ブリの塩焼きと、大根菜めし。
炊飯器は買わない方がいいのである。
魚屋で、ブリの切り身、腹のところが売っていたから、それを塩焼きにした。
魚屋へは昼前の、いつもよりだいぶ早い時間に行ったのだが、もうアラやらカマやらは売っていない。
連休明けだから、仕入れたはずだと思うのだけれど、目ざとい人が早々にさらっていったもののようだ。
ブリの旬、最盛期は年明けで、その頃のブリといったら滴るように脂が乗っているわけだが、今の時点でも、もうだいぶトロトロになっている。
カマや腹など、ブリの脂が乗った部分は、下手にてり焼きなどにするより、まずは塩焼きがうまいと思う。
おろしポン酢であっさり食べる。
ご飯は、「大根菜めし」にすることにした。
白めしも、決して嫌いではないのだが、ぼくの食事は「酒」が主役だ。何かを食べたら、常に酒に帰ってきたい。
ところが白めしは、この主役の座を奪う。料理がすべて、「酒の肴」ではなく、「ご飯のおかず」になるだろう。
だからご飯はできるだけ、味を付けるようにしているのである。
大根菜めしは、まず大根の葉っぱや茎を塩ゆでする。
水に取って細かく刻み、よく絞ったら、ちりめんじゃこ、ゴマ、塩少々といっしょに炊きたてのご飯に混ぜ込む。
さてこの「ご飯」なのだが、「炊飯器」で炊く人が多いだろう。
しかし炊飯器は、これから自炊を始める人で、「調理器具を揃えよう」という場合には、「買わない」のがおすすめだ。
炊飯器には、メリットが一つもないと、ぼくには思える。
まず「手間が省けるのか」といえば、大して省けない。
鍋でご飯を炊いたって、火加減は途中で2度変え、最後に火を止めるだけの話だ。大変なことは何もない。
ご飯の味も、下手な炊飯器よりは、鍋の方がよっぽどうまい。土鍋などなら、炊飯器の100倍くらい、ひっくり返るほどおいしいご飯が炊ける。
「保温機能」も、べつになくていいだろう。お茶漬け、お粥、チャーハンなどなど、冷ご飯の食べ方はいくらでもあるのである。
それでいて、炊飯器は値段は高いわ、場所は取るわで、デメリットばかりある。
500円の片手鍋で炊いた方がよっぽどいいのは、火を見るより明らかだろう。
しかし「炊飯器を買わない方がいい」のは、単にメリット・デメリットの問題だけではない。
炊飯器は、「自炊のおもしろさ」を決定的に損なうのだ。
「めし」は「だし」と並び、日本の料理の「中心」だろう。米をいかにおいしく食べるかを、日本人は長い時間をかけて考え、様々な方法を編み出している。
炊き込みご飯しかり、お粥しかり。
炊飯器を使ってしまうと、それら日本人の智恵に触れる機会を、みすみす逃すことになる。
炊飯器が何をしているかが分からないから、あの硬かった米がどのようにして柔らかくなるのか、よくわからない。わからないから、レシピ通りにしか作れない。
それでは、「おもしろさ」など見つけられようがないのである。
炊飯器など使わなくても、おいしいご飯は簡単に炊ける。
初めのうち何度かは、失敗もするだろうが、一度コツをつかめば、あとはもう失敗しない。
これから自炊を始める人は、ぜひ炊飯器を買わないで、「自分で米を炊く自由」をつかんでほしい。
ご飯を炊くには、スーパーなどで500円くらいで売っている片手鍋で十分だ。
直径16センチの普通の大きさでも問題ないが、ぼくは14センチの「ミルクパン」を使っていて、それだと一人分にはちょうどいい。
ただし、フタは透明のものを選ぶのがおすすめだ。中が見えるから火加減の調整がしやすいし、鍋の中で何が起こっているかがわかるから、「理解」もしやすい。
米を研ぎ、よく水を切ってから、水を入れる。水の量は、米の1.2倍が標準だ。
30分ほど置いてから、中火にかける。煮立って泡が上がってきて、湯気が勢いよく吹き出してきたところで、弱火にする。
8分炊き、水気を飛ばすために一度中火にして、30秒待って火を止める。
あとは10分蒸らして出来上がり。
これだけの話である。
この手間をかけるのか、かけないのかで、自炊世界の広がりは、天と地ほどもちがうのだ。
きのう作ったのは、あとは「レタスの吸物」。
鶏肉と大根煮の煮汁が余っていたから、それを少し薄めてしょうゆを足した。
レタスは、この吸物や鍋物、炒め物など火を通したり、塩もみして酢の物にしたりすると大変うまい。
ただしもちろん、火を通す場合には、あくまで「サッと」が肝心だ。
もやしの梅酢和え。
もやしはサッと塩ゆでし、水に取ってよく絞る。保存も、生よりゆでてからの方が日持ちする。
ちくわ、青ねぎ、と合わせ、削りぶしと砂糖、梅酢で和える。
それにみそバターの豚じゃがの残り。
酒は、熱燗。
毎度毎度のことながら、死ぬほどうまい。
ちなみに「ちびニャン」は、お母さんである「デカイの」と出くわすと、相変わらず威嚇する。
ものすごい形相で、手などはブルブル震えているから、ちびニャンも必死なのだろう。
デカイのは、相変わらず相手にしない。ちびニャンにしばらく付き合い、そのあとノソノソと去っていく。
先日、「ちびニャンがチェブ夫にも反応するか」と疑問がわいた。
そこでチェブ夫を、ちびニャンの前に立たせてみた。
ちびニャンはチェブ夫を一瞥したが、、、
あとは無視。
やはりぬいぐるみでは、相手にならないようである。
「ぼくは怖かったんだからね。」
そうだよな、ゴメンよ。
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