「在日コリアン風」の吸い物(牡蠣と水菜、豚肉と菜の花)、これはホントに衝撃的だ。何しろ完全に関西風・うす味、普通のカツオだしに、ニンニクと強めの唐辛子を加えたというだけのもの。
日本料理の粋ともいえるカツオだしと、日本料理には決して使われることがないニンニクが、ミスマッチのように見えて実によく合う。在日コリアンには当たり前のこの味が、日本人にとっては未体験の、強烈な新しさを感じさせる味なのだ。
例えてみれば、カツオだしは、男気に厚くて寡黙な高倉健のようなもの。ここに加わるフワッと広がりがあるニンニクは、倍賞美津子。その脇を、田中邦衛の赤唐辛子がピリッとしめるという趣きだ。
ニンニクと赤唐辛子を加えることで、完全に次元がちがう、新たな世界が立ち現れるわけである。
これは、ぜひとも体験してみたらいいと思う。目からウロコが、230枚くらいは落ちるはずだ。
さてきのうも、この味にどっぷりハマってしまったため、豚肉とカブの吸い物・在日風。
豚肉とカブも相性がよいものの一つで、淡白なカブにコッテリとした豚の味がしみたのがたまらない上、カブの葉や茎が、要は青菜なわけだから、豚肉とよく合うわけだ。
これを日本式の吸物にする場合、やはり割り落とすなり、卵かけご飯にするなりと、「卵」を加えないとどうしても一味足りない。和風だしで肉を料理する場合に卵を加えるのは、親子丼を初めとして和食の王道、これはこれでもちろんうまい。
でもそうすると、どうしてもホンワリとしたやさしい味になってしまい、吸い物特有の高倉健的なストイックさには欠けてしまう。
ところがニンニクに唐辛子だと、ストイックさはそのままにバランスの取れた味になり、親子丼などどんぶり物ならともかく、吸い物としてはこちらの方がうまいのではないかと思う。
この在日風吸い物を作るのは、べつに特に難しいこともなく、時間も大してかからないのだが、カブを扱う際には注意すべき点が2つある。
まず第一に、皮を思い切り厚く剥くこと。
4~5センチ大の小さめのやつでも厚さ2~3ミリ、6~7センチある中型のやつなら、4~5ミリは剥いていいと思う。
カブの皮近辺は筋張っていて、煮ただけでは柔らかくならないのだ。
それから10センチくらいある大型のものは別として、6~7センチまでのいわゆる「小カブラ」は、煮過ぎるとアレヨアレヨと溶けてしまう。なので煮時間には十分注意を払うことが必要。
厚さ1~2センチ程度に切った場合、煮時間は4~5分くらい。煮えてきたら串を刺すなり、食べてみるなりして確認し、「まだちょっと硬いかな」というくらいで火を止めるのがおすすめだ。
しょうゆは薄口、唐辛子は韓国粗挽き唐辛子が、在日コリアン的には本式。ただし薄口しょうゆがなければ、濃口の量を減らして塩を増やして、粗びき唐辛子は一味で、代用することもできる。
(僕は現在調味料を手に入れにくいため、濃口と一味で作っている)
鍋に水・3+2分の1カップ(3カップ分のだしが取れる)を入れて煮立て、カツオ節15グラム(2.5グラム入りパックなら6袋分)を入れたザルを据える。
弱火にし、30秒くらい煮出して火を止めて、2~3分したらだし殻を軽く絞ってザルをとり出す。
(だし殻は、再利用については無理せずに、捨ててしまってもいいと思う。ポン酢に一味などをかけ、調理中の酒の肴にするのも悪くない)
取れた3カップのだしに、
- ニンニク 1かけ (すり下ろす)
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- しょうゆ 薄口なら大さじ2、濃口なら小さじ2
- 塩 味をみてちょうど良くなるまで。濃い口を使った場合のほうが塩の量は多くなる。
で味をつけ、
- カブ 1束 (5ミリほど残して茎を落とし、皮を厚く剥いて、大きさによって4~8等分のくし切りにする)
- 油あげ 1枚 (タテ半分に切って、ヨコに5ミリ幅くらいに切る)
- 長ねぎ 10センチくらい (斜め切り)
- 豚コマ肉 150グラム
- カブの茎と葉 ざく切り
を入れて5分くらい、カブがほぼ柔らかくなるまで煮る。
火を止めたら10分でも20分でも置いておくと、カブにしっかり味がしみる。
器によそい、粗びき唐辛子(一味)をたっぷりかける。
これはホントに、病みつきになる味っすよ。
あとは、ジャガイモご飯。
鍋に、
- 米 1カップ (研いで15分くらいザルに上げておく)
- ジャガイモ(中) 1個 (1センチ角くらいのさいの目)
- 水 1カップ
- 酒 小さじ1
- 塩 小さじ4分の1
を入れ、普通に炊く。
この在日風吸い物、ご飯も酒も、マジでいくらでも進むというやつなのだ。
注意に注意を重ねても、飲み過ぎてしまうことになりがちなのだが、それは諦めるしかないと思う。
「注意していないよね。」
ホントだな。