きのうも、仕事は捗らなかった。
おとといの飲みのシメに、ラーメンに加えてチャーハンまで食べたので、きのうは一日腹が減らず、昼飯は食べなかった。なので当然、歯も磨かなかった。
すると夕方になり、歯茎が猛然と痛みはじめたのである。
よくよく考えてみたら、朝コーヒーショップで、サンプルとして提供されていたビスケットを1かけ食べた。その残りカスが、歯周ポケットに詰まったらしい。
まさかそんなことで、歯茎が炎症を起こすとは思ってもみないわけだ。「年を取るのはなんと忌々しいものか」と、おれは自分で自分を呪った。
しかもその歯茎の炎症に、歯根に潜んでいる細菌どもが乗っかってくるのだ。
以前にした治療の不備で、おれの右上奥歯の歯根には、細菌の住処がある。それをきちんと治療しないままでいるために、炎症がちょっと起こると、一緒になって暴れだす。まったくタチの悪い奴らなのだ。
それでコーヒーショップで仕事をしようと思っても、もう歯茎が痛くて痛くて、たまらなくなった。仕事を中断し、家にもどって歯を磨かずにはいられなかった。
家にもどれば酒があるから、そろそろ夜だし、それは飲んでしまうだろう。おかげで仕事は、ボロ残りになってしまった。
おととい仕事をしなかったから、きのうはほんとは、その分を取り返さなければいけないはずだった。
それなのに、また仕事をしないのだから、おれはこれから、どうやって生きていったらいいのか分からないのである。
といいつつも、順調に酒は飲む。きのうの肴は、キムチみそ煮込みうどんにした。
買ってから、3週間がたったキムチがあったのだ。キムチは冷蔵庫に入れておくと、発酵が進んでいく。はじめはそのまま食べるとうまく、1~2週間たって酸っぱくなると、今度は料理に使うとうまい。
3週間は、そろそろ「発酵しすぎ」になりつつあり、使い切ってしまわないといけなかった。
キムチを使った料理といえば、やはりまずは、豚キムチ。それから、キムチ鍋。あとはサンマやイワシなどの青魚を煮るのもうまい。
そして実は、キムチはみそ汁に入れるとうまいのだ。
一番簡単にやるのなら、ふつうに作ったみそ汁にキムチを乗せ、青ねぎをかけ、ゴマ油を1たらし。これだけで、みそ汁が「別次元」とも思える味になる。
みそもキムチも、発酵食品。みそ汁に納豆を入れるとうまいのと同じ話で、発酵食品どうしは合うということなのだと思う。
さらにこのみそ汁を煮込むと、味は一層深くなる。
ただしもちろん、みそを煮込もうと思ったら、八丁みそを使う必要がある。
普通のみそが、煮込んでしまうと風味が飛ぶのにたいし、八丁みそは「煮込めば煮込むほどうまくなる」といわれる。普通のみそと八丁みそは、使い方としては「別のもの」と思ってもいいほどだ。
八丁みそは、煮込むほかにも、炒め物の調味料として使ったり、中華や洋食のベースにしたりと、実にさまざまな使い出がある。
麦みそを混ぜて使いやすくした「赤出しみそ」を常備しておくのはおすすめだ。
さてキムチと八丁みそを煮込むのだから、やはりうどんを入れて、みそ煮込みうどんにするのがうまいだろう。
具は、みそ煮込みうどんでは定番の鶏肉と、ゴボウ、厚揚げ、それに大根やらニンジンやら、鶏肉と相性がいいネギやらしいたけやら、さらには玉ねぎやら、冷蔵庫に残っていた野菜を片っ端からたたき込むことにした。
キムチを煮込む場合には、はじめにゴマ油と炒めると、味が引き立つ。そこにニンニクと煮干を加えると、さらにコクが増すわけだ。
鍋に、
- ゴマ油 大さじ1~2
- キムチ 300g入りパック3分の1(=100g)ほど
- キムチの汁 あるだけ
- ニンニクみじん切り 1~2かけ分
- 頭とわたを取った煮干し 1つまみ
- 食べやすい大きさに切った鶏(もも)肉 1枚
を入れて、強めの弱火くらいにかけ、ときどき混ぜながら5分くらいじっくり炒め、味をなじませる。
- 短冊に切った大根 5センチくらい
- 短冊に切ったニンジン 5センチくらい
- ささがきにして5分ほど水にさらしたゴボウ 1本
- 1センチ暑さくらいに切った厚揚げ 5センチ角くらい
を加えてさらに軽く炒め、味が絡まったところで、水・3カップを加えて2~3分煮て、
- 酒 大さじ3
- みりん 大さじ1
- 赤出しみそ 大さじ4~5(味を見ながら)
で味付けし、さらに5分くらい煮る。
ここで、
- ざく切りにした長ねぎ 10センチくらい
- 半分に切ったしいたけと、石突の上半分 4枚
- 横に切った玉ねぎ 2分の1個
を入れたら、あまりにも鍋が一杯になってしまい、うどんが入る余地がなくなった。
そこで一回分を小鍋に取り、
- うどん 1玉
- 生卵 1個
を加えて、フタをして、さらに5分くらい煮る。
たっぷりの青ねぎと、粗挽きコショウをかける。
これは、ほんとに死ぬ、、、
キムチに赤出しみそ、さらにニンニク、煮干し、鶏肉、野菜で、強烈なコクなのだ。そのコクが、うどんにしっかりしみている。
それに、粗挽きコショウがまたよく合うのだ。
卵ははじめから溶いてしまわず、まずはそのまま十分食べ、最後に味を変えるためにつぶすのがおすすめだ。
酒は、焼酎水わり。
仕事はしなくても、酒は飲む。おれは酒を飲むために生きているわけだから、それが正しい。
あとはどうせ死ぬだけだから、やりたいことをやるのが大事なのだ。
「悲惨な老後を送るよ、ぜったい。」
そうだよな。