八丁味噌は、常備しておくと死ぬほど便利。その使いみちと選び方についてまとめました。
八丁味噌の歴史
八丁味噌は、徳川家康生誕の地・岡崎城(愛知県岡崎市)から「西へ八丁(870m)」行ったところにある八丁村(現・八帖町)で、江戸時代の初期からつくられ始めたとのことです。良質な大豆がとれるのと、豊かな地下水に恵まれたこと、さらに川の水運によって塩が入手しやすかったこと、八丁村は味噌の製造には三拍子そろった場所でした。
江戸時代の後半には、出荷量の3分の1~4分の1が江戸へ送られるようになり、明治34年には皇室御用達に選ばれます。昭和31年頃から、マイルドでやわらかく、中部圏以外の人の口にも合う「赤だし味噌」が開発され、関西をはじめとして全国に販路が広がりました。
八丁味噌の製造方法
味噌は、原料によって分類すれば、
- 豆味噌
- 米味噌
- 麦味噌
の3種類。八丁味噌は豆味噌です。
信州味噌をはじめとし、日本で一番多い米味噌は米、麦味噌は麦を使用することで、味噌に甘みや風味をつけるのにたいし、豆味噌の原料は大豆のみ。混じりっけなしの大豆の味です。
しかも八丁味噌は、通常の味噌が数週間~1年程度で熟成されるのにたいし、「二夏二冬(1年半~2年)」をかけて熟成されます。シンプルな材料をとことん熟成することで、得もいわれぬ深いコクが生まれています。
味噌は熟成がすすめば進むほど、黒っぽい色になります。八丁味噌のまっ黒い色は、それだけ熟成が進んだ証拠です。
八丁味噌の使いみち
一般の米味噌や麦味噌は、煮込むと風味がとびます。そのため味噌汁をつくる際にも、味噌は最後に入れて煮立てないようにします。
ところが八丁味噌は、煮立てても風味はとびません。それどころか「煮込めば煮込むほどおいしくなる」といわれるほど。
そのため煮込み料理や炒め料理など、一般の味噌とくらべて圧倒的に幅広い料理に使うことができ、死ぬほど便利です。
味噌汁
八丁味噌が味噌汁に使えるのは、言うまでもなし。中部圏では味噌汁といえば八丁味噌を使った赤出しで、牛丼屋の「松屋」でも、中部圏だけは赤出しがでてきます。
八丁味噌で味噌汁をつくる場合、味噌を最初に入れられます。そのため普通の味噌を使うより、具材にしっかりと味がしみた、おいしい味噌汁ができ上がります。
参考レシピ:あさりとジャガイモのキムチみそ汁
煮込み料理
八丁味噌を煮込み料理に使うと、またうまい。おでんなどはもちろんですが、八丁味噌は、特に肉を煮込むとうまいです。
しっかり煮込んだ八丁味噌は、ドミグラスソースとそっくりの味になります。京都には、八丁味噌を使った牛肉煮込み料理の店がたくさんあります。
参考レシピ:豚肉とジャガイモのみそ煮込み
味噌炒め
炒め物にも、八丁味噌はうってつけ。炒めても風味がとばないため、「味噌炒め」は普通の味噌でつくるより、八丁味噌でつくったほうがおいしいです。
参考レシピ:スパムとキャベツ・卵のみそ炒め
味噌煮
さばの味噌煮も、八丁味噌でつくるべき。しっかりとコクがある、ゴージャスな味になります。
参考レシピ:さばの味噌煮
マーボーやホイコーローに
マーボー豆腐やホイコーローに使われる中華材料「甜麺醤(テンメンジャン)」。これは豆味噌に、砂糖やゴマを加えてできるものなので、やはり豆味噌である八丁味噌で、完全に代用できます。
中華材料は、使い方がよくわからないため、どうしても冷蔵庫の肥やしにしてしまいがち。幅広く使える八丁味噌なら、そのような心配はありません。
参考レシピ:マーボー・ナス
隠し味として
八丁味噌は、ブリ大根や豚しょうが焼きなど、しょうゆ味の煮物や炒め物の隠し味としても使えます。ほんのちょっと入れることで、味がバッチリまとまります。
参考レシピ:豚しょうが焼き
キュウリにつけて・そのままで
そしてもちろん、八丁味噌はキュウリにつけてもうまいです。ほかの味噌よりコクがあるため、そのまま舐めても、おかずやつまみにバッチリなります。
八丁味噌の選び方
以上のように、幅広く料理に使える八丁味噌。基本的に腐らないので、冷蔵庫に常備しておくのはおすすめです。
八丁味噌の選び方は、次の通りです。
トップブランドは「カクキュー」
八丁味噌のトップブランドは「カクキュー」で、ここが八丁味噌を最初につくり始めたところです。もし手に入るなら、カクキューを選ぶのはおすすめです。
「赤出し」が使いやすい
八丁味噌は、本来は豆味噌100%です。ただそれだと硬くて、手軽に使いにくいのがちょっと欠点。
その点、米味噌とブレンドした「赤出し」は、やわらかくて普通の味噌とまったくおなじように使えます。味も申し分ありませんし、僕はこれを使っています。
カクキューの赤出し味噌を、アマゾンで購入するならこちらです。
「だし入り」でないものを!
スーパーなどでは、他の味噌と同様、「だし入り」の赤出し味噌が売られています。でもこれだと、味噌汁を手軽につくるにはいいですが、それ以外のものに使うには、かえって使いにくくなります。
だしの入れられていないものを選びましょう。
八丁味噌は新たな世界
中部圏以外では、八丁味噌にあまりなじみがない人も多いでしょう。でも使ってみると、決して嫌いな味ではないはずですし、使うにつれて、その奥深い味と幅広い使いみちにホレ込むはず。
八丁味噌は、新たの世界をひらく扉です。臆せず一歩を踏み出しましょう!