小松菜などの青菜をにんにくと塩でサッと炒めた青菜炒めは中華料理で定番中の定番ですが、ここにナンプラーを少し入れると、日本人にとっては欠かせない「魚介味」が手軽に加わってウマイです。さらにここに豚肉と豆腐を加えると、味がしみた厚揚げに299回は涙する、まさに家庭的な料理となります。
塩味にナンプラーを入れるとウマイ
このごろ中国スナックにちょくちょく通うようになっていて、そこで出てくる簡単な炒めものを食べる機会が多いのですが、「紹興酒+塩」の味つけがすごく多いです。
「中華料理」というとわりとすぐにイメージする麻婆豆腐とか酢豚とかのコッテリとした味とは対極のとてもさっぱりとした味で、「ああ、中国でも家庭ではこうしてシンプルに作るんだな」と実感します。
でありながら肉をきちんと加えることでコクを出し、野菜も食べごたえを考慮して組み合わせるなど、しっかりとした味があります。さらに紹興酒の華やかな風味が加わって、「いかにも中国」という感じがします。
さてこの中国スナックの料理を参考にして家で自分で作ってみようとする場合、とりあえずその通りに作ってみてそれがおいしいことに異論の余地はないものの、日本人にとってはどうしても「一味足りない」という印象が残ります。
それは「魚介の味」がないからです。
昆布とかつお節による魚介味は、やはり日本人にとっては欠かすことのできないものなのでしょう。炒めものにあさりやイカなどでも加えれば問題は解決しますが、そうすると具材の数が増えるぶん、手軽さは損なわれてしまいます。
そこでおすすめなのは、ナンプラーを使うことです。
イワシのしょうゆ・魚醤であるナンプラーを塩味に加えることで、手軽で一気に、日本人にとってより親しみやすい味になります。
ナンプラーというと「東南アジア」のイメージですが、ここでは東南アジア料理を作ろうとしているのではなく、魚介味を加える一つの手段としてナンプラーを使っています。魚介味をつける方法としてその他には、
- オイスターソース
- かつお節
- だしの素
などを加えることがあり、どれも効果としては同じです。
今回の小松菜と豚肉・厚揚げの炒めものも、中国スナックで食べたものを参考にしています。中国スナックでは味つけはやはり紹興酒と塩でしたが、ここではナンプラーを加えて日本風に仕上げました。
厚揚げを入れると家庭の味
中国スナックでこの炒めものを食べ、改めて一つ実感したのは「中国でも炒めものに豆腐を入れるんだ」ということです。
「炒めものに豆腐」というとマーボー豆腐がありますので、当たり前のように聞こえるかもしれませんが、マーボー豆腐の豆腐はあくまで「主役」で、しかも豆腐以外には野菜は何も入れませんので、日本の料理でいえば湯豆腐とか冷奴とかいう位置づけです。
それに対して日本の煮物で豆腐(厚揚げ・油揚げ)を入れる場合、豆腐は主役ではなく、煮物の味を吸わせる野球でいえばキャッチャー、女房役としての役目となります。
豆腐、そのほかにコンニャクやお麩なども同様ですが、それらに味を吸わせることで、煮汁に溶け出したさまざまな素材の味を存分に味わうことができます。
ただし「煮汁がもったいないので豆腐に吸わせて利用する」という考え方に、「洗練」とは対極のちょっとみみっちい感じがするからでしょう、日本における中華料理の開祖・陳 建民は、中国にも豆腐と野菜の煮物「ジャーチャン豆腐」がありながら、あえてそちらは紹介せず、マーボー豆腐だけを日本に紹介しました。
ジャーチャン豆腐も中国の家庭でとてもポピュラーな料理だそうですが、やはり「材料をできる限り余さず利用する」のは、料理屋ではなく家庭の料理なのだと思います。
レシピ
今回の小松菜と豚肉・厚揚げは、煮物ではなくあくまで炒めものです。少量の煮汁で厚揚げを炒め煮し、最終的には煮汁があまり残らないように仕上げます。
ただし最後に入れる小松菜も、火を通すためには少量の水分が必要です。
途中で水気がなくなってしまった場合、水を適宜足すなどして調整してください。
炒め煮は、炒めものの具材に味をしみさせるためにとても便利な料理法です。コツをつかめば、応用範囲は広いと思います。
STEP1 豚肉と厚揚げをじっくりと炒め煮する
フライパンに、
- オリーブオイル 大さじ1
- にんにく 1かけ(みじん切り)
- 豚コマ肉 50~100グラム(食べやすい大きさに切って塩コショウしておく)
- 厚揚げ 1個(1センチ厚さ程度の食べやすい大きさに切る)
を入れて弱めの中火くらいにかけ、厚揚げの水気を飛ばしながら豚肉に火が通るまで、2~3分じっくり炒める。
つづいて、
- 酒 大さじ3
- 水 大さじ3
- ナンプラー 小さじ1
- 塩 小さじ2分の1
を加え、2~3分炒め煮して豆腐に味をしみさせる。
STEP2 小松菜を炒める
- 小松菜 2分の1把(ざく切り)
- しめじ 少々(石づきを切ってほぐす)
を入れ、強めの中火くらいにして1分ほどサッと炒める。
小松菜のシャキシャキ感を残したところで炒めあげ、皿に盛ってコショウをかける。
酒のツマミに最高です。
シャキシャキの小松菜と味を含んだ厚揚げの食べごたえの違いがタマラナク、299回は泣けます。