みそバターの豚じゃが。
ほんだし無しでもおいしく出来るのである。
きのうは「豚肉の日」だったのである。大好きな豚肉を何日かおきに食べないと気が済まないわけで、本当はおとといを、豚肉の日にしたかった。
ところが休日だったこともあり、値段が安い三条会商店街・西の端にある肉屋「ヒロ」は大混雑。「30分は待とうか」という勢いだったので、きのうお昼すぎの早い時間に出直した。
国産の豚ばらスライス肉、普通は100グラム220~230円はするところ、150円なのだから、ちょっと他では買えない気持ちにもなるのである。
この豚ばら肉、「豚じゃが」にすることにした。ほっくりとしたジャガイモと豚肉の相性がいいのは、言うまでもないことだ。
肉じゃがは、特に関西では牛肉を使うわけだが、豚肉だって、とてもおいしい。
ただし豚肉を煮物につかう際には、牛や鶏の場合とくらべ、ちょっとした工夫が必要になる。
煮物をつくる標準的な手順は、使うのが「魚」だったら次のようになる。
- 魚と野菜を鍋に入れて水を張る
- 酒としょうゆ、砂糖とみりんで味付けして煮る
以上。
「ブリ大根」などが典型だが、これで魚のだしが出て、十分おいしい煮物が出来る。
牛肉と鶏肉の場合なら、これとおなじやり方で、ギリギリ食べられるものになる。
ところが「豚肉」の場合には、この手順で煮物を作ると、「全くおいしくない」のである。
これは、
「豚肉としょうゆの相性が悪い」
ことが原因だ。とんかつに、しょうゆだけかけて食べるのを想像すれば分かるだろう。
日本人は、明治になって肉食文化を輸入するにあたって、この「豚肉としょうゆの相性問題」には頭を悩ませたにちがいない。
とんかつの場合には、酸味と辛味をつけた「ウスターソース」を発明し、この問題を解決した。
さらに戦後になり、救世主があらわれた。それが「化学調味料」である。
「ラーメン」が典型なのだが、魚介系のだしである化学調味料は、豚肉のスープとしょうゆの間をうまく橋渡ししてくれる。
パラパラと振るだけだから、料理の手順も、それまでと変える必要がない。
現代日本の化学調味料の蔓延は、「肉食」と深く関わりがあるだろう。
しかし化学調味料は、使わずに済むのなら、それに越したことはないわけだ。そこでラーメン界は、30年ほど前からか、新たなやり方をするところが増えてきた。
きちんと魚介だしを取り、豚のスープと混ぜるというもの、「ダブルスープ」と呼ばれるが、これなら化学調味料を使わなくても、実においしいラーメンになる。
豚じゃがも、昆布と削りぶしのだしを取れば、それがまちがいなく一番うまい。
しかし家庭で、わざわざだしを取るのは「面倒だ」と思う向きも多いだろう。それで「ほんだし」が、どうしても蔓延することになる、、、
別にほんだしを使ったっていいのだが、実は、この豚・しょうゆ問題を解決する、非常にいいやり方がある。
しょうゆではなく、「みそ」を使うことである。
これは、「ただ逃げただけ」とも言えるのだが、みそは、豚肉との相性がとてもいい。
豚肉料理の定番中の定番として、みそ仕立ての「豚汁」があるのを見ても分かる通りだ。
だからこれからは、豚じゃがの味付は、「しょうゆではなく、みそにする」と決めたっていいのである。
さらにここに、「バター」を入れる。
「みそバター」は、札幌ラーメンでも定番の味付だ。
バターは動物性だから、肉とは言うまでもなく相性がいい。これをみそと合わせることで、ほんだし無しでも、ふわっとした洋風の、ゴージャスな味になるのである。
肉じゃがを作るのに、よく「炒める」レシピがあるのだけれど、全くその必要はない。炒めなくても、煮汁をほぼ完全に煮詰めてしまえば、十分な味が付く。
それから豚肉は、煮上げる直前に入れるのがポイントだ。火を通しすぎると硬くなる。
フライパンに5センチ角くらいのだし昆布を敷き、ゴロゴロに切ったジャガイモ、ニンジン、それにきのうはゴボウ、を入れる。
玉ねぎもここで入れてもいいのだが、ぼくは玉ねぎはシャッキリしたのが好きだから、肉といっしょに最後に入れる。
別の器で、
- みそ 大さじ1
- 砂糖 大さじ1
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- おろしたショウガ 小さじ1
- 水 1+2分の1カップ
をよく混ぜ溶かしてフライパンに入れ、大さじ1くらいのバターを乗せる。
みそは赤出しみそ(八丁味噌)を使うと、さらにうまい。
フタをして強火にかけ、煮立ってきたら強めの中火にし、8分煮る。これでジャガイモには火が通っている。
もし万が一、煮汁があまりに少なくなったら、水を少し足してもいい。
フタを開け、食べやすい大きさに切った豚うす切り(バラ・コマ)肉と、くし切りにした玉ねぎを入れる。
全体を返しながら3分ほど炒め煮し、豚肉と玉ねぎに火を通すとともに、汁をほぼ完全に煮詰める。
最後に味を見て、塩気が足りなければ塩を加える。
皿に盛り、青ねぎと一味をかける。
バターの味がついたジャガイモが、またウマイという話である。
あとは、ショウガご飯。
細切りにしたショウガと塩・ほんの少々を加えて炊く。
キムちく納豆。
キムチとちくわ、よく練った納豆、青ねぎを、砂糖と淡口しょうゆ、ゴマ油それぞれ少々で和える。
大根と鶏の煮物の残り。
わさび醤油の冷奴。
酒は、熱燗。
うまい酒が飲めるのは、何とも幸せなことである。
「ほんだし使うのも悪くないよ。」
そうだよな。
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