冷蔵庫に入っていた水煮のタケノコとパセリを使ってしまわなくてはならなかった。タケノコは水に浸しておけば、そしてパセリは買ったとき入っていた袋に密封せずに入れておけば、どちらもかなり日持ちするのだけれど、それでもそろそろ限界だ。
パセリを使うとなると、やはり洋風料理だ。タケノコなら、ニンニクと唐辛子でサッと炒め、パセリを振りかけるのもうまそうだと思った。でもそれだと、洋風料理をあまり知らない僕には、ほかに合わせるものが思いつかない。
「タケノコといえば、家常豆腐(ジャーチャンドウフ)だよな……」
家常豆腐は、タケノコと厚揚げを煮込んだ中国の家庭料理。味つけは色々あるようなのだが、マーボー的なピリ辛味のこともある。
「マーボーか……!!」
結果、作ることにしたのはタケノコと厚揚げのミートソース。
味つけはマーボーをベースとしていて、そこにカットトマトとオリーブオイルを加えたものだ。
これが酒にもご飯にも死ぬほど合う、まじでヤバイものになったので、絶対に作ってみたらいいのではないかと思う。
基本は、このところ100万回くらい作っているマーボーだ。ニンニクと豆板醤、みりんとしょうゆが味のベース。
ここにまず、油はオリーブオイルを使う。「オリーブオイルとしょうゆが合うか」と思う人もいると思うが、最高なのだ。
オリーブオイルは、バターをあっさりとさせたような味がする。だからこれをしょうゆと合わせると、「バター醤油」という、日本の洋食には欠かせない、黄金の味になるのである。
それからトマトは、マーボーに非常によく合う。酢豚にケチャップを入れることがあることからも分かる通り、中華のピリ辛味とトマトは相性がいい。
なのでマーボーにオリーブオイルとトマトを加えた「ミートソース」は、あくまでマーボーの延長線上にあるということになり、マーボー味によく合うタケノコと厚揚げとはバッチリ合うのだ。
さらにミートソースを完全に洋風に作ってしまえば、日本の酒やご飯に合わなくなるところ、これならそれも、問題は全くなくなる。
ミートソースなのだから、パセリを振りかけるのは、もちろんいい。それからパルメザンチーズについても、キムチとチーズの相性がいいことからも分かる通り、東洋系のピリ辛味によく合うのだ。
作り方は、マーボーとまったく同じで、ひき肉やら調味料やらを炒めていき、トマト缶と水を入れ、タケノコと厚揚げをコトコト煮込む。ただしネギは、やはりミートソースだから長ねぎではなく玉ねぎを、ニンニクなどと一緒に炒めるようにする。
弱めの火でゆっくりやればいいから、失敗もしないと思う。
注意すべきことを強いてあげれば、塩を入れ過ぎないようにすることくらいしか思い付かない。
フライパンに、
- オリーブオイル 大さじ1
- 豚ひき肉 150グラムくらい
を入れて中火にかけ、スプーンなどで押しつぶしてほぐしながら5分くらい、ひき肉の水気が飛び、ちょっと焼色がついてくるまでじっくり炒める。
つづいて、
- オリーブオイル 大さじ2
- ニンニク 1~2かけ (みじん切り)
- 玉ねぎ 4分の1個 (みじん切り)
- パセリの茎 (みじん切り。こうすればパセリの茎がムダにならない)
- 豆板醤 大さじ1
を加え、やはり5分ほど、弱火でじっくり炒めて味をひき出す。
弱火のまま、
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 薄口醤油 大さじ1 (薄口にするのは色を濁らせないためで、濃口でも味的には問題ない)
- コショウ 1~2振り
を加え、1~2分炒めて肉に味を含ませて、
- タケノコ 2分の1~1本 (大きければタテ半分に切り、5ミリ厚さくらいのくし切りにする)
を入れて2~3分炒める。
- カットトマト 1缶
- 水 2分の1カップ
- 厚揚げ 1袋 (1~2センチ厚さの食べやすい大きさに切る)
を入れ、火を強めて煮立ったら弱火にし、フタをして15分くらい煮る。
煮加減の目安としては、加えた水がちょうど煮詰まるくらいが標準だと思う。
最後に味をみて塩を加え、粗挽きコショウをたっぷり振って、火を止める。
皿に盛り、パルメザンチーズとたっぷりのパセリをかける。
これは、ホントにたまらない……。
マーボー味が、トマトでさわやかになったのが、タケノコと厚揚げにしみている。これはマジで、死ぬしかない。
そしてもちろん、このタケノコと厚揚げのミートソース、酒への合い方も尋常ではないのである。
ここまで酒に合ってしまうと、飲み過ぎないためにはこれを食べないことしか方法がない。
「バカだよね。」
ホントだな。