きのうは、ニギスの煮付。
魚の煮付は、やはり何といっても、一緒に煮たゴボウがうまいのだ。
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きのうは魚屋へ行ったら「ニギス」を勧められたわけで、それは実は初めてではなく、たぶんニギスは今が旬なのだろう、このところ、魚屋へ行くたびに勧められている。
サンマより一回り小さいのが、1尾90円だったから、大衆魚と言っていい。
しかし買うのは躊躇していたわけで、それは「食べたことがなかったから」だ。
ぼくは自分では、性格はわりと保守的だと思っていて、新しいものにはなかなか飛びつかない。携帯も、いまだにガラケーを使っている始末。
服などは、破れるから買うけれど、もし破れなければ、一生おなじものを着ていてもいいと思う。食べ物も、塩麹など新しいものにはまず手を出さないし、ラーメンも、新しいタイプのものよりも、昔ながらの「中華そば」みたいなのが好き。
ニギスにしても、一度や二度、見ただけでは、あまり買う気にならないのだ。
しかし勧められるのが3度、4度となってくると、話はちがう。これが魚屋のいいところで、スーパーで買物をしていたら、ニギスなど一生食べることはなかっただろう。
おばさんに食べ方を聞いてみると、
「塩焼、煮付、フライ、、、それにムニエルなんかでもいいよ」
とのこと。
まあいわゆる、普通の魚の食べ方ということだ。
煮付にすることにして2尾を買い、ついでに八百屋でゴボウも買って帰った。
魚の代表的な食べ方といえば、おばさんの言う通り、塩焼、煮付、フライ、ムニエルとなるわけで、ぼくはこの中で、煮付がいちばん好きだ。料理法の好き嫌いを言うのもおかしいかもしれないが、ぼくは、煮るのが好きなのである。
たぶん「水」が好きだからではないかと思う。
運動も水泳が好きで、中学と高校は水泳部。山よりも、海が好き。
小さいころは、色紙を洗面台に溜めた水につけ、水に色を溶かして遊ぶのが大好きだった。
この「何でも溶ける」というのが、水が好きなポイントで、洗濯でも、洗濯機が回っているあいだ、ずっと上から覗いていたりしてしまう。
煮るのも、要はまずは、材料のうまみなどが水に溶け出していくわけで、その感じがたまらない。初めて鶏ガラのだしを取ったときは、だしが取れるまでの4~5時間、前に座ってずっと鍋の中を覗いていた。
しかも煮るのがスゴイところは、その溶け出したうまみが合体し、加えた調味料とあわせて一つの「味」となったあと、それがふたたび、材料にしみていくことだ。このプロセスは、考えただけでワクワクする。
まあそういうわけで、ぼくは魚といえば、たいがい煮付にするのである。
煮付については、語り出したら止まらないのだが、一つだけ言いたいのは、「ぜひやってほしい」ということだ。とても奥が深くて、おもしろい。
使う材料は決まりきっていて、水にだし昆布、酒と砂糖とみりんと醤油だけなのだが、これらの量の加減と火加減とで、いかようにも味の違いがつくり出せる。
あっさりしたの、コッテリしたの、辛めのもの、甘めのもの、テリを出したもの、出さないものなどなど、自由自在。
まさに、「墨絵」のような世界だと、ぼくには思える。
といって、必ずしも難しいわけではなく、敷居は低い。手間も時間もかからない。
煮付は、家庭料理としての価値は、とてもとても高いのだ。
魚だけを煮付けるのももちろんいいが、せっかくの魚のうまみが出た煮汁ができるのだから、何か、これを吸わせるものを一緒に合わせるといい。
ゴボウは、やはり定番中の定番で、きのうは、ニギスの味がよく分からないから、ゴボウを入れることにした。
ゴボウは味を吸うだけでなく、ゴボウの香味が、煮付をまたうまくもする。
ニギスは水で洗い、ウロコがあるから、それはよく取る。頭やワタは、落とさなくていいそうだ。
じっさい魚は、切り身ではなく丸ごとのやつは、頭を落とさずに料理したほうが見栄えがいい。
鍋に洗ったニギスと、だし昆布、太めのささがきにし、5分ほど水にさらしたゴボウを入れる。
ここに、水を1カップ半、酒と砂糖、みりんそれぞれ大さじ3ずつを入れ、強火にかける。
醤油をあとから入れるのは、その方がゴボウに味がしみやすいから。
煮立ってきたら少し火を弱め、アクを取りながら2~3分煮る。醤油・大さじ3を入れ、落としブタをして、さらに10分。
火加減は「強めの中火」くらい、落としブタの下まで、沸いた煮汁がきちんと上がってくる強さを保つ。
魚の煮付は、「煮時間」がいちばん大事で、ブリとサンマ、イワシを除いて、だいたい10分~15分。それ以上煮てしまうと、魚はパサパサになってしまう。
10分たったら火を止めて、煮汁をスプーンで上からかけ、そのままフタをしてしばらく置く。こうするうちに、味がしみることになる。
温めなおして皿に盛り、煮汁を上からかけ回す。
プリッとした食べ応えのニギスはもちろんうまいが、やはり煮付は、この味のしみたゴボウが、何といってもたまらない。
きのうは、ホタルイカも食べた。
定番中の定番、酢みそ和えで、キュウリと合わせた。
ホタルイカは、サッと水洗いして、水気をふき取る。キュウリはうすく切り、一つまみの塩で揉んで、10分ほどおいたら水洗いし、やはり水気はよくふき取る。
皿に盛り、同量くらいの酢と西京みそ、それにカラシ少しの酢みそをかける。
あとは、豆腐とミョウガの赤出し。
水に頭とワタを除いた煮干しと豆腐を入れ、10分くらい、煮立てないように煮たあと、赤出しみそ(八丁みそ)を溶きいれて、お椀によそい、縦にうすく切ったミョウガをのせ、一味をかける。
それに、スグキ。
酒は、冷や酒、その後、日本酒を切らしてしまったから焼酎水割り。
きのうも、料理はつくづくうまい。酒も、うまい。
これだけあれば、とりあえずは、文句も、ない。
「お気楽すぎるよ。」
そうだよな。
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