金目鯛を、ゴボウと煮付けた。
金目鯛とゴボウの煮付は、「ゴボウが主役」なのである。
そろそろ新サンマが出ているのではないかと思い、魚屋へ見に行ったが、まだ出ていない。代りに金目鯛を買って帰ったのだが、帰ってネットのニュースを見ると、今年のサンマ漁獲量は、記録的不漁だった去年とくらべ、さらに10分の1に激減しているのだそうだ。
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サンマのかわりに、ブリやら、マグロやら、もっと暖かいところにいる魚が、北海道で捕れるという。
ここ数年、気候も何だか、暑くなりすぎたり、雨が振りすぎたり、こらえ性がなくなっている感じがするし、地球はどうなってしまっているのか、心配である。
それはともかく、金目鯛はうまい。鯛ほどゴージャスなうまみはないが、天然だから臭みなどが全くなく、肉質も締まっているから、煮付にするには打ってつけの魚である。
頭の部分があるのなら、胴よりはそちらを選ぶのがいい。カマは脂が一番乗った場所なのだし、目の周りのドロドロも、コラーゲンだから栄養満点、何よりいいうまみが出る。
魚を煮付ける場合には、この煮汁に溶け出した魚のうまみを、どう利用するかが大きな考えどころとなる。
肉なり魚なりを煮て、そのうまみが煮汁に溶け出している場合、主役は圧倒的に、その煮汁だろう。西洋ならば、煮汁は「スープ」として直接飲むか、煮詰めて「ソース」とし、料理の上に大々的にかけて食べ尽くす。
しかし日本では、その煮汁の扱い方が、実に奥ゆかしいと思えるのだ。
汁物は別として、煮物だと、煮汁を直接飲むことはないし、魚を煮汁につけて食べはせよ、煮詰めてソースにするなどのことも、あまりない。あくまでも控えめに、皿の底にヒタヒタと溜まっている。
それでは煮汁は、ムダにされてしまうのかといえば、もちろん、そんなわけはない。まずはゴボウや豆腐、里芋などを一緒に煮て、それに煮汁のうまみをたっぷり吸わせる。
さらに煮汁が残れば、それでおからなり、高野豆腐なりを煮ることで、それらに煮汁を全て吸わせる。
日本人は、主役の煮汁を、そのものとしてではなく、何か別のものに吸わせることで、そちらに託して楽しむのである。
これは、いかにも日本人らしくはないだろうか。
神社などでも、神様は、表からは見えないところに鎮座して、それが御札なり、御守などに宿ったものを、家で祀ったりするだろう。
だから、きのうは金目鯛を、ゴボウと一緒に煮たのだが、これは「ゴボウが主役」なのである。
ゴボウはつけ合わせ的にちょっと入れるのではなく、主役にふさわしく、たっぷりと入れるのが正しいわけだ。
ゴボウはナイロンたわしで洗い、3ミリ幅くらいの斜め切りにして、5分くらい水にさらす。5センチ角くらいのだし昆布を敷いた鍋にゴボウをならべ、ていねいに水で洗った金目鯛をのせる。
1と2分の1カップの水を入れ、酒と砂糖、みりんそれぞれ大さじ3を入れたら強火にかける。煮立ったら火を少し弱めにし、出てきたアクを取りながら、2~3分煮る。
しょうゆ大さじ2を入れて、落としブタをし、火加減は強めの中火、煮汁がきちんと沸き上がるようにしながら10分煮る。
火を止める直前にしょうゆ大さじ1を入れ、ひと煮立ちさせて火を止めて、フタをしてそのまま冷まし、味をしみさせる。
酒は、暑いから焼酎水割り。
金目鯛とゴボウの煮付が、酒にこの上なく合うのは、言うまでもないことだ。
魚の頭を食べるには、箸で取れる身を食べたあと、骨ごと口に入れてしまい、チューチューとしゃぶるようにする。
あとは、自家製梅干しととろろ昆布の吸物。
お椀にとろろ昆布と削りぶし、青ねぎ、淡口しょうゆ、梅干しを入れ、お湯をそそぐ。
自家製の梅干しは、既成品とちがって身が分厚くもっちりとして、大した手間もかからないのだが、つくづくうまい。
ナスのツナ炒めが、またうまい。
フライパンに油ごとのツナ2分の1缶とゴマ油少々を入れて中火にかけ、5ミリ幅くらいに切ったナス1本を、しんなりとするまで炒める。
青ねぎ一つまみを入れ、しょうゆ大さじ1を加えて全体に絡める。
それに、新ショウガの梅酢漬け。
「サンマも早く食べたいね。」
ほんとだな。
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