豚肉が100グラムほどとキュウリが2本、余っていたのだ。そこでこれを、炒め合わせることにした。
キュウリを炒めると聞くと、不思議に思うかもしれない。
しかしキュウリは、中国ではふつうに炒めるし、おなじウリ科のゴーヤを炒めたり、冬瓜を煮たりすることからも分かるとおり、火が通ってコックリとやわらかくなったキュウリは、またいかにも「夏の味」といった風情でうまいのだ。
味つけは、これはもう間違いなく、ピリ辛味。キュウリのキムチがあることからも分かるとおり、キュウリはピリ辛味がとてもよく合う。
さらにこのキュウリと豚肉に、卵を加えることにする。
キュウリと豚肉(ハム)・卵といえば、冷やし中華の具ともなる、黄金のトリオである。
さてこれをつくるとき、考えないといけないのは、「どうやってキュウリに味をしみさせるか」だ。
冬瓜の煮物を思い出せば分かるように、瓜系の野菜はやはり、コックリと味がしみたのがいいのだが、キュウリは水分が多いため、味がわりとしみにくい。
以前見た中国人のレシピでは、キュウリを細く刻んでいた。でも日本人の感覚だと、キュウリに味をしみさせるなら、最低でも漬物を切って食べるときくらいの厚みはほしい。
日本人がつくったもので、キュウリのぬか漬けを炒めものに使っているのも見たことがある。これならさらに味をしみさせる心配はいらないが、キュウリを今からぬか漬けにするわけにはいかない。
しかしそこは、「炒め煮」なのだ。調味料の原液に漬け込んで、そのまま炒める、おもに肉に味をしみさせるために使われる炒め煮は、キュウリに味をしみさせるためにも有効だ。
調味料の原液は塩辛い。そこにキュウリを漬け込めば、いわば一夜漬けにするようなものだ。
豚肉は、かたまり肉を3ミリ厚さくらいに切って使ったのだが、これはうす切り肉でももちろんいいし、焼肉用の肉でも、もちろんいい。
コツというほどのこともなく、つくるのは簡単だから、初心者でもそうは失敗しないはずだ。
フライパンにサラダ油・大さじ1を入れて中火で熱し、溶き卵・3個分を流しこむ。
8割方かたまるまで置いておき、大きめにザックリ切り分け、よく火を通して皿にとり出す。
あらためてフライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 豆板醤 大さじ1
を入れて弱火にかけ、2~3分じっくり炒めて味をひき出す。
火を止めて、
- 八丁赤だしみそ 大さじ1
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- しょうゆ 小さじ1
- オイスターソース 小さじ1
- コショウ 少々
を、順に入れながらみそを溶きのばす。
- 豚肉の焼き肉用か薄切り 100グラム 食べやすい大きさに切る
- キュウリ 2本 3ミリ厚さくらいの斜め切り
を入れ、タレをよくからませて、10分くらいおいておく。
中火にかけ、汁気を飛ばしながら2~3分炒る。
キュウリがやわらかくなってきたら、
- 皿にとり出しておいた卵
- 長ネギ 10センチくらい (みじん切り)
を加え、皿にまぜて味をからめる。
汁気がほぼなくなってきたら、
- ゴマ油 小さじ1
- 酢 小さじ2
- 粗挽きコショウ
をふり、ひと混ぜして火を止める。
これは、たまらない……。
こっくりとピリ辛味がしみたキュウリとほんわり卵は、ウソでなく死ねる。
そしてまた、これが酒に合うのだ。
ここまで酒に合ってしまうと、「飲み過ぎないようにする」ということば自体が、すでに意味を失うのではないかとおもう。
「失わないよ。」
そうだよな。