きのうは、はまぐりの湯豆腐にした。
はまぐりは、鯛とならんで、「もっともウマイ」のである。
正月にむけた買い出しをしたときに、はまぐりを買ったのだ。
ぼくがよくいく魚屋では、どういうわけか、お正月と、桃の節句のときしかはまぐりを置かない。ぼくは魚は、ほとんど魚屋で買うことにしているから、自然、はまぐりもあまり食べないことになる。
しかしはまぐりは、ぼくがもっとも好きなものの一つである。
鯛とならんで、
「これほどおいしいものはない」
とすら、いえるのではあるまいか。
とにかく味が、「完璧」だ。ほんの少しのしょうゆをたらせば、どこも足りないところがない。
ここまで味が整っているものは、はまぐりと鯛だけだろう。
日本人は、縄文時代から、はまぐりと鯛を食べてきた。「和食」の味は、この二つをもとに、形づくられてきたのだろうと、ぼくはおもう。
このはまぐりが、日本ではほとんど獲れなくなっているのは、悲しいことだ。
貴重な文化が、一つ、失われようとしているのである。
はまぐりを食べるなら、鯛とおなじく、とにかく余計な味をいれないことが大切だ。へたな味をいれてしまうと、はまぐりの完璧な味をこわすことになる。
網で焼き、しょうゆをたらして食べるのは王道だし、あとは吸物。
鍋もよく、池波正太郎は「細く切った白菜と小鍋だてにする」と書いている。
湯豆腐も、もちろんいい。
はまぐりの黄金のだしを吸わせるのに、豆腐は打ってつけの相手となる。
うす味をつけ、ほかにいれるのは三つ葉だけ。ネギなどをいれてしまうのは禁物だ。
はまぐりも三つ葉も、火を通しすぎるとダメになる。
なので小鍋だてにし、一回に食べる分だけ煮るようにするのがおすすめだ。
はまぐりは、うすい塩水に30分以上つけ、砂出しする。
砂を吐いたら、殻の表面についたヌメリを、指でこすりながら洗いながす。
砂出しをしている間に、昆布だしをとる。
4カップの水に10センチくらいの昆布をいれ、煮立てないようにしながら10分以上、昆布の風味がたってくるまでゆっくり煮出す。
できた3カップほどの昆布だしに、酒・大さじ3、淡口しょうゆ・大さじ1、味をみながら塩少々をいれ、はまぐりに多少の塩があるから、うすめに味をつけておく。
このあとは、テーブルに据えたコンロでやる。
酒は、はまぐりにはいうまでもなく、熱燗。
小鍋にだしを張り、まず、一回に食べられる分のはまぐりと豆腐をいれる。
弱火で、あまり煮立てないようにしながら煮、はまぐりの口がひらくのをじっくり待つ。
口がひらいたら、すかさずざく切りの三つ葉をいれ、一煮立ちさせたら火をおとす。
そのまま食べてももちろんいいし、ゆずの皮などをちらすと、この上ない。
味ぽん酢をチロリとかけるのも、またうまい。
鍋には、極上のだしが出ている。
そのまま味わうのもよし、ご飯にかけるのもよし。
あとは、ご飯のおかず用に、「スパムのポパイ炒め」もつくった。
フライパンにオリーブオイルを引いて中火にかけ、スパムとほうれん草をサッと炒めて塩一つまみで味をつけ、卵でとじて、コショウをふる。
食べるときは、パソコンもテレビも見ない。
そのほうが、はまぐりの味を、心ゆくまで味わうことができるのである。
「大掃除もしないとね。」
そうだよな。
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