きのうは、カキのミルク鍋。
体をあたためるには、カキもいいのである。
きのうも京都は、雪がちらつく寒い一日。
体を強力にあたためるものがないと生きていけない気分である。
何しろ、仕事をやる気にならない。仕事しないと生きていけないのは言うまでもないことだ。
布団からも出る気にならない。すぐに酒を飲みたくなる。
しかし、寒いのだから、仕方がない。
あたたかくなるものを食べ、酒を飲んで寝るのが一番だ。
「体をあたためる」というと、カキもかなりのものである。
食べた翌日、じんわりと体があたたかいのが実感できる。
この実感は、カキと、豚肉またはレバーとニラのときだけ。「海のミルク」と呼ばれるだけあり、豊富な栄養が含まれているようだ。
さらにカキは、酒の分解力もパワーアップしてくれる。
飲み過ぎても次の日まったく残らないのも、酒飲みにはうれしいところだ。
カキも、食べ方はいろいろある。カキフライはメジャーだし、酢ガキ、焼きガキ、ぬたなどもうまい。
しかし、「あたたまる」といえば、やはり鍋。
みそ味の「土手鍋」が有名だが、きのうは「ミルク鍋」にした。
牛乳が、酒や鮭やカキなどの魚介にあうのは言うまでもない話。クリームシチューなどは定番だが、鍋にしてももちろんいい。
牛乳は「洋風」のイメージだが、じつは和風だしにもバッチリ合う。
このミルク鍋も、だしは要は、「おでんだしに牛乳を入れただけのもの」なのである。
和風だしは、削りぶしなど魚介ベースだ。
魚介にあう牛乳と相性がいいのは当然で、削りぶしの風味がぷんと立つミルク鍋は、大変うまい。
カキはきのうは、生食用。
知らない人のために言っておくと、生食用と加熱用なら、加熱用のほうが味がいい。
「生食」というと活きがいい感じがするが、そうではなく、カキはとれた段階では「加熱用」なのである。
それを数日かけ、きれいな水で殺菌し、生食用になるわけで、そのあいだにどうしてもうまみは抜ける。
だから火を通すなら、加熱用を選ぶのがいいが、きのうは魚屋には生食用しか出ていなかった。
ならば生食用でも、べつに問題はないのである。
生食用のカキなら、水でサッと洗うだけでいい。加熱用の場合には、片栗粉をふってもみ洗いし、そのあと水を何度か替えてゆすぐと、汚れがきれいに取れる。
きのうはカキのほかには、ミルク鍋にはやはり白菜。白菜にはやはり厚揚げ、そして色目にニンジンをいれた。
だしは、まず昆布と削りぶしのだしを2カップとる。
2カップ半の水に、10センチくらいのだし昆布、一つかみの削りぶしをいれ、煮立てないよう10分煮出せば、だいたい2カップのだしができる。
ここに、酒とみりん大さじ2ずつ、淡口しょうゆ大さじ1で味付けする。
淡口しょうゆは少なめだが、これはミルクのせっかくの白い色をあまり濁さないためである。
味付けしただしに、牛乳1カップをいれる。
あとは塩を加えて味をととのえれば、鍋のだしはでき上がり。
小鍋をテーブルのコンロにかけ、だしを張る。
まず白菜の茎と厚揚げ、ニンジンだけをしばらく煮る。
牛乳は煮立てると分離するから、弱火で煮るのが肝心だ。
鍋の「コトコト」と煮える音だけが小さく聞こえる、静かな時がおとずれる。
鍋は、この「静寂」を味わうことが醍醐味の一つだろう。
ミルク鍋だけにかぎらず、小さな火でゆっくり煮るのがおすすめだ。
白菜とニンジンに火が通ったら、まず白菜の葉をいれる。
最後にカキをいれ、加熱用でも1分ほど、くれぐれも火を通し過ぎないように、サッと煮て火を落とす。
鍋にいれたままにせず、煮たぶんはすべて器に救出する。
そのままでももちろんうまいし、青ねぎや、黒コショウなどをかけるのもいい。
このカキのミルク鍋、あたたまることこの上ない。
きょうになっても、まだ体がポカポカしている。
酒は、熱燗。
きのうはつい、いつもより余計に飲んだのだが、やはりカキのおかげで、今朝はまったく残っていない。
「仕事しないでお金がなくなっても知らないよ。」
そうだよな。
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