このクソ寒い東京で、いま何を食べるべきかと言えば、菜の花である。
凍える寒さも、春の訪れを報せる菜の花を食べていれば、希望が湧いて、すこしは耐えられるというものだ。
菜の花は、ほたるいかと相性がいいのは前に報告したとおりだが、カキやあさりとも相性が大変よい。
これは自然界の大法則、
「おなじ季節に旬を迎える山のものと海のものは出合いもん」
によるのである。
サッとゆでたカキやあさりをぽん酢や酢味噌で和えればまちがいなくウマイのだが、やはり先の報告どおり、これでは小鉢が精一杯で、メインディッシュにはなり得ない。
そこでほたるいかの場合と同様に、オリーブオイルとオイスターソースを使った「ちょっと洋風味」で炒めるわけだが、バター醤油的になるこの味が、ほたてバター焼きが黄金であることからもわかる通り、魚介とマーベラスな相性であることは今さら言うまでもない。
今回は辛みは唐辛子ではなく粗挽きコショウにしたのだが、「それもうまい」という話である。
作る際には、今回は菜の花を下ゆでした。
カキは火を通しすぎるとみじめなまでに縮んでしまう都合上、菜の花の茎に火が通るまで煮込んではいけないとの判断からだ。
いずれにせよカキと、あと菜の花の花の部分は、くれぐれも火を通しすぎないようにするのがこの料理のキモとなる。
フライパンに、
- 塩 2~3つまみ
を入れ、強火(!)にかけて沸騰させ、
- 菜の花 10本とかくらい(やわらかい花の部分と茎を切り分け、さらに茎が太いようならタテ半分とか4分の1とかに割る)
の、まず茎の部分を1分程度、食べてみてやや歯ごたえが残るくらいにゆでる。
つづいて花の部分を入れ、これは10~20秒、くれぐれもゆですぎないように気をつけながらひと混ぜし、間髪入れずにザルに上げ、水にさらしてよく絞る。
- カキ加熱用 1パック(100グラムなど)
は、片栗粉・少々をふって揉み、水を3~4回換えながらすすぎ、ザルに上げて水を切る。
水が切れたら、
- 片栗粉 大さじ1くらい
をまぶしておく。
フライパンに改めて、
- オリーブオイル 大さじ1
- にんにく 1~2かけ(みじん切り)
を入れて中火にかけ、1~2分炒めたあと、カキを入れる。
1分くらい炒めたら、
- 酒 大さじ1
- オイスターソース 大さじ1
- 醤油 小さじ1
入れ、煮立ってトロミが出てきたら、下ゆでした菜の花を入れ、2~3まぜして菜の花にトロミがからんだら皿に盛る。
粗挽きコショウとレモン汁(ポッカレモン100)・少々をかけて食べる。
これはウマイ……。
シャッキリとした食べごたえと苦味がある菜の花と、ぷっくりとやわらかく、やはり独特の苦味があるカキは、まさに「めおと」なのである。
だいたい10,346回くらいは間違いなく死ねる。
ちなみにお椀は、やはり「ちょっと洋風」の汁。
ベーコンとにんにく・長ねぎ(今回は残り物の青いとこ)をオリーブオイルで炒めてから、水・酒・オイスターソース少々・塩少々で味つけする。
粗挽きコショウをかけて食べる。
味つけがメインディッシュと完全にかぶったのは何なのだが、これも非常にウマかった。
しかし今回、「昼だから」というだけの理由で、カキと菜の花のちょっと洋風炒めはまちがいなく酒にも合うにもかかわらず、酒を飲まなかったわけである。
こんなに臆病では、たとえ「これから車を運転しなければいけない」ということがあったにしても、酒の神様からみれば、単なる言い訳としか映らないのではないかと思う。
「10,346回死んで」
そうだよな。