檀流イワシの煮付けの味は『檀流クッキング』には書かれていないのである。

檀流イワシの煮付け イワシ

 
檀一雄流に、お茶と淡口しょうゆでイワシを煮付けた。

檀流イワシの煮付け

檀流イワシの煮付けの「画期的」とも思える味は、『檀流クッキング』には書かれていないのである。

 

 

イワシを買い、檀一雄流で煮付けることにした。

檀流イワシの煮付け

イワシ煮付けは『檀流クッキング』のなかでも地味なメニューの一つなのだが、実際に作ってみると、非常に趣深い。

 

『檀流クッキング』が読み物としても面白いのは、檀一雄が作家なのだから言うまでもないことなのだが、実な大きな特徴があり、「味」が一切書かれていない。実際に作ってみて、初めてどんなものだか分かるのだ。

イワシの煮付けも、檀流の作り方はとても変わっていて、梅干しを入れるのは普通だが、そこにお茶を加え、淡口しょうゆで味付けする。

 

檀一雄は、

「どうしてお茶を加えるんだか、私はその原因をシカとは知らない。知らないままに、その方が、おいしく、私の口に合うことだけを知っている」

と書いているのだが、そんなわけはないだろう。しらばっくれているのである。

何度も作り、考えに考え抜いて編み出した料理だから、そうそう簡単に、全貌を伝えたくない。実際に作ってみた人だけが、その奥義を感じ取れるようにしたい・・・。

檀一雄はそのように考えているのではないかと思う。

 

檀流イワシの煮付けの、梅干しと昆布、お茶によってする味付けは、一見変わっているのだけれど、実は「黄金」とも言える取り合わせであることが、食べてみると分かる。

しかしそれが何なのかは、檀一雄が明らかにしていないのだから、言わない方がいいだろう。ぜひ自分で作ってみて、どんな味がするのかを確かめてほしいところである。

 

せっかくだから、檀一雄のオリジナルレシピを再録しておくことにする。

「買ったままのイワシを、そのまま、ザルでゆすいで、鍋に入れる。つまり、ハラワタを抜かないで、全貌のまま、煮るのである。

(中略)鍋の底に、つぶし切りにしたショウガと、ダシコンブを敷いておいて、淡口醤油と梅干しを二粒三粒たんねんにソギ切りにしたもので味をつける。酒を少々とコップ半分くらいのお茶を注ぎ入れ、醤油の味を薄めながら、中ブタをして煮る(中略)

淡口醤油と梅干しの塩味を、お茶や、酒で薄めながら、色どり淡く煮上げる」

となっている。

この短いレシピに、非常に深い奥行きがある。

以下はこのレシピの、ぼく流の解釈である。

 

 

イワシの頭も落とさず、ワタも抜かないで煮るのは、その方が「見た目がいい」からだ。檀一雄は料理の見た目に繊細にこだわる人で、きんぴらごぼうも白く仕上げるため、濃口醤油を使わない。

イワシは、全身の姿がもっとも美しい魚の一つだろう。その姿をそのままに活かし、さらにお茶と淡口しょうゆで「色どり淡く煮上げる」のである。

 

イワシのワタは足が速く、魚屋は、イワシの鮮度がちょっとでも落ちると、頭とワタを抜いて売る。だから頭とワタが付いているのは、それをそのまま煮られると考えていい。

檀流イワシの煮付け 作り方

やさしく水で洗ったイワシを、5センチ角くらいのだし昆布を敷いた鍋にならべ、「たんねんに」そぎ切りにした梅干し2~3個と、細切りにしたショウガ、それに淡口しょうゆ大さじ1を入れる。

梅干しをそぎ切りにするというのも、とても大きなポイントで、これをちぎって入れてしまうと、見た目が非常に悪くなるのである。

 

酒と緑茶、それぞれ2分の1カップずつを入れ、落としブタをして中火にかけ、煮立ってきたら弱火にする。

檀流イワシの煮付け 作り方

これを20~30分煮る。

 

煮ているうちに、汁気が煮詰まってきて、塩辛くなり過ぎてくると思う。そうしたら、酒と緑茶それぞれ少々を加え、味を薄めるようにする。

初めから酒と緑茶を多めに入れたら良さそうだが、そうはしないほうがいい。

頭を付けたままのイワシは、煮汁が多いと遊んでしまい、反り返ってしまうのだ。

 

煮上げたら、煮汁に浸したままで冷ますと、味がしみる。イワシを崩さないよう気を付けながら皿に盛り、梅干しを添えて、煮汁をかける。

檀流イワシの煮付け

この、思わず膝を打ちたくなる、画期的な味については、自分で作り、確認してもらいたい。

 

「檀流クッキングは役に立つよね。」

チェブ夫

ほんとにそうだよな。

 

 

 

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