鶏とゴボウのみそ煮込み。
さすが八丁味噌は、ウマイんですわ。
正月料理は昼酒の肴にするわけで、夜は別のものを食べたくなる。
しかもこの寒さだと、「鍋」一択になるのは仕方がないことだ。
元旦は、常夜鍋。
具は、ほうれん草と豚肉、油あげ。
ほうれん草は生のままだとアクがでて、せっかくの豚のだしが台無しになるから、サッと下ゆでしておくのがポイントだ。
残り汁に、おろしショウガと塩コショウで味をつけ、鍋用ラーメンを煮た。
これがまた、うまかった。
3日の夜は、具だくさんの粕汁。
粕汁用に、あらかじめ紅鮭は買っておいたのだが、そのほか正月料理であまった材料を片っ端からたたきこんだ。
紅鮭と、基本の大根、ニンジン、油あげのほか、ハマグリと豚肉、里芋、こんにゃく。
そしてきのう。
堀川ごぼうが、まだ半分のこっていた。
これを使い、何を作るかをかんがえるに、やはり、相手は「鶏肉」だろう。ゴボウと鶏は、最高の相性だ。
「汁物」は決まっているとして、迷ったのは味付だ。
鶏肉とゴボウなら、けんちん汁や筑前煮など、濃いめのしょうゆ味もいい。
しかしここは、みそ、それもただのみそではなく、「八丁味噌」の出番なのだ。
鶏とゴボウは、名古屋・みそ煮込みうどんの基本具材ともなっている。
八丁味噌は、愛知県は岡崎の発祥。岡崎は、家康生誕の地でもあり、徳川家ゆかりの場所だ。
普通のみそが、麹をくわえることにより、1年足らずでつくられるのにたいし、八丁味噌は麹をつかわず、3年の月日をかけてじっくりと熟成される。
そのため普通のみそより色が濃くなり、味も、コクと風味がはるかに増す。
そのため八丁味噌は、「煮込んでも味がおちない」のが特徴だ。
麹みそは、煮込むと風味がとんでしまう。だからみそ汁でも最後にいれて、ひと煮立ちさせて火を止める。
それにたいして八丁味噌は、
「煮込めば煮込むほどおいしくなる」
といわれている。
「赤出しみそ」は、この八丁味噌に麹みそをまぜたもの。
八丁味噌よりやわらかく、だしに溶けやすいから、家庭ではつかいやすい。
名古屋の人が、八丁味噌が好きな度合いは尋常ではない。
牛丼チェーン店「松屋」でも、名古屋だけは、みそ汁は赤出しが提供される。
みそカツ、みそ煮込みうどんは有名だし、おでんもみそ。八丁味噌のソフトクリームやカレーもある。
しかし「煮込む」という、普通のみそとはちがう使い方ができる八丁味噌を、名古屋に独占させておく手はないだろう。
実際京都には、八丁味噌をつかった煮込み料理の店が、たくさんある。
最近でも、大宮に「へそまがり」という、新しい店ができた。
メインは牛テール・牛すじを八丁味噌で煮込んだもので、これがまた、じつにうまい。
ただし八丁味噌をつかう場合、気をつけたほうがいいことがある。
「甘くしすぎないこと」
なのである。
名古屋のみそカツやみそおでんなどは、「マジか」とおもうほど甘い。名古屋以外のほとんどの人にとっては、「甘すぎる」と感じられるのではあるまいか。
これがなぜかと考えるに、おそらくは、「名古屋はみその味付が多いから」なのだろう。
みそ汁も、おでんもとんかつも、おなじ「みそ」を使うから、甘みでちがいを出さないと「飽きる」のではないかとおもう。
だから名古屋以外の人が八丁味噌をつかう場合、名古屋より、だいぶ甘みを抑えるようにするのがコツとなる。
甘みを大してくわえなくても、八丁味噌は十分うまい。
きのうの鶏とゴボウのみそ煮込みは、汁も飲むためにつくるから、甘みはほんとに、みりんをちょっぴり。
具は厚揚げとチクワもくわえ、生卵を割りおとすことにする。
まずはだしを取る。
八丁味噌は味がつよいから、煮干しなどを使うのもいいとおもうが、ぼくは昆布と削りぶし。
鍋に4カップの水をいれ、10センチくらいのだし昆布を、煮立てないよう気をつけながら10~20分くらい煮出す。
そのあと一つかみの削りぶしをいれ、やはり煮立てないように5分くらい煮出し、昆布はとりだし、削りぶしも絞ってとりだす。
できた約3カップのだしに、
- 酒 大さじ3
- みりん 大さじ1
- 八丁赤出しみそ 大さじ4
で味をつける。
この汁で、食べやすい大きさに切った鶏モモ肉と厚揚げ、ちくわ、洗って大きめに切り、水にさらしたゴボウを煮る。
弱火でコトコト、20分くらい煮れば、ゴボウもやわらかくなるはずである。
あとは鍋を卓上のコンロに移し、ごくごく小さな火で温めながら食べる。
生卵を割りおとし、半熟くらいになったらお椀によそう。
たっぷりの青ねぎと、好みで一味や七味をふる。
八丁味噌のコクのある味がしみ、つくづくウマイ。
うどんを煮たらいいのはもちろん、きのうは餅をいれてみたが、これもまたよく合った。
酒は、熱燗。
これがまたよく合うのは言うまでもないわけで、つい飲み過ぎてしまうのは、仕方がないのである。
「お正月も明けたんだからちゃんと仕事しないとね。」
そうだよな。
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