スピナーズで晩飯の話になり、「豚味噌あぶり丼」がうまかったと聞いたので、似たものを作ってみることにした。
豚肉は醤油より、味噌で味つけするのがうまいのである。
カウンター式の飲食店は、バーにしても、居酒屋にしても、お好み屋にしても、社交場の一つなのであり、お客さんは、飲食はもちろんだが、他のお客さんと話すことも、大きな目的にしてやって来る。
お店や曜日、時間帯によってお客さんの層が変わるから、お客さんもそれぞれ、あれこれと通ってみて、自分の都合と居心地のいいところに定着することになる。
ぼくがよく行く四条大宮のバー「スピナーズ」も、9時までと9時から12時、さらに12時以降でお客さんの層は大きく変わる。
ぼくは最近では、晩飯前に来ているお客さんが多く、サックリと帰れる可能性が高い、9時前の時間帯に行くことが多くなっている。
昨日は8時頃スピナーズへ行ったら、すぐに後から寺島進似の男性が入ってきた。
アンティーク雑貨の店を経営する30代後半の寺島進は、仕事を終えてすぐにスピナーズへ来て、ビールを1~2杯飲み、それから食事に出て行くのが基本パターンだ。
ぼくの隣に来た寺島進は、飲み物を注文するが早いか、カバンから何やら資料を取り出し、目をキラキラとさせながら話しはじめた。
「いや今すごく盛り上がっていることがあるんですよ・・・」
寺島進は自分が経営する雑貨屋で、お客さんの口利きから、篠笛とトランペットのミニコンサートを開いたのだそうだ。
篠笛もトランペットも、昔「やってみたい」と思ったことがあるという寺島進は、その演奏に感動し、篠笛とトランペットの奏者それぞれと、フェイスブックでやり取りするようになったという。
そうしたら、トランペット奏者の女性から、
「京都でコンサートをやりたいから、企画してくれないか」
と持ちかけられたのだそうだ。
「音楽コンサートなんて畑違いで、企画の経験などないんですが、せっかく気に入った奏者だし、ぜひ力になりたいと思うんですよね・・・」
寺島進は力を込めて言う。
トランペット奏者からはさらに、
「もしやりたいなら、私がトランペットを教えてもいいですよ」
とも言われているそうだ。
「ものを教わるなど高校以来のことで、新鮮な気持ちがするんですよ・・・」
寺島進は嬉しそうだ。
「ぜひやってみたらいいと思うよ。先はどうなるか分からなくても、踏み込むだけ踏み込んでみたら、広い世界が見つけられることになると思うな。」
ぼくは寺島進に、火を焚きつけるだけ焚きつける。
寺島進は、人生の新しい段階にさしかかっているのだろう。
若い人のそういう熱気を、話を聞かせてもらうことで、こうしてお裾分けしてもらえることは、バーに来る醍醐味だなとつくづく思う。
寺島進とはそのあと、料理についての話になった。
寺島進も最近は、このブログもちょこちょこ見てくれながら、家で鍋をするようになっているのだそうである。
「今日はこれから餃子を買い、ニラといっしょに鍋に入れようかと思うんです・・・」
献立の構想を、嬉しそうに話してくれる。
「高野さんは、今夜の食事はどうするんですか」
と聞かれ、
「豚肉を買ってはあるのだけれども、どうするかはまだ決めていないんだ」
と答えると、
「こないだ、店で『豚味噌あぶり丼』というのを食べたんですけど、うまかったですよ」
と寺島進が言う。
九条ねぎがたっぷり盛られていたのだそうだ。
「それはうまそうだ」と、昨日は家で、それと似たものを作ることにした。
昨日の献立「豚味噌炒め丼」は、このようにして決まったのである。
さて家に帰ってシャワーを浴びたら、早速焼酎の水割りを作って晩酌の支度にとりかかる。
メインにとりかかる前に、どんぶりのご飯を炊きながら、サイドメニューをあれこれ作る。
まずはナスのおひたしを作ることにした。
ナスはおひたしにしても、やわらかくてとてもうまい。
2センチ幅くらいの輪切りにしたナスを、2~3分、水でゆでる。
ナスやほうれん草などアクが多いものをゆでる時は、塩を入れるとアクが出にくくなるから、真水でゆでるのがポイントだ。
またナスはゆで過ぎると崩れるから、「ゆで足りないかな」と思うくらいで引き上げるようにするのもポイントになる。
ゆでたナスは、水に取ってよく冷まし、やさしく絞って器に盛る。
昨日はこれに、削り節とカラシ酢醤油をかけた。
それからキュウリと玉ねぎのツナポン。
ツナを汁ごと入れ、これにポン酢醤油をかけると、ちょうど和風ツナサラダのようになり、生の野菜にとてもよく合う。
キュウリと玉ねぎを、細く切る。
キュウリを細く切るには、まず斜め薄切りにし、それからさらに、タテに切る。
キュウリと玉ねぎを器に盛り、ツナを汁ごととポン酢醤油をかけたら、昨日はここに一味をふった。
ポン酢醤油に一味も、またよく合うのである。
温奴の支度もしておく。
温奴は汁物をかねることにもなり、涼しい時の豆腐の食べ方として打ってつけだとつくづく思う。
お椀に削り節とトロロ昆布を入れ、鍋に水を張って一口大に切った豆腐をしずめて、あとは鍋をあたため、豆腐とお湯をお椀に入れて、醤油で味つけすればいいだけにしておく。
温めるのは、最後にメインが出来てからやるのである。
ここでようやくご飯も炊け、メインの「豚味噌炒め丼」にとりかかる。
豚肉は、肉屋でコマ肉を200グラム買ってある。
豚肉は、味噌味がよく合う。
「豚汁」が豚肉を使った家庭料理の一つの代表になっていることからも、それは分かる。
醤油味は、豚肉には意外にむずかしい。
醤油を豚肉にあわせる場合、ショウガを入れ、ショウガ焼きにするのが定番だが、どうしても味が、ちょっとスカスカするところがあるのではないかとぼくは思う。
その点、味噌は豚肉のコッテリとしたうまみを一層引き立ててくれると思う。
砂糖を加え、甘くするのがオススメだ。
味噌は何でもいいけれど、炒めたり煮込んだりするのに使うには「赤だし味噌」がやはりおいしい。
「八丁味噌」がブランドだが、もし手に入るようなら、常備しておいて損はない。
調味料は、あらかじめ混ぜあわせておく。
200グラムの豚肉に対し、酒とみりん、味噌をそれぞれ大さじ2、砂糖大さじ1とおろしたショウガを小さじ1。
フライパンを中火で熱し、昨日はここにゴマ油と輪切り唐辛子を入れた。
ただしこれはぼくの好みで、サラダ油に唐辛子なしでも問題ないし、辛みはあとから一味をふるようにしても良い。
一口大に切った豚肉を、色が変わるまでサッと炒める。
ここに薄切りにした玉ねぎや、シメジを加えてももちろんいいが、昨日は男らしく、豚肉と九条ねぎだけでシンプルにいくことにした。
調味料を加え、さらに1~2分、煮汁がドロリとするまで火を通す。
ご飯の上にかけ、たっぷりの青ネギを盛る。
ようやく出来上がった、豚味噌炒め丼。
味噌の茶色と青ネギの緑の、色のコントラストが食欲をさそう。
食べてみる・・・。
コッテリとした甘みのある豚肉と、シャッキリとした青ねぎの、相性は抜群なのである。
酒は昨日は、日本酒を2合だけにしておいた。
でもスピナーズで生ビールを2杯、晩酌の支度をしながら焼酎水割りの薄いのを3杯飲んでいるから、結局は4合ほどは、飲んでいることになる。
「教えてもらった献立がおいしくて良かったね。」
バーは色々ほんと、役に立つよな。
◎関連調味料
イチビキ 名古屋八丁赤だし 500g
520円(アマゾン・送料無料)
◎関連記事
コメント
ニラと餃子の鍋・・・大学のボックスで作っていましたね^^最近は、市販の餃子が化学調味料でもって味がつらいです。重たい。