にしんナスを作ろうと思ってナスを買ったのに、いざ作り始めたら、気が変わってしめじとツナの卵炒めを作ってしまった。
何を作るか考えるのが楽しいから、仕方ないのである。
ナスもそろそろ別れを告げておかないといけない季節になってきて、最後に何を作るかと考えてみると、にしんナスを、今年はまだ一回しか作っていないことに気が付いた。
にしんは京都でよく食べられるものの一つで、にしんそばは名物だが、家庭ではナスと炊き合わせることが多いのではないか。魚屋でも、にしんの食べ方を聞くと、
「ナスと炊く」
とまず答えるし、よく行く酒房「京子」でも、ナスの季節にはにしんナスがしょっちゅう出てくる。
それで仕事を終え、スーパーでナスを買い、にしんは冷凍庫に入っているから、これでにしんナスを作ろうと思っていたところ、いざ晩酌の支度を始めてみると、ぼくはナスではなく、「しめじが食べたい」ことに気が付いた。
前日、せっかくしめじを買ってあったのに、にんにくの芽の炒め物にはシンプルを重視して入れなかったから、心残りがあった。
しめじはぼくは、最も好きなキノコの一つである。なのだけれど、脇役としての使い道しか承知していないので、どうもうまく使えず、野菜室で干からびていることも多い。
そこできのうは、にしんナスを作るのはやめ、しめじを主役に何か作ることにした。
それから約1時間、献立を考えることに時間を費やしたのだが、ぼくは献立をネチネチ考えるのが好きだから、それはそれでいいのである。
50グラムくらいの豚肉と、にんにくの芽も一束余っていたから、今日こそは、シンプルは重視せず、それとしめじを炒め合わせるのもいいと思った。薄切りの玉ねぎも入れ、サッと炒めて、さらに卵で閉じたらうまそうだ。
でもにんにくの芽は、火が通るのにわりと時間がかかるのに対し、しめじや玉ねぎはあっという間に火が通る。
時間差で入れればいいだけだから、別にできない話ではないけれど、何となく、複雑すぎるような気がするし、第一、豚肉とにんにくの芽を入れてしまえばそちらが主役で、しめじは脇役になってしまうだろう。
しめじ、玉ねぎと合わせる肉気と考えると、戸棚に入っているツナ缶もある。ツナは、卵との相性も完璧だ。
豚肉とにんにくの芽について考えると、スープにする手もあるだろう。にんにくの風味があるから、和風より、中華風が合いそうだ。
このあたりまで考えて、献立はだいたい決まった。
「洋風、中華風っぽい味付のものを作ろう・・・」
洋風、中華風は、日頃あまり作らないから、作り方はよくよく考える必要がある。
まず豚肉とにんにくの芽のスープは、豚肉とにんにくがあれば、味付は塩味だけでもいけるはずだ。でもきのうは、せっかく中華風スープを作るのだから、もうちょっと手をかけることにした。
しょうゆと酢、ゴマ油にラー油を加え、酸辣湯にする。豚のだしには、間違いなく合うだろう。
それからしめじは、玉ねぎ、ツナとオリーブオイルで炒め、しょうゆを少し加えてバター醤油的な味付けにし、卵で閉じて、コショウを振る。
こちらは「洋風もどき」である。
あとは油あげを焼き、みょうがをポン酢で食べる。
これで食べたいもののイメージは、はっきりと出来上がった。
酸辣湯は、まず2カップの水を煮立てて、50グラムほどの豚肉、それに2分の1束(3~4本)のにんにくの芽を2~3分、弱火で煮る。
アクはサッと取るが、肉のアクは臭みはないので、あまり気にしなくていい。
酒大さじ2、しょうゆ大さじ1、塩小さじ4分の1、砂糖とおろしショウガを小さじ2分の1ずつ、酢大さじ1、ゴマ油とラー油小さじ1ずつを加え、ひと煮立ちさせれば出来上がりとなる。
酸辣湯は初めて作ったが、豚肉のだしとにんにくの風味が利いて、バッチリうまい。
卵炒めは、フライパンにツナ1缶、大さじ1くらいのオリーブオイル、一つかみのほぐしたしめじ、4分の1個の薄切り玉ねぎ、それに冷蔵庫に余っていたピーマン一つを刻んで入れ、塩小さじ2分の1を振りかけて、中火にかける。
野菜がしんなりしてきたら、淡口しょうゆ小さじ1を回し入れ、サッと混ぜたら溶き卵3個を入れる。
あまり細かく混ぜてしまわず、オムレツ的に、フライパンを返しながら大きめにまとめる。
皿に盛り、粗引きコショウを振る。
やさしい味で、これもうまい。
あとは油あげの焼いたの。
フライパンやグリルで焼き、削りぶしと青ねぎ、ショウガ、しょうゆをかける。
みょうがの味ポン酢。
みょうがはタテに、繊維に沿ってうすく切り、味ポン酢と一味をかける。
酒は焼酎水割り。
きのうもたらふく飲んだけれど、作り始めるのが早かったから、早めに寝られた。
「暇だよね。」
ほんとにな。
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