「ラーメン」が最もうまい食べ物の一つであることについては完全に同意するのだ。しかし、
「酒を飲むならラーメン屋ではなく、街の中華屋」
という考えに傾きつつある今日このごろ。
たしかにラーメンの味だけを取り出せば、独自の発展を遂げているラーメン屋と比較して、中華屋は一段落ちる。それに関西の場合だと、ほとんどのラーメン屋で使われる豚骨スープは、中華屋で使われる鶏がらスープより、ラーメンだけのことを考えればうまいと思う。
なのだけれども、酒を飲むことを考えた場合には、やはり総合力が必要だ。
理想としては、まずビールで漬物や餃子などの簡単なものをつまみ、つづいて紹興酒に切り替えて、ちょっとした料理をもう1品。最後にシメとしてラーメン、およびお腹が空いている場合はチャーハン、ということになるわけで、このコースを完遂させるためには、ラーメン屋だとメニューが少ない。
その点、街の中華屋は、このような飲み方をするためにある場所だ。
きのうも、大宮から後院通を二条駅方向に歩いて行ったところにある「京珉」。
ここは「名物餃子」と看板にうたわれているから、大阪の餃子屋「珉珉」と何かしらの関係があるのだろうか。
まずビール。
店内はカウンターのみ15席ほど。一人で飲むには打ってつけの設定だ。
とりあえず頼んだのは、中華風きゅうり漬け・130円。
これが、ビックリするほどうまかった。たぶんきゅうりを、ニンニクと酢醤油・ラー油のタレに漬け込んだのではないかと思う。
酸味が程よく利いているのが何ともよく、しかもていねいに仕事をしていることが感じられる。
大将は60代くらいの男性で、いかにも真面目な、「実直」を絵に描いたような人と見える。
それから餃子・300円。
これもいい。
京都の場合、餃子はやや大ぶりで、肉は歯応えを残してミンチにし、ニンニクをしっかり利かせた「餃子の王将」の餃子が、一つの標準型になっているところがあると思う。
それと比べると、この餃子は大きさは標準サイズ、肉はなめらかにすり潰されていて食べ応えがやわらかく、香味野菜も複数が入れられて味はマイルドというタイプ。
これを焼く場合、あんのやわらかさに合わせて、皮もフワフワにやわらかく仕上げるという考え方もあると思うし、それもまた悪くない。
でもここは、皮はカリッと焼かれていて、その皮の香ばしさとあんのなめらかさのコントラストで、ビールが進みまくるというやつだ。
次に、ポパイ・600円。
「ポパイ」とは、豚肉と卵・ほうれん草の炒めもののことで、京都の中華屋はなぜかこのメニューがあり、しかも「ポパイ」「ポパイ炒め」と呼ばれているところが多い。
この店は、この豚肉にベーコンが使ってあって、これがまた大変ウマイ。
ビールは飲み干し、酒は紹興酒の燗。
シメは、「チャンポンメン」700円を頼んでみた。
まあしかし、これは正式なチャンポンではなく、食べてみたら、あれこれの肉や野菜を薄いしょうゆ味で炒め煮し、ばっちりトロミをつけた汁をゆでた麺にかけたもので、言うなれば「塩味の五目ラーメン」とでもいうもの。
でも街の中華屋では、固いことは言わないのだ。
固めにゆでられた縮れ麺がトロミのある汁をしっかり運び、これまた体が温まる。
きのうはこうして、酒は十分、お腹もふくれて、お勘定は3千円ほど。
紹興酒とシメのラーメンでフラフラになっていて、ハシゴはせずに帰るから安いものであるわけで、これだから、街の中華屋はやめられない。
京珉
- 住所 京都市中京区壬生馬場町19-15
- 電話 075-811-6228
- 営業時間 [火~土]11:30~14:00、16:30~22:00 [日]11:30~21:00
- 定休日 月曜、第2・4月曜日は火曜日と連休