あなごめしで酒を飲んだ。
あなごはまずは「あなごめし」がいいのである。
「あなご」が買ってあったのである。
いつも行く魚屋「ダイシン食料品店」で、最近になって置くようになったとのこと、小さめとはいえ開きが一尾150円。お手頃だろう。
これを二尾買い、「さてどうやって食べようか」と考える。魚屋のおばちゃんは「天ぷらにするといい」とのことだったのだが、揚げ物は家ではしない主義である。
蒲焼もよさそうだとは思った。あなごをもっともシンプルに食べるなら、やはりまずは蒲焼だろう。
でもぼくの場合、「あなご」と聞いてまず思い浮かぶのは、「あなごめし」なのだ。
広島に住んでいたころ、時々宮島へ散歩に出かけた。広電「宮島口」で降り、宮島へ行くフェリー乗り場にむかう途中に、あなごめし屋があるのである。
「うえの」という名で、人気店のため店内で食べようと思うと1~2時間は待つ。しかしうえのは弁当がうまいので、冷めたときにちょうど良くなるよう味がしつらえられている。
弁当なら予約ができるので待たずに買え、宮島に持ち込んで、ベンチで鹿の襲撃を避けながら食べる。
ふっくらと薄味に炊き上がったあなご。
タレがしみたご飯といっしょに頬張ると、うなぎに比べればさっぱりはしているが、それでもしっかりと乗った脂が口にひろがる。
「これを食べたい」と思うのである。
うえののあなごめしは白めしに煮あなごを乗せたものだが、きのうは炊き込みご飯にした。
あなごも米も一緒に炊け、作るのがラクである。
ゴボウと油あげも加えれば、さらに楽しくなるだろう。
あなごはよく洗ってぬめりを取り、臭みを抜くため軽く焼く。
中火にかけたフライパンをよく熱し、表と裏を、サッと焼き色が付くくらい。
丸まるから抑えながらやったらいいが、そう気にするほどでもない。
一人用の土鍋に5センチ角ほどのだし昆布を敷き、研いだ米1カップ、ささがきにして水にさらしたゴボウ、細く刻んだ油あげ、焼いたあなご、水1カップ、酒とみりん、淡口しょうゆを大さじ1ずつ、塩小さじ2分の1を入れる。
あなごが思ったより小さかったから、さらにちくわを薄く切ったのを追加した。
水の量だが、基本は米の1.2倍。上も調味料をあわせれば、だいたいその量になっている。
ただし炊き込みご飯の場合には、油あげが水気を吸う。
米の上にゴボウ、油あげと乗せていくようにするのでなく、油あげを米と混ぜ込むなら、水の量を少し増やしたほうがいい。
フタをして、中火にかける。
フタの穴から湯気が勢いよく吹き出すようになってきたら、弱火にする。
炊き時間は10分だが、湯気のにおいを時々かぎ、10分より早くおこげのにおいがしてきた場合は、それで火を止めてしまっていい。
火を止めて、さらにそのまま10分蒸らす。
炊き込みご飯が出来上がり、フタを開けるのはワクワクする。
あなごとゴボウの何ともいい香りがぷんとする。
薬味はわさび。
ご飯にしみたあなごの風味がたまらない。
しかし炊き込みご飯は、色々な食べ方をするのも楽しい。
薬味を追加してみてもいい。
さらにお湯を入れ、湯漬けにする。
酒房京子で見たやり方だが、これがまたうまいのである。
きのうはあとは、ツバスの煮汁をうすめて煮た高野豆腐。
魚の煮汁は、うまみがたっぷり出ているのだから、捨てずに再利用するのがいい。
ただそのままでは辛いから水で3倍程度にうすめ、甘すぎるからしょうゆをほんの少し足す。
それで水にひたし、手のひらで押してよく絞った高野豆腐を15分くらい煮る。
それからとろろ昆布の吸物。
お椀にとろろ昆布と削りぶし、青ねぎ、淡口しょうゆを入れ、お湯をそそぐ。
前日の酢の物。
冷やしトマト。
酒は冷や酒。
ご飯があったからそれほど飲まないかと思ったら、それでもいつも通り2杯が胃に収まった。
「宮島はきれいだよね。」
そうだよな。
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