きのうはチキントマト鍋。
チキントマト鍋は「セロリ」をいれるのがポイントなのである。
もう寒くて寒くて、きのうはあまりの寒さにまったく仕事する気にならず、といって仕事しないわけにもいかないから最低限はこなしたが、死ぬほど疲れた。
京都がまた寒いのだ。
たぶん湿気が多いからではないかと思うのだが、他の場所とおなじ気温でも、体感温度はだいぶ低い。
大阪などから京都へ帰ってくると、「3度は低い」という気がする。
一度広島へ行ったとき、その日の最高気温は3度だったが、京都の最高気温10度より、
「まだずいぶん暖かい」
とおもったくらいだ。
だからもう、鍋物しか食べる気にならない。
ぼくは鍋と熱燗がなければ確実に凍死しているわけで、鍋の国に生まれてほんとうによかったと思うところだ。
実際鍋は、毎日食べつづけても違うものが食べられるくらいのバラエティがある。材料と味付を変えることで、いかようにも変化できる。
単純でありながら奥が深く、作り方を考えるのもおもしろい。
制約がすくないだけに、逆に自分で規範をつくり、ストイックにやらないと、ただの「ごった煮」になってしまうのだ。
ルールを押し付けられるのでなく、自分で自由に決めていいのも、ぼくの性に合っている。
このところ「常夜鍋」だの「鯛の小鍋だて」だのあっさりしたのが続いていたから、きのうはちょっとコッテリしたものが食べたくなった。となれば洋風メニューだ。
鍋は洋風メニューでも自在に取り込んでしまう懐の広さがある。
といっても、鍋に入ったものをテーブルのコンロにかけておけば、それを勝手に「鍋」と呼んでしまうのだから、まあ詐欺みたいなものではある。
きのうはあれこれ考え、「チキントマト鍋」を作ることにした。
わりとオーソドックスなチキントマト煮を、ただ鍋にいれただけのものだ。
ただし味付をどうするかは、よくよく考える必要がある。
ぼくは料理に「ニンニク」を使いたくないからだ。
べつに、ニンニクには恨みはない。ニンニクがたっぷりはいったパスタや韓国料理も好きである。
ただしまず、和食にはニンニクを使わないから、ニンニクをいれた料理を一品つくってしまうと、他の小鉢などをまるごとそれに合わせる必要がでてきて「面倒だ」ということがある。
それから、むしろこちらが理由としては大きいのだが、
「調味料をあれこれ持ちたくない」
のである。
料理をはじめると、やはり世界の料理に興味がわく。それでそれを作ってみようと思うと、どうしても、その料理独特の調味料が必要になる。
調味料を買いそろえると、小瓶が冷蔵庫の上やら中やらにぎっしりならぶ。しかしその小瓶を使い切れたためしなど、ついぞ一度もないのである。
チキントマト煮の場合にも、現地の作り方をしようと思えば、まずみじん切りのニンニクと玉ねぎをオリーブオイルで炒め、鶏肉や野菜をローリエやらタイム、オレガノなどを加えてトマトで煮込み、最後にみじん切りのパセリをふりかける、となる。
このローリエ、タイム、オレガノ、パセリを使わないようにしようと思えば、一番いいのは、
「ニンニクを使わない」
ことなのだ。
調味料は、それぞれの料理である一貫した「体系」をもっている。中華でも洋食でも韓国料理でも、その調味料の体系には、いちばん基礎に「ニンニク」がある。
ニンニク以外の調味料は、すべてニンニクに合うようになっているわけだから、ニンニクを使ってしまえば、それら調味料もやはり使ったほうがおいしい。
使わなければ、「なんとか和食の範囲でやろう」となってあきらめもつくし、実際それで、うまいものができるのだ。
だいたいの料理はニンニクを、だしやしょうゆ、みそ、酒、みりん、砂糖、ショウガ、ゴマなど、和食の基本調味料でおきかえることができる。
それでもし足りなければ、酸味をつけたり唐辛子で辛味をつけたり、やり方はいくらでもあるのである。
ただしチキントマト煮の場合だけは、話がちょっとちがってくる。
ニンニクを、しょうゆやみそで置き換えることができないのだ。
これについては、ぼくはずいぶん研究を重ねた。ネットでレシピなども探しながら、しょうゆやらみそやらを入れてみたのだが、どうしてもおいしくならない。
おそらくトマトのうまみ成分と、だしやしょうゆ、みそのうまみ成分とが「競合」するのだとおもう。ケンカしたようになってしまい、どうしても仲良くなってくれないのだ。
そのときは、結論としては、まずトマト缶をつかう場合は、「キムチ」を加えること。
それから和風調味料だけでやるときは、トマト缶ではなく、「生のトマト」を使うことと相成った。
しかし実は、チキントマト煮のニンニクをおきかえるための、いい方法があるのである。
「セロリをたっぷりいれる」
ことだ。
これは今回はじめてやってみたのだが、じつにうまい。
ちょうど「トマトジュース」が「野菜ジュース」になったような味になり、トマトのエグみがまったく消える。
セロリにくわえ、ショウガを使えば、あとのローリエやらタイムやらのハーブも必要なくなる。
最後にふりかけるパセリも、青ねぎで十分OKなのである。
あとはチキントマト煮のコクをだすため絶対に必要なのが、「ウィンナーをいれる」ことだ。
これはべつに「和風」という意味ではなく、現地で王道のやり方だが、いれるといれないとでは味が10倍はちがうから、ぜひ試してもらいたい。
まず鍋にオリーブオイルをたっぷり(大さじ3ほど)いれ、やはり大さじ3ほど(たっぷり)のセロリとショウガのみじん切り、それに玉ねぎのみじん切り2分の1個分を、弱めの中火でじっくり炒める。
5分くらい炒めたら、塩・小さじ1ほどとコショウ・少々をすり込んだ鶏の手羽元1パック(6本)をくわえ、さらに炒める。
やはり5分ほど炒めたら、3センチ大くらいにゴロリと切ったジャガイモ3個をいれ、さらにすこし炒め、カットトマト1缶と同量の水をくわえる。
味をみながら、小さじ1くらいだと思うけれども塩をくわえ、皮に包丁で切れ目をいれたウィンナー、きのうは4本、さらにきのうは冷凍庫に入っていたスパムをいれ、うすいくし切りにしたキャベツをいれる。
鍋があふれそうになった場合は、適宜大きな鍋にうつし替え、フタをして、コトコト20分くらい煮る。
器によそい、青ねぎをかけて食べるのである。
味はバッチリ。足りないところはない。
スープの味をたっぷり吸った、ジャガイモとキャベツがまたたまらない。
さらにチキントマト煮は、ご飯にかけてもうまいのは、いうまでもないことである。
酒は、熱燗。
これもまったく問題なかった。
「寒いのは仕事しない理由にはならないよ。」
そうだよな。
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