鶏肉のすき焼き(鶏すき)は、肉の値段も牛肉に比べればずいぶん安く、手軽に作れるのが魅力である。割下も、だしなど使わなくても十分うまいのができる。
具は、玉ねぎにネギ、豆腐と糸こんにゃく、焼麩。さらに鶏の肝を入れると、これがまたウマイ。
鶏すきは、鶏肉を使った料理のなかで、最も手軽でかつウマイものの一つだといえると思う。作り方は肉と野菜を焼いて、調味料をかけ、溶き卵につけて食べるだけなのだから、簡単この上ない。
一般に肉の料理は、だしを使わずに砂糖と醤油だけで味つけすると、間が抜けたようになる。ところがすき焼きでは、だしを使う必要はない。
それは、溶き卵をつけて食べるからだ。
ほんわりとした卵のうま味が、そのままだとあまり相性が良くない肉と醤油を、うまく結び合わせてくれるのだ。
具は、ネギは当然入れると思うが、まず玉ねぎも入れることが一つのポイント。
玉ねぎの甘みが、味に広がりを持たせてくれる。
それから味を吸わせる具材として、豆腐と糸こんにゃくはもちろんとして、さらに焼麩も入れるのがおすすめだ。
焼麩は豆腐や糸こんにゃくより、汁を吸う力が強い。鍋に残ったおいしい汁を、残らず吸ってくれるのだ。
焼麩は、滋賀名産の「丁字麩」がすき焼きにはいいのだが、あるやつを何でも使ったらいいと思う。
それから鶏すきの場合には、もも肉のほかに肝を入れるとまたウマイ。
味にぐんと奥行きが出てくるから、試してみるのはおすすめだ。
本当は、「玉ひも」と呼ばれる、鶏の卵管と卵を入れると、さらにうまい。でもスーパーなどでは、玉ひもはなかなか売っていないから、肝で十分なのである。
下ごしらえは、まず焼麩は水にひたしてよく絞り、食べやすい大きさに切っておく。糸こんにゃくは、そのまま使えるのも売っているが、ゆがかないといけない場合はゆがいておく。
割下は、酒と醤油を同量ずつ。
あとは砂糖も用意しておく。
肝を使う場合には、ちょっと下処理が必要だ。
肝はこのように、写真上の小さな心臓と、下の大きなレバーがつながっている。
まずこれを切り離し、付着している白い脂肪を包丁でざっとこそげ取り、心臓は縦半分、レバーは横半分に切る。
その上で、水に30分くらい浸しておく。
肝は血抜きをしないと、臭みが出るからである。
あとは材料をテーブルに運び、焼く。
鍋はすきやき鍋があればいいが、なければフライパンでもいいのは言うまでもない話である。
サラダ油少々を引いた鍋を中火にかけ、まず鶏の皮目とレバーを焼く。
肉をひっくり返すタイミングで玉ねぎとネギ、豆腐と糸こんにゃくを入れ、さらに少し焼き、砂糖と割下をそそぎ、焼麩を入れる。
分量は、砂糖・大さじ1、割下・大さじ2くらいのものだが、目分量でいいのである。
焼麩に味がしみたら、食べ頃だ。
溶き卵をつけて食べる。
これが王道の味であるのは、今さら言うまでもないことだ。
酒は、冷や酒。
きのうは急遽、西院でのヘイト街宣のカウンターへ行くことになったのだ。2時間ほど、ヘイトスピーチを浴びながら差別主義者を罵倒し倒すことになり、終わると気持ちがクサクサする。
いつもなら、そのまま仲間と飲みに行くところなのだが、きのうはすでに買い物がしてあったので、まっすぐ家に帰って鶏すきを作り、酒を飲んだわけである。
考えてみたら、おれは自宅で自分の作った料理を肴に酒を飲むのが、一番癒やされるのだった。
鶏すきの、あまりのうまさに気分が良くなり、きのうもまた飲み過ぎて、おかげできょうは、いつものカウンターの後より気持ちの疲れが取れた気がする。
「だからって飲み過ぎなくてもいいと思うよ。」
そうだよな。
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