きのうは仕事の合間に、『おっさんひとり飯』サイン本を、四条大宮の飲み屋へ置いてもらいに行った。
そうしたら、ついそのまま飲んでしまったのである。
金は、ない。いつもない。
だからいつも、仕事をしている。
金があれば、仕事などせず、遊んで暮らしたい。もう50を過ぎたから、大した野心があるわけでもないのである。
しかし金がないから、仕事をする。これは仕方がないことだ。
しかも金がないのに、現在パソコンが、絶賛・壊滅中なのだ。パソコンは2台あり、1台は家にあるデスクトップ、もう1台はノート。
どちらも、もう5年近く使っている。
今の重いソフトを動かすには、役に立たなくなりつつはあった。特にノートは、ネットのページを表示させるだけでもえらく時間がかかる。
でもそれは、大して気にしていなかった。
ぼくは、オンボロのものに自分を合わせるのは、嫌いじゃない。ソファもクッションが後ろに移動してしまい、スプリングや下の木枠が尻に当たるが、座り方を工夫して、何とか使っている。
パソコンも、動作が遅ければ、ノンビリと待てばいいだけの話だ。
ところがそのノートパソコン、まずバッテリーがイカれた。前からだんだん、充電ができなくなりつつはあった。
それがとうとう、バッテリーを付けたままだと、電源プラグを差し込んでも立ち上がらなくなった。
それで今では、せっかくのノートパソコンなのに、バッテリーを外して使っている。
さらに、ノートパソコンの、キーボードがある本体と、液晶画面をつなぐヒンジが壊れた。液晶画面をある角度で保つことができなくなり、そのままペタリと、180度倒れてしまう。
それで今は、本を積み上げ、そこに液晶画面を立てかけることで角度を保っている。
壊れたヒンジの部分から、配線が何本も露出している。これが切れたら、ノートはお釈迦になるだろう。
しかしまだ、家にはデスクトップパソコンがあるから、しばらくは何とかなると思っていた。年末には、わずかばかりの印税が入るから、そうしたら、新しいのを買えばいい、、、
そのデスクトップパソコンが、おととい、立ち上がらなくなってしまったのである。
きっかけは、あるソフトをアンインストールしたことだ。それが何か、悪さをしたのだろう。
残るは瀕死のノートパソコン1台。これが本当に壊れてしまえば、ぼくは仕事がお手上げになってしまう。
急遽パソコンを買わないといけないことになり、きのうはその金を得るために、頑張って仕事しないといけないはずだったのだ。
仕事を7時ごろまでして、一旦中断。『おっさんひとり飯』新装本を、飲み屋へ届けに行くことにする。
せっかくだから、いつも通う飲み屋でも、本が買えるようにしたい。それですでに4軒の飲み屋に、OKはもらっていた。
置くのは、サイン本。
これなら飲み屋に買いに来てくれる人もいるかもしれない。
届けに行くのは、お店がまだそれほど混まない、早めの時間がいいだろう。それで7時に行くことと決めた。
話はもう付けてある。あとは本を届けるだけ。
届けてしまえば、その後さらに仕事もできる。
まず1軒め、家から近い、ギャラリー&バー「スピナーズ」。マスターが出かけて不在だったから、アルバイトの女の子におしぼりだけもらって、しばらく待つ。
やがてマスターが帰ってきた。常連さんも一緒である。
どこかで一杯引っかけてきたと見え、いい調子。
「本を置きに来たんだけど、、、」
言うものの、マスター、
「まあいいじゃないですか、一杯飲みましょうよ。高野さんとゆっくり話すのも久しぶりだし」
と来る。
そう言われ、断るわけにも行かないだろう。本を置いてもらう手前もある。
寒かったから、焼酎のお湯割りを頼んだ。
飲みながら、マスターや常連さんと話をする。するとマスター、家に来るニャンコのことを、よく知っていた。
デカイのは、このあたりで以前からよく見かけるニャンコで、同じぶちのちびニャンは、やはりその子供だそうだ。
さらにちびニャンには兄弟がいて、そちらには3匹の子猫までいるとのこと。
「ちびニャンは、お母さんに向かって威嚇してたってことなのか?」
「猫はお母さんだと分からずに、ちょっかいを出すことがあるみたいですよ。お母さんの方は分かってるみたいですけど、、、」
なるほど、そういうものなのか。
それからしばらく、猫の話で一しきり盛り上がる。
「高野さん、キャットフードなんてやらないで、猫のエサも自分で作ったらどうですか?それをブログに書いて、『おっさんひとり猫めし』なんて言ったら、ウケるんじゃないかと思いますよ!」
結局マスターに本を渡し、店を出たのは1時間の後だった。
次に向かうのは、たこ焼き「壺味」。
ここでもやはり、用件だけというのは悪い気がして、一杯たのむ。
壺味を出ると、もう9時近い。次のほっこりバー「Kaju」へ行った時点で、もう仕事をするのはあきらめた。
食事もすることに決め、まずはポテトサラダ。
Kajuさんのポテトサラダは初めて食べたが、まろやかで、しかもさわやかな酸味も利き、とてもうまい。
お客さんが持ち込んだ、牛スジカレー。
やわらかく煮込まれた牛すじの甘みに、スパイスが強めに利かされ、なかなかのもの。
マスターとは、お客さんもまだ少なかったので、近況もあれこれ報告する。
しばらくちゃんと話ができていなかったから、ちょうどいい。
そして最後は、酒房「京子」。
もう、熱燗。お通しは、セロリの酢の物。
カレイの煮付け。
白みそのみそ汁。
それから、おでん。これが「いかにも京都らしい」と思い、感動した。
出された時は、何の変哲もないおでん。
ところが一番上のコンニャクを食べると、その下に、「真っ白」の大根が、ちょうど雲間から現れるお月様のように、顔をのぞかせるのである。
おでんの大根が白いのは、「オッ」とちょっとビックリするし、それが初めから見えているのでなく、食べ進んでから見えてくるのも、洒落ている。
しかも大根は白くても、味はしっかりしみている。
京都の人は、こうして「食の楽しみ」を演出するのが、本当にうまいと思う。
あとはカラオケ。きのうも京子は満員で、しっかり盛り上がっていた。
家に帰り着いたのは、午前0時。それからすぐに、布団に入った。
予定は大幅に狂ってしまった。「パソコンは買えるのか」と心配にはなる。
しかし金は何とかなるものだ。
金のために、義理を欠くようなことをすれば、その時こそ、神様に見放されるにちがいない。
「のんきだね。」
ほんとにな。
ちなみにちびニャンは、最近ではエサがないと、催促するようになった。
小さな口を開け、「ニャー、ニャー」と鳴く。
こうして頼られるようになると、かわいいのはもちろんだけど、少し責任も感じるようになっている。
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