韓国の料理は、日本料理とは随分ちがって見えるけれど、実は日本人の心の故郷だと思えるのである。
韓国料理はここ20年ほどで日本に完全に定着し、韓国式の飲食店もたくさんあるし、キムチを常備するようになっている家庭も少なくないのではなかとおもう。
最近では、韓国にたいして侮辱的な発言をくり返す人も、出てきているようだけれども、このことも裏を返せば、韓国文化がそれだけ日本に浸透するようになったことを示していると言えるのだろう。
ぼくも30年ほど前に初めて韓国へ行って以来、韓国は大好きな国の一つである。
韓国料理も、食べるのはもちろんのこと、韓国で、そして日本にいる韓国人から、作り方を教えてもらって、あれやこれやと試してきている。
ただ初めて韓国へ行った時には、まさに「カルチャーショック」だったのだけれど、韓国の文化を受け入れることができなかった。
2週間ほどホームステイをしたのだけれど、お腹をこわし、食べ物が食べられなくなり、ピザやハンバーガーなどばかり食べていた。
韓国の文化は、街並みや人の服装など、パッと見ると、日本ととてもよく似たところがあるとおもう。
ところがよくよく見てみると、日本とは全くちがうところがあり、それをどのように受け入れたらいいのか、初めて行った時には分からなかったのだ。
しかし2回めに韓国に行った時には、韓国の文化を素直に受け入れることができ、食事もおいしく食べられるようになった。
韓国の文化は、どっぷり浸ってみると本当に居心地がいいもので、食べ物にしても、「どれを食べてもおいしい」とおもえる。
食べ物は基本的に、すべて「辛い」わけなのだが、これも体が慣れてくると、辛くないものは物足りなくなってくる。
日本へ帰り、日本の食事を食べてみると、「塩っぱいばかりで味がない」とまで、思ってしまうくらいである。
韓国は歴史的には、日本ともっとも関係が深い国である。
地理的に一番近いわけだから、古来から人の行き来は盛んだった。
古墳時代には、中国から、そしてもちろん朝鮮から、たくさんの人が渡ってきて、仏教をはじめとし、様々な文化を日本に伝えた。
奈良時代の仏像でも、広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像など、非常に優れたものの中に、「朝鮮で作られた」と言われるものもあるわけである。
韓国と日本とは、それからもずっと行き来がつづき、日本の侵略など不幸な時代はあったけれど、今に至るまでその行き来はつづいている。
近いのだから、放っておいても人は行き来するわけだ。
だから韓国と日本は、お互いに強く影響し合いながら、文化を形作ってきているはずである。
文化的には、中国を「お母さん」とするならば、韓国と日本は、「兄弟」ともいえる間柄だと言えるのではないだろうか。
例えば「ラーメン」を考えてみても、これはまずはもちろん、中国の影響が大きいわけだが、韓国の影響も少なからずあるとおもえる。
特に九州北部のとんこつラーメンなど、釜山へ行くと、そっくりな味のスープがある。
「テジクッパ」と呼ばれる白濁した豚のスープで、ニンニクやニラ、塩辛などで味付けし、ご飯を入れて食べるのだが、これなどはこちらが先で、それが日本に渡ってきたのではないだろうか。
とんこつラーメンは公式には、「中国人が作った」と言われているそうだけれど、九州北部が韓国から目と鼻の先であることを考えれば、韓国から渡ってくることも十分あり得そうにおもうのである。
実際の話、韓国の料理と日本の料理をくらべると、全体のあり方として、大変よく似ているとおもう。
酒やみりん、醤油、味噌などの調味料は基本的に同じだし、また韓国は、日本と同様、そして中国とは異なり、料理に砂糖をかなり使う。
日本のように、砂糖の少ない、醤油ベースのうす味と、砂糖を入れてコッテリさせた、味噌ベースのコッテリ味との両方があり、この味つけの仕方は世界でも、韓国と日本だけなのではないだろうか。
これは料理の根幹にかかわることだから、おそらくは、「どちらが先」ということでもなく、韓国と日本がお互いに影響し合い、いっしょに発展したものだろう。
ただもちろん、韓国の料理と日本の料理で、大きくちがうところもあり、それは一言でいえば「ニンニク」である。
韓国ではニンニクを大量に使うが、日本ではほとんど使わない。
これは日本で鎌倉時代に、当時の社会に大きな影響力のあった禅宗の僧侶のあいだで、ニンニクが禁止されたからである。
そこで僧侶は、ニンニクを使わずに味付けする精進料理を編み出すこととなり、それが日本の料理の源流になったから、今でも日本の料理はあまりニンニクを使わないというわけだ。
ニンニクが禁止されたのは、多分に政治的な意味があったのではないかとおもえる。
奈良時代に肉食が禁止されたのは、肉食をする中国や朝鮮からの渡来人をけん制する意味があったという説があるそうだし、ニンニクも同様に、ニンニクを大量に食べる渡来人の影響力を削ぐことが目的だったとは、十分考えられるようにおもう。
そう考えると、もしそのような政治的な意図により、日本で肉食とニンニクが禁止されることがなければ、日本は今、韓国とほとんど同じような料理を食べていたとも考えられるのではないだろうか。
「ニンニクを使わない料理の体系」は、世界に誇る、日本独自の発明品である。
ただ一方、韓国の料理にたいし、ある「懐かしさ」のようなものを感じることはないだろうか。
それは日本人が、韓国の料理を「自分がそうであり得た道」として、直感的に察知するからではないかという気がするのである。
だから韓国の料理は、「日本人の心の故郷」とも言うことができるのではないかと、ぼくは思うのだ。
というわけで、昨日はまたも、豚肉とニラが食べたくなった。
豚肉とニラが疲れを回復させ、精をつけてくれる度合いはハンパがなく高いから、ぼくはついつい、これをちょくちょく食べたくなってしまうのである。
豚肉とニラの食べ方として、「ニラを豚キムチに入れる」ということがある。
キムチはニラとの相性は最高だから、これはまさしく王道の一つと言える。
ニラ入りの豚キムチを作るのなら、豚肉とキムチを炒め、醤油で味つけをしたらニラを入れ、皿に盛って目玉焼きでも乗せればいいというだけの話である。
ただ昨日は、もう少しだけ、手を加えることにした。
まず豚肉は、キムチといっしょに漬け込んでおくようにする。
昨日は豚コマ肉を200グラム、それに同量の、200グラムくらいのキムチと、たっぷりのキムチの汁、さらにみりんとうすくち醤油を大さじ1、おろしショウガ小さじ1を器に入れ、手でよく揉み込んだ。
これは豚肉に下味を付けるためで、下味をつけてから焼くと、いかにも韓国らしい、やさしい味になる。
ショウガでなく、ニンニクを入れてももちろんいいが、ぼくは家では、ほかの和食サイドメニューの味が消し飛んでしまうため、ニンニクは使わないようにしている。
それから卵は、目玉焼きではなく、あらかじめ炒めておいて、最後に加えるようにする。
中火にかけたフライパンに溶き卵を、昨日は2個分、流し込み、細かく混ぜず、大きめにまとめる。
これは目玉焼きよりこちらのほうが、ふんわりとやさしい味がするから、ぼくは好き、という話である。
あとは強火にかけたフライパンにゴマ油を引き、漬け込んだ豚肉とキムチを入れてよく炒める。
豚肉に火が通ったら、ざく切りにしたニラ1把と5ミリ幅くらいに切った玉ねぎ4分の1個、それに炒めた卵を入れ、混ぜながらさっと炒め、最後に味を見て塩加減して火を止める。
ニラと玉ねぎも、いっしょに漬け込んでしまってもかまわないのだが、ぼくはニラと玉ねぎは、歯ごたえがあるのが好きだから、こうしてあとから入れるのである。
昨日もご飯に乗せて、どんぶりにした。
好みでゴマを振ってもうまい。
これもスタミナは満点である。
ガツガツ食べるのがオススメだ。
あとは、とろろ昆布の吸物。
お椀に削り節ととろろ昆布、青ねぎとゴマ、それに醤油を入れ、お湯を注ぐ。
キムチの冷奴。
キムチの残りを冷奴にのせた。
青ねぎとゴマ油をかける。
長芋の千切り。
削り節とわさび、それに醤油。
キュウリのじゃこポン。
スリコギでたたき、手でちぎったキュウリを一つまみの塩で揉み、5~10分置いて水洗いして水気を拭きとり、ちりめんじゃことポン酢醤油をかける。
酒は日本酒。
韓国の料理には、甘めの日本酒が合うのである。
「韓国は、また行きたいね。」
一月くらいは滞在したいよ。
コメント
毎日楽しく拝見しています。
はじめてのコメントです。
ケチをつけるつもりもないし、このコメント
もする必要もない程度のことですが、、、
物を書く人なのに、中国、韓国の知識は
歴史や政治に興味のない多くの日本人と
同じようなレベルなのだなと思ってちょっと
残念でした。
書かれている頃中国という国はなかったし(中国
という国はできてまだ60~70年ほど)、
日本が韓国にしたのは併合だし。
アクセスも多いサイトだから、そのへんの記述が
正確であればいいなあ、と思っていらんことを
書きました。すみません。
>韓国の料理にたいし、ある「懐かしさ」のようなものを感じること
>韓国の料理は「日本人の心の故郷」とも言うことができるのではないか
ないです。
絶対無いですよw
今まで興味深いブログだと面白く読ませていただいておりましたが、今回の記事にはいささか腑に落ちない点がありますので、筆を取らせていただきます。
まがりなりにも物書きでいらっしゃるのに、随分と物を知らない様子でいらっしゃる。
まずとんこつラーメンの由来は久留米のラーメン屋「南京千両」の日本人店主によるもので、断じて中国でも韓国でもありません。
「思う」「ないだろうか」などという根拠のない思い込みで、歴史的事実を曲げるのはいかがなものか。
あと、今俗に言われる韓国料理というものは、日本料理のそれとは異なり、脈々と受けつがれたものではありません。
朝鮮半島の主権は度々入れ替わり、分断され、その度に文化的断絶も生じております。
そのような国であるため、「伝統の韓国料理」というものが定義しづらく、今現在伝統的韓国料理とされているものは、過去の少ない文献から得られた情報に多分な恣意を加え「今現在の韓国人に都合の良いよう」作られたものであります。
そのような作られた文化を日本の伝統料理の隣に並べ「兄弟」扱いとは、噴飯物の主張であります。
今現在、かの国と日本とは極めて微妙な政治的関係の上にあります。
このような時に、不特定多数の人が閲覧するブログ上でかの国に関する根拠のない妄言を書き連ねるのは、もはや害悪であろうというものです。
自重されてはいかがか。
長文失礼
とんこつラーメンが久留米ラーメンの特定の店にあると言われていることは存じていましたが、それが日本人であるか中国人であるかは、ちょっとした間違いです。
店主が火を点けっぱなしにしてしまったことから白濁した現在のとんこつラーメンのスープが生まれたという伝説については承知していましたが、ラーメン店の出自については、多分に脚色が含まれるものであり、それを「歴史的事実」などということこそ噴飯物です。
また韓国については、三国が主権を争い、さらに日本も韓国を併合しましたから、たしかに「伝統的な韓国料理」については定義が難しいのは分かりますが、民衆の食生活は継続しています。
ぼくはべつに「伝統的・正統的韓国料理」の姿について云々しているのではなく、現在の韓国料理から、考えられることだけを言っているわけですから、批判は当たりません。
さらに政治的状況が微妙だと言え、思うこと、考えることを言っていけない理由が分かりませんし、それを「妄言」「害悪」と言われることについても、全く当たらないと思います。
貴兄こそ自重されてはいかがか。
栗田さん、コメントありがとうございます。
お気持ち嬉しく思います。
ただ今回も、ちょっと差し障りがありますので、承認は控えさせていただきますねww
今後とも宜しくお願いします^^
自分も韓国、中国は好きな国ではないが、個人のしかも芸能人でもなんでもない一人のおっさんのブログにここまで食ってかかる人がいるなんて…
別に断定してもないのに、国同士が微妙な関係だからと自分の考えすらブログで言うことも許さないだなんて、まるで戦時中の日本だ。
飯の話題の時くらい国交関係を切り離して考えれないのかな。
窮屈な世の中になっちゃったなあ…
我々が知っている歴史なんざタブロイド紙のスクープと同じ。本当か嘘かはその時代の本人のみぞ知る。本気で議論するなんてバカバカしい。
そうですよ。政治的にどうだとかは、あまり関係ないですよね。人のブログに入ってきて土足で政治家か評論家にでもなったつもりなんでしょうか?理解出来ません。。。
食べ物を作って味わって食べて感じたことを普通のひとに分かりやすく表現されただけで、私にはとても分かりやすくてなるほどでしたよ!
同意です。
高野さんが政治家ならともかく、酒好き料理好きなおっさんが好きなことを書いただけなのにそれに文句言うのはおかしい。
文句あるなら見るな。
嫌なら見るな。
って思います。
韓国には乾麺しかない(インスタント)ので、どんこつの起源面白く
読ませていただきました。
後、高野さん歴史と食べ物がお好きなら
このサイト面白いですよ
朝鮮半島の食の歴史が書かれていますから。
明治時代に朝鮮へ行った日本の侍の日記です。食べ物の事についても
書かれています。
宮本小一外務大丞、朝鮮国京城に行く
http://f48.aaacafe.ne.jp/~adsawada/siryou/060/resi020.html
韓国料理は、B級グルメもしくは珍味って感覚ですかね~
キムチはビールには合うと思うけど、日本酒やワインにはちょっと・・・
そう言えばキムチ、世界遺産に申請したらしいですねw
韓国には、トンスルという薬用酒もあるそうです。