先日「牡蠣のキムチチゲ」を作ったとき、ツイッターで在日コリアン料理の巨匠・あらい商店の大将から、この牡蠣の吸い物・在日風を教えてもらった。
ちなみに「在日コリアン料理の巨匠」という呼び方、あらい商店の大将は「それは(恥ずかしいから)やめてくださいよ」と言うのだが、大将がそれにまさに該当するのは間違いないのだ。
在日コリアンであるあらい商店の大将は、朝鮮の料理をベースとしながら、そこに日本風、中華風、洋風などなどの料理を国境を超えて融合させていく、在日コリアン独自の料理を非常においしく作れる人であるのは、まず間違いない。
次に「在日コリアン料理」「在日料理」という言葉、グーグルで検索してもヒットするのは、僕が以前あらい商店を紹介したブログ記事のみ。つまりこの言葉は日本にはまだ僕の周辺にしか存在しない。
であれば僕の周辺で非常においしい在日料理をつくる人を「在日コリアン料理の巨匠」と呼ぶことに、何も問題はないのである。
さてあらい商店の大将に教えてもらった牡蠣の吸い物・在日風、大将のレシピは次の通り。
「カツオ出汁に薄口しょうゆ、酒、みりんでさっぱり目に味つけし」たものは、いわゆる日本の吸い物だ。これにニンニクと韓国粗びき唐辛子を加えたもので、牡蠣と水菜を煮るという企画になっている。
これは、間違いなくウマそうではないか。
日本だと、牡蠣は吸い物にしないことはないにせよ、あまり一般的ではないと思う。牡蠣のクセが強いからだ。
なのでポン酢ともみじおろしや味噌などで、牡蠣のクセを中和して食べるのが一般的。
しかし朝鮮料理には、クセを中和するには王道の、「ニンニク」があるわけで、これを牡蠣に使うというのは、まさに理にかなっている。
しかもこの牡蠣の吸い物、朝鮮の料理とはちがう。朝鮮・韓国では「カツオだし」は使わない。
だからこの牡蠣の吸い物、生まれた時から日本に住み、朝鮮の料理と日本の料理の両方を深く知る在日コリアンならではの料理といえる。
カツオだしとニンニクの組み合わせに意表を突かれ、僕は「ぜひ作らねば」と心に決めた。
ところがそれをすぐに作れなかったのは、東京に来ているからだ。あれこれバタバタしているし、さらに今いる実家の近くだと、薄口醤油と粗挽きコショウが手に入らない。
「アマゾンで取り寄せるのも時間がかかるし・・・・・・」
と思っているうち、時間が過ぎた。
すると上のツイートを見て、牡蠣の吸い物を実際に作った人が現れた。
「チクショウ、先を越された!(笑)」
そう思うとムラムラと負けじ魂に火がついて、きのう薄口醤油も粗びき唐辛子もなしで、この牡蠣の吸い物・在日風を作ったという次第。
濃口醤油は、少なめに使って塩で味を補うと、薄口醤油の代わりになる。また韓国粗びき唐辛子は、一味で代用することにした。
もちろんきちんと薄口醤油と韓国唐辛子を使った方がうまいには決まっているが、それでもこれは、まったく問題なく死ねた。
あと、あらい商店・大将のレシピでは、ニンニクを「すり下ろす」ことになっている。
でもそれだと、味は弱めの日本の一味が相手だとニンニクの味がきつくなりすぎると考えて、今回はすり下ろさず、たたき潰してだしと一緒に煮出すように、レシピを少し変更してある。
牡蠣はそろそろ本当に旬が終わる。なくなってしまう前に、この牡蠣の吸い物・在日風、作ってみた方がいいのではないかと思う。
作るのは、難しいことは何もないし、時間もほとんどかからない。
牡蠣と水菜を煮過ぎないようにするのがコツといえばコツというくらい、料理初心者が作っても、大きく失敗はしないと思う。
牡蠣・120グラムくらいは、生食用ならサッと水洗いするだけでいい。
加熱用なら、片栗粉・少々をふって軽く揉み、そのあと水を3~4回替えてすすいで、水をよく切っておく。
鍋に、
- 水 3+3分の1カップ (3カップ分のだし=2杯分が取れる)
- ニンニク 1かけ (包丁の腹でつぶして薄皮を取る)
を入れて中火にかけ、煮立ってきたら一旦火を止め、かつお節15グラム(2.5グラム入りのパックなら6袋)を入れて、再び中火にかける。
煮立ってきたら弱火にし、30秒煮だしたあと、火を止めて2~3分置いてかつお節を軽く絞ってとり出す。
(鍋にザルを据え、そこにかつお節を入れるようにすると濾すのがラク。ニンニクは取り出さなくていい)
取れた3カップのだしに、
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 濃口醤油 小さじ2 (薄口醤油なら大さじ2弱)
- 塩 少々 (味を見ながら)
で味をつけ、牡蠣を1~2分煮る。
ざく切りの水菜・2分の1把を入れ、再沸騰してから20~30秒煮て火を止める。
器によそい、一味をたっぷり目にかける。
これは、たまらん・・・・・・。
プーンと風味が立つかつおだしに、ニンニクがまた信じられないくらいよく合うのだ。
その味がしみた牡蠣は、軽く350回は死ねる。
あとは、牡蠣がサッパリしているので、ご飯はコッテリ目に「ウインナーとじゃがいもご飯」。
鍋に、
- 洗ってザルに15分くらい上げた米 1カップ
- ウインナー 2本 (5ミリ幅くらいの小口切り)
- じゃがいも(中) 1個 (1センチ大のさいの目)
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 水 1カップ
- 酒 小さじ1
- みりん 小さじ1
- しょうゆ 小さじ1
- 塩 小さじ4分の1
を入れ、普通に炊いて、茶碗によそって粗挽きコショウ・少々をかける。
牡蠣の吸い物・在日風が、また酒に異常に合うのは言うまでもないことだ。
これで飲み過ぎなかったら、酒など飲まない方がいいと思うくらいだ。
「そんなことないよ。」
そうだよな。