『おっさんひとり飯』新装版、無事に出版されたから、近所の本屋を覗いてみた。
料理本のコーナーには、見当たらない。
料理雑誌のコーナーも見てみたが、そこにもない。
「まだ配本されていないのかな、、、」
そう思い、担当の人を呼んでもらって、挨拶をすることにした。
話をすると、、、。
なんとレジ前のカウンター、お店で一番いい場所に、「ガツン!」と平積みされていた!
これは、ありがたいことである。
担当の人は、前のムック本のとき、ぼくが挨拶したのを気にかけてくれていたそうだ。
前回は、発売が11月末になったため、おせち料理の本に場所を取られて、うまく並べてもらうことができなかった。
今回は時期も早いし、
「何とかちゃんと並べてあげよう、、、」
そう思ってくれたのだろう。
そうして書店が気にかけてくれるのなら、ぼくもすることをしないといけない。
ポップを作ることにした。
10枚以上の試行錯誤を重ねた末、出来たのがこれ、、、。
「自炊は『自由』だ」はあとがきのタイトルで、ぼくが今回、一番伝えたいことでもある。
よく行くコーヒーショップでも、話をしたら、何冊か置いてくれることになった。
顔見知りの店員も、
「買いますよ!」
その場でお金を払ってくれる。
本が出るのは2年ぶり。それをこうして、喜んでもらえるのはありがたい。
となれば次に、やはり「飲み屋」へ、報告に行かないといけないだろう。
一番喜んでくれるのは、日頃お世話になっている四条大宮の飲み屋である。
真っ先に報告するのは、4軒に絞ることにした。本当は、まだ行きたいところもあるけれど、一晩でまわるのは、それ以上はちょっと無理だ。
店主には、サイン本を贈呈することにした。いつもお世話になっているから、お礼として、そのくらいはしないといけないだろう。
まず行ったのは、家から一番近い、ギャラリー&バー「スピナーズ」。
ここはぼくが、四条大宮の飲み屋のなかで2番めに長く行っている店で、お客さんも、ほとんどの人が顔なじみ。
マスターに本を渡し、お客さんにも見てもらう。
「料理をしながら見るにも、コンパクトな方が使いやすいよね」
「あ、これおいしそうだなあ、、、」
評判も、悪くはないようである。
きのうはハロウィン。
店員の男の子も仮想している。
血だらけのお客さん、、、。
マスターも、ちょこっと鼻血をたらしていた。
ポテトサラダをつまみに頼む。
カリカリのベーコンが入っていて、香ばしい風味がする。
マスターとも、色々と話しをした。
マスターは、30代も半ばになった。大宮のお客さんでも、30代半ばの人が、体調を崩したり、健康診断で引っかかったりという話をちょこちょこ耳にする。
「高野さんは、もう50も過ぎたから、飲み過ぎで体調を崩しても、それはそれでいいでしょうけど、ぼくはまだ先があるから、『このままでいいのか』と、不安になることもあるんですよね、、、」
とマスター。
たしかに30代後半から40代前半にかけ、体力が急速に衰えるから、20代の頃とおなじようにしていたのでは、体が持たない。
でもそれについては、ぼくは考えがある。
「飲む量をセーブするより、食い物に気を使ったほうがいいと思うんだ、、、」
これは、ぼくの経験に基づくことだ。
40代の初め頃、疲れがどうにも抜けなくなった。睡眠時間を十分取ったり、スポーツジムに通ったり、サウナへ行ったりしてみたけれど、どうにもダメ。
ところが自炊を始め、豚肉とニラの鍋を食べてみたら、あれほど抜けなかった疲れが、一晩で、前の日まで疲れていたことを忘れるほど、抜けていた。
それ以来、ある程度の年になったら、「食い物に気を使わなくてはいけない」と思うようになったのだ。
マスターは、
「なるほど、食い物ねえ、、、」
半分納得したような、そうでないような調子である。
でもいずれマスターも、自分の身にしみて分かる時が来るだろう。
それからも、お客さんと、あれこれと話しをした。
すると、9時から飲み始めたのに、もう11時。まだあと3軒まわらなくてはいけないのだ。
お勘定をし、お客さんにも挨拶し、次へ向かうことにした。
次は、たこ焼き「壺味」。
大将も、出版を祝ってくれる。
頼んだのは、つぶ貝わさび漬け。
大将が、小浜まで出かけて仕入れてくる。
わりと長く知っている、女性のお客さんがいた。
「私には贈呈してくれないの?」
と言うから、一冊贈呈。
「お客さんとかにも、ちゃんと宣伝してあげるから」
とのことである。
「俊ちゃんも、頑張っていてエライよね、、、」
ぼくのことを「俊ちゃん」呼ばわりするその女性と、苦労話に花が咲く。
「やっぱり、人から何と言われても、一つのことを続けるのが大事よね」
女性も、仕事のステップアップを目指し、学校に通っているそうだ。
ひとしきり話をし、そのうちほかのお客さんも入ってきて、話題が別のことに移ったから、ぼくは次に向かうことにした。
向かった先は、ほっこりバー「Kaju」。
ここはぼくの、「本籍」のような店である。
5年前に京都へ来て、はじめに馴染みになった店だから、マスターはぼくのことを大宮の誰よりも知っている。
マスターには、事あるごとに報告を入れ、相談に乗ってもらったりもする。
マスターは、差し出した本を黙って受け取る。
別に何も言わないけれど、きちんと考えてくれる人だ。
頼んだのは、まずおでん。
それから、お客さんが持ち込んだというサバ寿司。
これがウマくて、半生のシメ加減がいいのはもちろん、すし飯の調整が、また絶妙。
おかわりした。
深夜12時をまわっていたが、お店は満員。顔見知りの人が多かったから、色々と話しをした。
料理本を持ち込んだから、料理の話にもなった。
一人暮らしの男性で、趣味でパンやらぬか漬けやらを作る人が話をしている。イースト菌もぬか床も、使わないとダメになるから、自分が食べられる以上の量を作るハメになるのだそうだ。
「たまに作ったパンを、誰も食べる人がいないから、捨ててしまうこともあり、何のために作っているかわからないですよ」
と言うから、大笑いした。
けっきょくKajuでものんびりし、店を出たのは2時近く。
しかしそれでも「京子」には、行かない訳にはいかないのだ。
さすが給料後の金曜だったからだろう、そんな時間でもお店は満員。
ぼくは一番隅の、一つだけ空いていた席に、なんとか座れた。
女将に出版した本を渡す。
「ああ、小さいのは、いいね」
褒め言葉をくれる女将。
店内は、すでにカラオケで絶好調。
ぼくも早速、歌い始める。
出てきた料理は、酒粕の鍋。
あり合せの材料を使って作った「めちゃくちゃ鍋」と女将は言うが、ほっこりと体があたたまる。
お客さんで、ぼくのブログを見てくれている、ぼくよりたぶん、少し年上の人がいた。
「ブログに載っていた角煮大根、この休日で、ぜひやってみようと思うんですよ、、、」
ぼくは、
「煮立てさえしなければ大丈夫ですから、ぜひやってみてください」
と、太鼓判を押す。
あとは、カラオケ。お客さんが、帰ってはまた入ってきてとなるから、なかなかキリが付けられない。
それで結局、店を出たのは4時近かったという次第である。
しかしこうして、出版を喜んでくれる人がいるのは、ありがたい。
四条大宮に住んで、ほんとに良かった。
寝るのが遅くなることくらい、べつに屁でもないのである。
「本がたくさん売れるといいね。」
ほんとにな。
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