「肉吸い」は、肉の吸物のことだが、これはニンニク入りの吸物、「ニンニク吸い」なのである。吸物とニンニクなど水と油と思う向きも多いだろうが、ここに多めの唐辛子を加えると、死ぬほどウマイ。
このやり方は、在日コリアンである大阪十三「あらい商店」の大将から教えてもらったもの。僕も吸物にニンニクは合わないと思っていたのが、実際に試してみたら、ぷんと香るカツオの風味に、ニンニクは最高の相性なのだ。
今回のあさりと豚肉のニンニク吸いは、これをあさりのだしでやったもの。
これがものの10分もあればできるにも関わらず、グランドを50周は全力疾走したくなるほどウマイから、絶対に作ってみるべきではないかと思う。
10分でできるというのは、本当にウソではない。
要は水にみりんに醤油、ニンニクなどで味つけして煮立たせて、まず野菜、つづいてあさりと豚肉を入れ、あさりの殻が開いたら出来上がりという話。
でありながら、あさりと豚肉の滋味深い味がバッチリ出ている。僕がこれまで作ったものの中でも、対時間比のパフォーマンスとしては最大ではないかと思う。
あさりと豚肉を合わせることは、日本食ではあまり思い付かないけれど、豚肉がメインのキムチチゲにあさりを入れることがあり、これが実にウマイ。
普通に日本風のあさりの吸物に豚肉を入れても悪くはなさそうに思うのだが(やったことはない)、アサリも豚肉も個性が強いから、多少衝突するところがあるかもしれない。
しかし少なくとも、そこにニンニクが入ることで、あさりと豚肉は最高の組み合わせになるのである。アサリも豚肉も、ニンニクとの相性が大変いいからだ。
入れる野菜は、きのうは油あげと玉ねぎ、それにニラとした。ニラは青みで、これは青ねぎなどでももちろんいいし、水菜でも悪くなかったと作ってみたあとで思った。
豚肉は、薄切り肉を使うから、一瞬で火が通る。きのうは酔っ払っていたから、間違えて先に入れてしまったのだが、火を通し過ぎると豚肉は硬くなるから、野菜をサッと煮たあと、あさりと一緒に入れるのがいいと思う。
あさりの吸物を作る場合、だしはあさりだけとなる。なのでポイントは、水の量。
あさりに対して水が多いと、あさりのだしが薄まってしまう。目安として、あさり100グラムに対し、水1カップが適当だ。
- あさり 200グラム
を、
- 水 2分の1カップ
- 塩 小さじ2分の1
くらいの塩水に30分~1時間くらい浸し、砂出し、そのあと両手で殻をガシガシとこすり合わせて、水を3~4回替えながらよく洗う。
(ちなみにこの時間は、「10分」の調理時間には入れていないが、砂出ししている間はただ酒を飲んでいればいいのだから、それでいいのだ)
鍋に、
- 水 2カップ
- 酒 大さじ3
- みりん 小さじ2
- 薄口醤油 大さじ1 (薄口醤油の量は、吸物(うどんだし)ならこの場合「大さじ2」となるのだが、あさりが殻を開くとき、だしと一緒に塩気をかなり吐き出すから、最後に味をみて調整する)
- ニンニク 1かけ (すり下ろすか押しつぶす。押しつぶして入れた方が味は穏やかになる)
を入れて煮立て、
- 油あげ 2分の1枚 (細く刻む)
- 玉ねぎ 4分の1個 (3ミリ幅くらいにタテに切る)
をサッと煮る。
玉ねぎがしんなりしてきたら、
- 洗ったあさり
- 豚コマ肉 100グラムくらい
を入れ、弱火でフタをしてあさりの殻が開くのを待つ。
あさりの殻が開いたら味をみて、塩気が足りなければ薄口醤油か塩を加え、
- ニラ(または青ねぎ・水菜) 少々 (ざく切り・小口切り)
を入れて、ひと煮立ちさせて火を止める。
一味唐辛子、または韓国粗びき唐辛子を多めにかける。
これは、ほんとにタマラナイですよ。
ところがこれが、また酒に実によく合うのである。
体調がまだイマイチだとはいえ、ここまで挑戦を受けてしまうと、受けて立たないわけにはいかないのだ。
「誰も挑戦してないよ。」
そうだよな。