『海を渡った故郷の味』のレシピから。調味料は塩と味の素のみとシンプルで、さっぱりとした塩ラーメン的な味になってバカウマ。
難民の人達のレシピをまとめた『海を渡った故郷の味』。
⇒ 難民の故郷への想いにあふれたレシピ本。【海を渡った故郷の味】
きのうはここからもう一つ、気になったのを作ってみた。
サトイモのさっぱり煮込み。
ミャンマーの一地域である「カチン」の料理で、レシピを見ると、これが大変興味深い。
味出し役は、豚のかたまり肉。これを塩と、味の素だけで味をつけるようになっている。
カチンは中国との国境沿いにあるとのこと。味の素は中国でも使われているそうだし、ミャンマーでも珍しいものではないのだろう。
しかし興味深いのは、これが塩以外の調味料が味の素だけということ。
カチンは中国料理の影響を受け、ニンニクやしょうがを使った料理も多いそうだし、実際『海を渡った故郷の味』に掲載されているもう一つのカチン料理は、ニンニク・しょうがに加え、赤唐辛子やパクチーを使っている。
またミャンマーではナンプラーも使われるみたいだから、それで味をつける手もあっただろう。
それを、なぜ味の素だけなのか?
味の素を家に置いていないおれは、この味の素をオイスターソースなどで代用しようかとも考えた。味の素は、要は「魚介ダシ」だから、オイスターソースで完全に代用できるのは間違いない。
でもそうしてしまうと、カチンの人が味の素を選択した理由が分からなくなってしまう。それにまったく知らない外国の料理は、初めて作ってみる際には、自分流に翻訳してしまうのではなく、やはり一度はその通りに作ってみたほうがいいのだ。
そこでおれは今回この料理を作るため、わざわざ味の素を購入した次第である。
レシピによると豚肉は、骨付き肉かバラ肉を、4人前で200グラムとなっている。しかしきのうスーパーではバラのかたまり肉が売り切れていたため、肩ロース肉を使うことにした。
これを1人前2食分で、250グラムくらい使う。
バラ肉を使う場合は、バラには脂が多いから、4人前で200グラム、1人前2食分なら100グラムぐらいにしておかないと、ギトギトになってしまうだろうと思う。でもバラよりは脂が少ない肩ロースなら、250グラムを使ってもギトギトになることはない。
だからむしろ、「肉も味わう」ことも考えた場合には、この料理はバラ肉より、肩ロースを選んだ方がいいのではないかとも思う。
この豚肉を、レシピでは「やわらかくなるまで煮込む」と書いてある。豚肉がやわらかくなるまでの煮込み時間は、最低で1時間。30分くらい煮たころからやわらかくなり始め、2時間煮れば十分というところ。
きのうはあまり時間がなかったから、豚肉を通算で1時間煮込むようにしたけれど、時間があるなら、ゆっくりやるのがおすすめだ。
レシピでは、サトイモの他にブロッコリーとカリフラワー、チンゲンサイ・オクラを入れるようになっている。ただし一人分だと、これをすべて買い揃えるのはちょっと負担なので、2品にしぼることにした。
カリフラワーは、食べ応えはブロッコリーと、色はサトイモと似ているから、ブロッコリーの方を残して省略することにすぐ決まったが、チンゲンサイを残すかオクラを残すかは、かなり迷った。
オクラのネットリしたところが、またサトイモに合うのだろうと思ったが、今回は、さっぱり葉野菜のチンゲンサイを入れることにした。
鍋に、食べやすい大きさに切った豚肩ロース肉・250グラムを入れ、
- 塩・小さじ2分の1 (レシピの半量より少ないが、塩は初めは少なめにしておいて、最後に味をみて整えると失敗がない)
- 味の素 2~3振り
をかけて、もみ込んで下味をつける。
水・4カップ(煮込んでいるうちに煮詰まるから、最終的には3カップくらいになる)を入れて中火にかけ、煮立ってきたら火を弱める。
最初に大量の茶色いアクが出てくるから、これは臭みの元になるのできれいに取り、そのあとに出てくる白いあぶくのようなアクは、うま味の元だから取らないようにする。
フタを斜めにかけ、コトコト小さく沸き立つくらいの火加減に調整し、45分(~時間があれば途中で水を足して2時間)煮る。
サトイモ(中)5~6個を水に入れ、中火にかけて煮立ったら火を弱め、15分ほど、串がすっと刺さるようになるまでゆでる。
皮は、そのままゆでてあとから剥いてもいいし、ナイロンたわしで擦ればきれいに取れるから、洗うときに落としてしまってもいい。
豚肉を45分煮たら、味をみて必要なら塩を加え、下ゆでしたサトイモを加えてさらに15分くらい煮る。
- ブロッコリー 2分の1株 (食べやすい大きさに切る)
- チンゲンサイ 1株 (ざく切り)
を加えて5分煮て、火を止める。(そのまま冷ませばさらに味がしみる)
スープ皿にたっぷりよそう。
なるほど、これはバカウマだ・・・。
ひとことで言えば、日本の「塩ラーメン」の味なのだ。豚肉のスープに塩と味の素なのだからそれは当然であるわけで、日本人にとっては完璧に黄金の味。
しかもスープに色が全くついていないから、サトイモの白がよく映える。
しかしカチンの人が、何も日本の塩ラーメンを知っていて、この味にしたわけではないだろう。豚肉のスープに合う味を模索した結果、一つの黄金パターンとしてこれに行き着いたのではないか。
そう考えてみれば何となく、カチンの人と日本人は気が合いそうな気もするところだ。
あとは、白めしに、中華風・大根とニンジンの漬物。
漬物は、
- 大根 3~4センチ分 (5ミリ角くらいの拍子木に切る)
- ニンジン 細めのところを3~4センチ分 (同上)
- ニンニク 1かけ (すり下ろす)
- 醤油 大さじ3
- 酢 大さじ3
- ラー油 5振りくらい
をジップロックなどに入れてもみ込む。
きのうは1時間くらい置いたのを食べてみたが、それでもけっこう味がしみていて十分ウマイ。
酒は、焼酎水わり。
この塩ラーメン味のスープが、また酒によく合うのである。
さらに煮込んでいるあいだにもガブガブ飲んでしまったから、完全にフラフラになり、きょうはまだ今でも酒が残っている始末である。
「いい年なのに恥ずかしいよ。」
そうだよな。