レシピ本『海を渡った故郷の味』を見て作った、ミャンマーは「チン」という地域の料理。日本でもおなじみの材料と調味料を使うのに、未体験の味になるのでおどろく。
日本で暮らす難民の人達が、帰りたくても帰れない、故郷を思い出しながら作る料理をあつめたレシピ本『海を渡った故郷の味』。
⇒ 難民の故郷への想いにあふれたレシピ本。【海を渡った故郷の味】
その中の一品、「鶏肉と小松菜のカレー」を作ってみた。
材料は、鶏モモ肉と小松菜・玉ねぎ・ジャガイモ。調味料は、ニンニクと塩、それに七味唐辛子と非常にシンプル。
いずれも日本人にはなじみのものばかりである。
難民の人も日本で長く暮らす人は、材料や調味料を日本で手に入りやすいもので代用することもあるとのこと。「七味唐辛子」は、現地で使われているスパイスと似た味がするということなのだろう。
料理の見た目も、鶏ジャガと似ていて違和感はあまりない。鶏ジャガに小松菜はあまり入れないかもしれないが、別に入れても悪いことはないはずだ。
ところがこれを実際に作って食べてみると、味は鶏ジャガとはまったく違う。「いかにも東南アジア」という感じの、日本人には未体験のエスニックな味になる。
「おなじみの材料ばかりを使っているのに」と、おどろくことは請け合いだ。
要は、この料理では七味唐辛子は「薬味」ではないのである。
日本の料理は、味つけのベースは砂糖と醤油で、そこにアクセントをつけるために七味唐辛子を少しかける。
ところがこの料理は「カレー」なのだ。調味料はほかにはニンニクと塩のみ、七味唐辛子は「カレー粉」とも匹敵するメインの調味料として使われる。
おなじ七味唐辛子でも、使われる文脈がまったく違っているわけで、その結果、まったく違う味になる。
「料理は考え方次第である」ことを、この料理を作ってみて、あらためて実感した。
レシピの分量は4人前なので、それを1人前2食分で作りやすいように変更してある。
さらにこのレシピの場合、分量に「適量」というのが多いのだ。特にこの料理の七味唐辛子の場合には、分量を「適量」と書くことは、レシピとしてはちょっとイマイチだと思う。
日本人なら、七味唐辛子を「適量」と言われれば、いわゆるS&Bのあの瓶で、「2~3振り」だと思うだろう。でもこの料理では、七味唐辛子がメイン調味料なのだから、最低でも「20~30振り」は入れることが必要だ。
きのうは作ったとき、30振りを振ってみて、さらに出来上がる直前に味見をし、30振りを追加した。
それからレシピには、初めに鶏肉と玉ねぎを炒める時間を、ただ「よく」としか書いていない。でもこれも、弱火で20分くらいは炒めるのがおすすめだ。
この料理では、鶏肉と玉ねぎでコクを出すようになっている。時間をかけ、鶏肉の脂と玉ねぎの甘味を引き出せば引き出しただけ、おいしくなるのだ。
フライパンを弱火にかけ、
- サラダ油 大さじ1
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
を入れて、2~3分じっくり熱する。
ニンニクがきつね色になってきたくらいのところで、
- 玉ねぎ 1個 (8等分のくし切り)
- 鶏もも肉 1枚・250グラムくらい (食べやすい大きさに切る)
を入れ、鶏肉の上に、
- 塩 小さじ2分の1
- 七味唐辛子 20~80振り (好みで)
をかけ(鶏肉の上にかけるのは下味をつけることを兼ねている)、時々まぜながら20分ほど、じっくりと弱火で炒める。
ジャガイモ(中)・2個(3センチ大くらいに切る)を加え、5分ほどじっくり炒め、鶏肉の脂を「これでもか」とばかりにしみ込ませる。
水・2カップを入れて中火にし、煮立ってきたら弱火にし、フタをして5分くらい、ジャガイモが柔らかくなるまで煮る。
味を見て、塩が足りないはずだから必要なだけ加え、好みでさらに七味を加える。
小松菜・1把(ざく切り)を入れて2~3分、柔らかくなるまで煮て、火を止めて、しばらくそのまま置いて味をしみさせる。
皿によそい、粗挽きコショウを好みでかけてもうまいと思う。
これがまた、死ねるのだ。
鶏肉と玉ねぎの濃厚なコクが、ジャガイモにばっちりしみている。
このコクと、ピリ辛七味唐辛子の味が、最高のバランスだ。
あとは、白めし。
酒は、焼酎水わり。
しかもこの料理がまた、酒にもほんとによく合うのだ。
もしこれで「飲み過ぎない」という人がいたら、それは絶対ウソつきだ。
「ただ意志が弱いだけでしょ。」
そうだよな。