜のミルク鍋。
これは、「テッパン」なんすよね。
年末にはいる予定だった金が、未だにはいらず、
「来週になりそう」
だそうである。
こちらはしがない自由業、貯金もなく、あちこちからの少ない金をつなぎ合わせながら暮らしている。
くずれ落ちる丸太やらブロックやらを、ピョンピョンと飛び移りながら進んでいく「スーパーマリオ」みたいなもので、その丸太がごっそりと一つなくなるとなれば、ピューッと下に落ちていく。
あり金は尽きようとしていて、入金の予定日までもちそうにないし、こんな不安定な身分にお金を貸してくれるところもない。
「どうしようか、、、」
途方にくれるわけである。
実際の話こういうことは、仕事の相手が「社員」だと、時々おこる。
経理部のシメ日やら、決済の段取りやら、自分の意思では決められない、諸々のことがあるからだ。
しかもサラリーマンは、自由業の切実さなどわかるわけもないだろう。いくら自分にミスがあっても、
「会社の都合で仕方ない」
で、押し切られることになる。
「今回そうして入金が遅れることは、あなたはぼくに『死ね』と言っているのといっしょですよ」
と、きっちり念は押しておいたが、「2ヶ月後に延滞金を支払う」ことで、話はおわった。
家に帰り、途方にくれてはいたが、とりあえず昼酒をし、そのあと昼寝。
最近は、全財産が5千円しかなく、しかもそれがなくなる前に入金の予定がなくても、ぐっすりと寝られるようになっている。
人間、一番のまちがいは、
「恐怖にかられて思考する」
ことなのだ。それが「戦争」をはじめとして、すべての「悪」を呼びおこす元となる。
落ちついてよく考えれば、どうにもならないことなど、一つもない。
というわけで、考えた結果、ふたたび、お世話になっている社長に前借りをさせてもらうことに決め、メールを送った。
するとまさに今、早速つなぎに十分なお金を振り込んでもらえた。
ありがたい話である。
自由業・自営業は、サラリーマンにくらべれば、お金の苦労は、もちろんある。
でもその分、自分のやりたいようにやれる「自由」もあるわけだから、ぼくはそちらを選ぶのだ。
晩飯は、お金のことを考えるのでもう疲れてしまい、仕事をおえてから考えることにした。
仕事をおえると、「食べたい」とおもい浮かんだのは、鶏団子のミルク鍋。
野菜はもちろん、「白菜」だ。
白菜に、鶏のうまみがたっぷり出た、ほっこりとしたミルクのだしがしみたのは格別だ。
「鶏肉・白菜・ミルク」のトリオは、テッパンの相性なのである。
ただし仕事がおわったのは、夜の9時。
この時間だと、スーパーへ行っても鶏ひき肉が売り切れている場合がある。
代替策として「豚団子のトマト鍋」も、いちおう考えておいたのだが、スーパーには鶏ひき肉があったから、それは無事、杞憂におわった。
「ミルク鍋」は、何のことはない、和風に味付しただしに、牛乳をいれるだけ。
それでしっかり、「クリームスープ」のような洋風の味になるから、不思議なものだ。
まず、昆布と削りぶしのだしを取る。
3カップの水に10センチくらいの昆布をいれ、煮立たない火加減で10分~20分煮だし、そのあと一つかみの削りぶしを、やはり煮立てないよう、5分煮だして、昆布はとりだし、削りぶしも絞ってとりだす。
できた2カップほどのだしに、牛乳1カップをいれる。
さらに、
- 酒 大さじ2
- みりん 大さじ2
- 淡口しょうゆ 大さじ1
- 塩 少々
で味をつければ、煮汁は完成。
だしを取っているあいだに、鶏団子のタネをつくる。
鶏肉にあう香味野菜は、やはり「ゴボウ」だ。
器に、
- 鶏ひき肉 200グラム
- ゴボウみじん切り 大さじ2くらい
- ネギみじん切り 大さじ2くらい
- 溶き卵 2分の1個分(残りは飲む)
- おろしショウガ 小さじ1くらい
- 酒 小さじ2分の1
- 淡口しょうゆ 小さじ2分の1
- 塩 小さじ4分の1
- 片栗粉 大さじ1
をいれ、粘り気がでるまでよくこねる。
これをミルクの煮汁にスプーンで食べやすい大きさにまとめていれ、煮立てないよう10分煮る。
牛乳は、煮立てると分離するから、
「火加減を煮立たないくらいに保つ」
のが、ミルク鍋の最大のコツとなる。
あとは、大ぶりに切った白菜と油あげをくわえ、テーブルのコンロでことこと煮る。
火が弱いから、煮えるまでに時間がかかるが、この鍋のわく音だけが聞こえる「静寂」の時をすごすのも、鍋の醍醐味なのだから、急がないのがいいのである。
ただし、煮ているあいだにつまむ酒の肴を、用意するのは必要だ。
白菜がやわらかくなったら器によそい、青ねぎと黒コショウをかける。
たまらないですわ。
酒は、熱燗。
鍋に熱燗、体が芯からあたたまる。
金はなくても、何とかこうして、うまい酒はのめている。
とりあえず、それさえあれば、ほかに何がなくてもいいのである。
「そのうち酒ものめなくなるかもよ?」
そうだよな。
ちなみにネコは、毎日くる。
4匹が、入れかわり立ちかわり来ているようで、エサの皿をみると、いつも空。
はじめのうちは警戒心がつよかった「デカイの」も、最近は、ぼくが悪さをしないことはわかったようだ。
おまけに言葉も、すこしわかってきたようで、皿が空だと、
「食べたいの?ちょっと待っててね」
といえば待つし、エサをだして、
「お食べ」
といえば食べはじめるし、カワイイものだ。
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