きのうは、「カキの小鍋だて」。
自炊をすれば、夢は日々実現できるのである。
「夢を実現する」という言葉は、いまや「注意が必要なもの」の代表にもなっているだろう。
経営者がつかうことが多いからだ。
経営者が社員にたいし、この言葉をつかうのは、だいたいは「タダ働き」させたいからだ。
人間は、夢を実現するためならば、時間を忘れて努力する。社員が仕事に夢を持ってくれれば、経営者として、これほどラクなことはないわけだ。
だから会社勤めの場合には、仕事に夢を持つことはあまり勧めないけれど、夢を持つこと自体は大事であるにちがいない。
夢は、人間の行動を駆動する力の源泉となる。
はっきりとした夢を描くことができたときには、もうほとんどそれは「実現された」と言ってもいいものなのだとおもう。
といっても、いまの夢も希望もない世界、どうやって夢を描いたらいいのかわからなくなっている人も多いだろう。
そういうとき、おすすめなのは、「自炊」である。
人間は、腹がへると、「食べたいもの」を思い描くようにできているのだ。
ぼくが特に好きなのが、内田百閒『御馳走帖』で、冒頭で、戦争中の食べ物がない時代、食べたいものをズラズラと並べた品書きが登場する。
笑えるほど「いじましい」のだけれど、これはもちろん、確信犯的に書かれている。
「国が進める戦争より、人間にとってはこちらが大事」と言いたいのだろう。
実際の話、腹がへっているときに食べたいもののことを考えると、時間を忘れる。
だんだんと出来ていくイメージを、前からながめ、横からながめ、少しでも切実に、自分が「食べたい」と思えるものに近づける。
頭のなかにそのイメージが完成すると、かなりの満足感がある。ぼくなどは、そのイメージだけで、酒が2~3杯は飲めてしまう。
頭のなかの食べたいもののイメージは、腹がへっている自分にとっては、まさに「夢」といって過言がない。
それを実際につくって食べれば、とても大きな達成感と、そして「幸せ感」を味わえる。
自炊をすれば、こうして日々、夢を実現していける。
自炊は夢を実現するトレーニングとして、まさに打ってつけなのである。
きのうも「カキ」が買ってあった。
初めはこれを、ざく切りの青ねぎとサッと炒めるつもりだったが、いかんせん、きのうは寒かった。もっと温かいものが食べたい。
それで次に、「吸物」にしようかと考えた。青ねぎと、ゴボウに油あげをいれ、卵でとじれば、温かいことこの上ないだろう。
しかし吸物は、すぐ冷める。ダラダラと酒を飲むには不向きである。
そこでそれを、「小鍋だて」にすることにしたわけだ。
カキは10個以上はいっていたから、3回に分けてやることにする。
そうすれば、そのたびに温かい吸物が食べられるわけである。
カキはともかく、火を通し過ぎないことが肝心だ。
加熱用でも1分、生食用ならそれ以下に、煮時間をおさえる必要がある。
カキは加熱用なら片栗粉をふってもみ洗い、生食用なら水で洗うだけでいい。
青ねぎはざく切り、シメジはばらし、油あげは細切り、ゴボウはささがきにして水にさらす。
だしは昆布と削りぶしのだし3カップに、
- 酒 大さじ3
- みりん 大さじ3
- 淡口しょうゆ 大さじ3
と、煮込むことを見越してすこし甘めに調整したのを、別の鍋にいれて用意しておく。
だしを小鍋に適量とり、まず油あげとゴボウを弱火で煮る。
ゴボウがやわらかくなったところで、シメジと青ねぎ、カキを投入。
サッと煮たら、溶き卵をまわしかけ、フタをして火を止め、しばらく蒸らす。
フタをあければ、カキはぷりぷり、卵はトロトロ。
一味をふって熱燗の肴にすれば、温まることこの上ない。
あとは、ジャガイモのご飯。
水はジャガイモから水が出るから少なめにし、塩一つまみを振ってふつうに炊く。
レタスの酢の物。
レタスは塩もみ、水洗いしてよくしぼる。
きのうはサバ酢をつかったが、
- ちりめんじゃこ 少々
- 砂糖 小さじ4
- 酢 大さじ4
- 塩 少々
で和えてもいい。
それにおとといの、イカの煮物。
熱燗は、きのうはいつもよりかなり進んだ。
それでもカキの効果だろう、きょうはスッキリ酒が抜けているのである。
「食い意地が張っているだけじゃないの?」
そうかもな。
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