カレーを洋風に本格的につくろうとすると、何時間もかけてスープを取って、1時間かけて玉ねぎをアメ色になるまで炒めてと、とてつもない時間がかかる。さすがにそれは、いつもできることではないから、市販のカレールウを使う人は多いとおもう。
日本のカレールウは大変よくできているから、おいしいカレーを食べようと思うだけなら、それで十分。
しかし市販のカレールウを使っていると、料理の上達が止まるのだ。
市販のカレールウには、何が入っているかわからない。わからないものを使っていると、当然、理解もすすまない。
料理はやはり、ただ単に作業としてするのでなく、内容を理解するからこそ応用ができるようになる。
そこに奥深いおもしろさがあるのであって、それを味わおうと思ったら、市販のカレールウは使わないに越したことはないのである。
といっても、カレーをつくるたびに何時間もかけていられないのはもちろんだ。そこで高野が、どんなにのんびり作っても1時間はかからない、市販のカレールウを使わなくても実においしいカレーのつくり方をお目にかけようというわけだ。
名づけて、「みそ煮込みカレー」。
名前のとおり、八丁みそが入っている。
八丁みそを適当な調味料とあわせて肉を煮込むと、ドミグラスソースのような味になるのは、以前から指摘している通りだ。
カレーとは、要はドミグラスソースにカレー粉を加えたものなのだから、すなわちみそ煮込みにカレー粉を加えれば、おいしいカレーになるというわけである。
みそだから、必要なのは適当な調味料と混ぜあわせるだけ。一瞬にして、何日もかけてつくられるドミグラスソースと遜色ない味になる。
そう聞くと、「ちょっと安易だ」と思う人もいるかもしれない。しかしこれは、安易でもなんでもなく、八丁みそがスゴイのだ。
八丁みそは、まる2年かけて熟成される。2年の時間が封じ込められているわけで、そういう意味では、ドミグラスソースをつくるために必要な「数日」など、「下がれ」と言ってもいいほどだ。
八丁みそとあわせる調味料は、上のリンクの「豚肉のみそ煮込み」と、ほとんどおなじで、ニンニクと豆板醤、酒とみりん、しょうゆにオイスターソースなど。ただし油は、より洋風っぽくするために、オリーブオイルを使う。
あとカレーには、やはりトマトの酸味が必要だ。生のトマトをざく切りしたのを入れるようにする。
つくるのは、調味料や材料を順番に鍋に入れていくだけだから、むずかしいことは何もない。
肉に下味をつけるのは、炒め煮の要領で、調味料を全部入れたところに肉を漬け込んでおくようにする。
フライパンに、
- オリーブオイル 大さじ2
- ニンニク 1~2かけ (みじん切り)
- 豆板醤 大さじ1
を入れて弱火にかけ、2~3分じっくり炒めて味をひき出したあと、S&Bカレー粉(赤缶)・大さじ2を加え、さらに2~3分じっくり炒める。
カレー粉を最初から入れてしまうと、油をぜんぶ吸いとってしまうので、あとから入れるようにするのである。
- 八丁赤だしみそ 大さじ3
- 酒 大さじ3
- みりん 大さじ3
- しょうゆ 大さじ1
- オイスターソース 大さじ1
- コショウ 少々
を、加えながらみそを溶きのばす。
カレー用の豚肉角切り・200グラムを入れ、調味料によくからめ、5~10分漬け込んでおく。
フタをして弱火にかけ、ときどき混ぜながら5~10分、じっくりと火を通す。
こうして肉を漬け込み、炒め煮にすることで、肉に味がしみるのだ。
- メークイーン 3個 (皮をむき、3~4センチ大に切る)
- ニンジン 1本 (皮はむかず、2~3センチ大に切る)
- トマト 1個 (どうせ溶けてしまうので、ヘタを取って適当にざく切りにする。トマトは写真にはないが、ここで入れる)
を入れて、弱めの中火くらいで2~3分じっくり炒めて味をからませる。
玉ねぎもここで入れてもいいのだが、僕は玉ねぎはややシャキシャキしたほうが好みなので、後で入れる。
水・3カップ(=カレー3皿分)を入れ、煮立ったら弱火にし、フタを斜めにかけてコトコト煮る。
10分たったら、4等分のくし切りにした玉ねぎ・1個を入れ、さらに10~20分、ジャガイモが十分やわらかくなるまで煮込む。
- 片栗粉 大さじ4
- 水 大さじ4
の水溶き片栗粉を、混ぜながらすこしずつ加えてトロミをつける。
粗挽きコショウ・少々をふり、ひと混ぜして火を止める。
ご飯を添えてももちろんいいが、僕は酒を飲むからそのまま食べる。
これは、死ぬ……。
食べただけでは、みそが使われているとは絶対にわからない、ほんとうに普通においしいカレー。
炒め煮し、さらに味がついた汁で煮込んであるから、肉にも野菜にもしっかりと味がしみているのがたまらない。
そしてまたこのみそ煮込みカレーが、酒に、よく合う。
これで飲み過ぎずにいれるのなら、何杯飲んでも酒に酔わないということだから、だったら酒など飲む必要がないのである。
「屁理屈はいらないよ。」
そうだよな。