鶏肉と卵をあわせて煮る親子丼があるのだから、あわせて炒める親子炒めがあってもいいのである。実際に作ってみると、これは言うまでもなく225回は死ねるのだった。
おなじ原料の食材は、相性がいいと決まっている。豆腐のみそ汁がみそ汁の定番なのは、値段が安いこともあろうが、やはりみそと豆腐の原料がおなじだからだ。
鶏すきでも、肝を入れるとさらにうまいし、さらに卵につけて食べればなおうまい。親子丼のうまさもそこに由来するわけで、それなら親子炒めがうまくないわけがないだろう。
味つけは、基本は親子丼とまったくおなじ、酒とみりん・薄口しょうゆをそれぞれ同量ずつ。だしのかわりにオイスターソースを使い、七味のかわりに豆板醤、そしてニンニクという構成で、これは完全に親子丼の中華版だ。
入れる具材は、鶏肉と卵の他には、まずは玉ねぎ。そして青みとしてピーマンを入れることにした。
卵ははじめに炒めてから最後に入れ、ピーマンと玉ねぎもシャキシャキさせたいから、やはり炒めたものを最後に入れる。
多少手間がかかるといえばかかるけれど、何事も満足がいくようにしようと思えば、ある程度の手間がかかるのは当たり前なのだから、手間がかかるのを「面倒だ」と文句を言ってはいけないのだ。
作り方
フライパンにサラダ油・大さじ2分の1くらいを入れて中火にかけ、まず玉ねぎ・4分の1個(2センチ大程度に切る)を30秒ほど炒める。
つづいてピーマン・1個(2~3センチ大に切る)を30秒~1分ほど、「まだちょっと硬いかな」というくらいで火から上げ、皿にとり出す。
あらためてフライパンにサラダ油・大さじ2分の1くらいを入れて中火にかけ、溶き卵・2個分を流し入れる。
あまり細かくかき混ぜず、しばらく放置したあと大きめにまとめて皿にとり出す。
フライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 豆板醤 小さじ1
- 鶏もも肉 100g程度 (2~3センチ大に切り、酒・小さじ1、塩・小さじ4分の1をもみ込んで、片栗粉・小さじ1をまぶしておく)
を、鶏肉の皮を下にして弱めの中火くらいにかける。
3~4分して皮に焼き色がついてきたらひっくり返し、さらに1~2分焼く。
一度火を止めて、
- とり出しておいたピーマンと玉ねぎ
- とり出しておいた卵
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 薄口しょうゆ 小さじ2
- オイスターソース 小さじ1
を入れて中火にかけ、1分ほど調味料を煮立てながら炒める。
すべてもう火が通っているのだから、これはさらに取り出しておいたピーマンと玉ねぎ・卵を「温める」というくらいのつもりでいいのだ。
- 片栗粉 小さじ1
- 水 小さじ2
の水溶き片栗粉を、フライパンの中身を混ぜながら少しずつ入れてトロミをつける。
- ゴマ油 小さじ1
- 酢 小さじ1
を垂らしてひと混ぜしたら火を止めて、皿に盛って粗挽きコショウ・少々をふりかける。
これはまさに、黄金の味なのだ。
やわらかい鶏肉と卵にたいし、シャキシャキしたピーマンと玉ねぎがアクセントになるという企画である。
そしてこれが、飯のおかずになるのはもちろん、酒の肴にどう考えてもなるのにもかかわらず、今朝も「朝だから」というだけの理由で、酒を飲まなかったのだ。
僕はこんなに酒に失礼なことをしていたら、そのうち誰にも相手にされなくなるのではないかと思って心配だ。
「相手にされるよ」
そうだよな。