イワシは安いし、1年を通して獲れるから、何かとお世話になるわけで、料理法も色々ある。まずは塩をふって焼けばうまく、これが一番、手間はかからない。
次に「煮付」となるわけだが、イワシは他の魚とおなじように煮付けると、ちょっとうまくいかない。
まずは脂が多いから、煮時間を長くしないと、味がまったくしみ込まない。
それからイワシには、クセがある。このクセを、きちんと打ち消してやらなくてはいけない。
この2つを解決するための煮方の一つが山椒煮で、実山椒を入れ、コトコト1時間ほど煮るのである。
山椒がピリッと利いた、骨までやわらかくなったイワシは、元の値段は安いのに、ごちそうの風格すら漂わせる。
ちなみにこの山椒煮、「山椒煮」と呼ばれることは少なく、山椒の産地の名前をとって、「鞍馬煮」「有馬煮」などとなることが多い。実山椒は、旬の時期にサッとゆでて冷凍保存をしておけば、1年でも2年でも使えるから、一度やってみるのはオススメだ。
実山椒がない場合には、かわりに梅干しを使ったのは「梅煮」、ショウガを使ったのは「ショウガ煮」となる。どちらもイワシの代表的な食べ方だ。
ただコトコト煮るだけだから、あまり失敗の可能性もないのだが、ただ一つ、オススメできないのは、圧力鍋を使うことだ。温度が上がりすぎるからだと思う、脂が抜け、モソモソになってしまう。
イワシの煮付は、時間はかかるが、煮ているあいだは何もすることがない。
手間が掛るわけではないし、時間が掛るといっても1時間くらいなのだから、圧力鍋は使わずに、じっくり煮るのがオススメだ。
鍋にだし昆布を敷き、洗ったイワシをまるごと入れる。
イワシは、頭がついているものを買ったその日に料理するなら、頭もワタも、落とさなくていい。
頭がついている方が見栄えがいいし、ワタも、もし嫌いでなければ、むしろ味をよくしてくれる。
イワシがかぶるくらいまで水を入れ、酒と砂糖、みりんをそれぞれ大さじ3ずつ、酢を大さじ1入れて、火にかける。
酢を入れるのは、イワシの骨をやわらかくするためだ。
煮立ってきたら弱めの中火くらいにし、アクを取りながら10分ほど煮る。
アクが取れたら、適当な量の実山椒と、醤油・大さじ3を入れ、弱火にして落としブタをし、コトコト煮る。
1時間くらいして、煮汁がずいぶん少なくなったら、火を少し強め、スプーンで煮汁をすくって上からかけながら、ドロっとした煮汁が少し残るくらいまで煮詰める。
このやり方は、実山椒のかわりにショウガを使う場合には、全くおなじでいい。
梅干しを使う場合は酢は入れなくてよく、また塩気があるから、醤油は少なめに入れておき、煮上げるまえに味を見て、加減するようにする。
きのうは、固めにゆで、湯切りしたそうめんを添えた。
酒の肴になるのはもちろん、ご飯のおかずにもいい。
あとは、ホタルイカときゅうりの酢みそ。
ホタルイカは、サッと水洗いして水気をふき取る。
うすく切ったきゅうりは一つまみの塩で揉み、5分ほど置いてから水に晒して、水気をふき取る。
器に盛り、同量くらいの白みそ(西京みそ)と酢、少々のからしを混ぜた、酢みそを添える。
とろろ昆布のぬく奴。
お湯であたためた豆腐を、とろろ昆布と削りぶしを入れたお椀にお湯ごと入れ、淡口醤油で味付して、ネギと一味をふる。
それに、すぐき。
酒は、冷や酒。
イワシは、ゴージャスなうまみはないが、しみじみおいしい。
「日本に生まれてよかった」と、つくづく思う味である。
「飲み過ぎなければ、なおいいね。」
そうだよな。
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