四条大宮で深夜に酒を飲み終わり、シメにラーメンを食べようという場合、一つの選択肢は「餃子の王将」となる。以前は朝までやっていたこの店も、現在では深夜1時までの営業だが、まあ、普通はこれで十分だろう。
ところがこの餃子の王将、料理のレベルは全般に高く、しかも値段は安い良店なのだが、どういうわけかラーメンだけは、イマイチなのだ。スープがあまり良くないわけで、頼むなら味の濃い味噌ラーメンなどになる。
でも飲んだあとは、腹が減っているというより喉が渇いているわけだから、もう少し味がうすい、どちらかといえば「シャバッ」としたラーメンが食べたいところだ。
それなら圧倒的におすすめは、「香来」なのだ。
香来は、四条大宮の交差点から北西に上がる「後院通」を、5分くらい行ったところにある。繁華街の中心からはちょっとだけ離れているが、そのくらいを苦にしていたら、おいしいものは食べられない。
香来はオープンして3年ちょっと。その前はおなじ場所で、チェーンのラーメン屋が営業していた。
その店はあまりおいしくなかったから、じきに潰れてしまったが、潰れた店で働いていた人が独立して立ち上げたのが、香来だと聞く。
潰れた店で働いていた人が作るラーメンなど、ロクなものではないと思うかもしれないが、そんなことはないのである。
潰れた店の敗因分析を徹底的にやったのではないかと思う。基本的なところは継承しながら、グンとおいしくなっている。
味は、京都の代表的なラーメンの一つである「背脂醤油系(せあぶらしょうゆけい)」。醤油味の豚骨スープに豚の背脂を浮かべたもので、白川にある「ますたに」が元祖だが、そこから多くの流派が生まれている。
香来のラーメンは、この背脂醤油系のなかでも「うす味派」ともいえるもので、飲んだあとには打ってつけ、さっぱりとしたところが持ち味だ。
しかもこのラーメン、たださっぱりしているのではなく、きちんとコクがあるのである。
前の潰れたラーメン店には、このコクがなかったのだ。また他の背脂醤油系うす味派の店でも、「コクが今ひとつ足りない」と感じることは少なくない。
これは想像なのだが、背脂は個性が強いから、スープが負けしまい、ふつうに作ったスープでも、コクが足りないように感じてしまうのではないだろうか。それを補うためなのだと思う、元祖店ますたにでは、何か香ばしい風味がするものを隠し味に使っているし、唐辛子を大量に入れる店もある。
香来は、どうやったのかは分からないが、この背脂醤油系うす味派がもつ弱点であるコクを、何らかの方法で解決したのだ。
べつに特別な風味はしないから、隠し味を加えたのではなく、スープ自体に何か工夫したのではないかと思う。
麺は中細。
プリプリの極薄チャーシューも、なかなかうまい。
香来は、サイドメニューも充実している。
テーブル席も2卓あるから、ここで普通に食事をしたり、飲んだりというのもアリだと思う。