名古屋から、以前お世話になったバーの若いスタッフが京都へ来た。
社長に京都グルメ案内を頼まれたから、せっかくだから、観光客はあまり行かない、ディープな京都を連れ回したのである。
バーは名古屋市東区泉にあるレストランバー「ジャングル・ジャップ」
で、ぼくは姉妹店のレストラン「ブラッサリー・アブサン」
へ、週に3回ほどは通い、自宅のリビングのように使っていた。両店とも、長崎出身である社長により設えられた、和洋折衷の調度がいかにも洒落ていて、またスタッフの接客に心が込もっているのが気に入っていた。
社長には本当に良くしてもらい、店がハネてから、食事に連れて行ってもらったりも、よくした。
社長や当時からいるスタッフ、また店で知り合いになった何人かのお客さんとは、今でもやり取りがあり、京都へ来れば、連絡をくれて会ったりもする。
その社長から、突然連絡があり、
「明日若いスタッフ二人が京都へ行くから、勉強のために、おいしい店を連れ回してやってくれないか」
とのことである。「おいしい店」と言われても、ぼくは観光客が行くような、標準的な店は、あまり知らない。
「ぼくが行くのは安い店ばかりだけれど、それでいいか」
と尋ねたら、「望むところだ」とのことだったので、案内を承諾した。
電話を切り、「酒房京子」
⇒ 飲み屋は行けば長くなるのである。(酒房京子、Kaju、スピナーズ)
だけは抑えておこうと、すぐに女将に電話をして予約した。
翌日、ブログ更新を終え、京都駅へ向かった。
待ち合わせ、一緒に昼めしを食べるのである。
昼めしを、どこに案内しようか迷ったのだが、やはりここは、ラーメンだろう。
京都は、府外の人にはほとんど知られていないのだが、ラーメンの激戦区である。戦前、戦後に創業された老舗がいくつもあり、さらにもちろん、最近できた、若い人による店もそれぞれ凌ぎを削っている。
京都のラーメンというと、「京風ラーメン」と呼ばれるうす味のものをイメージする人も多いと思うが、あれは府外の人による創作で、京都にはその手のラーメンはほとんどない。
府外の人に一番よく知られている、京都発のラーメンは、ドロドロスープの「天下一品」
⇒
なのであり、その他のラーメンも、京都は濃いめの、しっかりとした味が多い。
幸い、京都駅近くには、「新福菜館」と「第一旭」の、京都では両横綱ともいえるラーメン店の、本店がある。
どちらにするか迷ったが、やはりここは、戦前に創業された一番の老舗、「新福菜館」
⇒
へ行くことにした。
言うまでもなく、まずビール。
それから、付き出し肉。
新福菜館と第一旭は、チャーシューが、モソモソ感がまったく皆無の、サッと炒めたかと思うほどジューシーであることに大きな特徴がある。
つづいてラーメン並。
スープは豚骨、やや甘辛い、ちょうど蕎麦の汁のような味付で、戦後のラーメンがニンニクと化学調味料で蕎麦との差別化を図ったのに対し、このラーメンは、日本の味を素直に付けたのだろうと思う。
麺は、やや太めの丸麺。
やややわらかめに茹でられて、ちょっとうどんにも近い、いかにも昔ながらの食べ応えがする。
新福菜館の本店へは、久しぶりに行ったのだが、やはりうまい。
食べるのは大盛りではなく、まずは並を頼んだ方が、本来の味がよくわかる。
食べ終わって店を出たが、宿のチェックインまでまだ時間がある。そこでタクシーで四条河原町へ移動して、酒を飲むことにした。
まず行ったのは、居酒屋「たつみ」
四条河原町の交差点から一本西の細い路地を、北に上がったところにある。
ここは「昼酒の聖地」とも言えるところで、きのうは休日だったこともあり、店内はまっ昼間からほぼ満席。
立ち飲みスペースもあるのだが、3人だったからテーブル席へ行き、引き続きビールを頼む。
たつみは、肴がどれもうまいのが非常に大きな特徴で、だからこそ、これだけ繁盛するのだと思う。
きのうは、もう腹は一杯だったから、しめサバとキュウリの古漬けを頼んだが、これもどちらも満足できた。
たつみを出て、さらにもう一軒はしごする。
ほど近いところにある、「京極スタンド」。
ここも長い店だと思うが、たつみより、ちょっとお洒落な風情がある。
若者はビール、ぼくはレモン酎ハイに切り替えて、万願寺の焼いたのを肴にさらに飲んだ。
店を出て、若者たちは宿へチェックインに行き、ぼくもいったん家に帰って昼寝をした。
宿の門限が11時だというから、早めの5時に、四条大宮駅前で待ち合わせをすることにした。
後半戦のスタートは、やはり「酒房京子」から。
大宮の飲み屋街「寛遊園」内にあるこの店は、いかにも京都らしい、気取らないけれども洒落た料理が手頃な値段で出てくるし、女将のもてなしもピカイチだから、府外から来た人を案内するのに必ず連れて行く。
料理はきのうも、うまいものが、あれこれ出てきた。
サザエつぼ焼き。
サバ寿司。
水ナスにしば漬け。
夏の京都に、万願寺とうがらしは欠かせない。
そしてもちろん、ハモ。
ハモの骨で取っただしで、松茸を加えて湯豆腐にされていて、これが死ぬかと思うほど、うまい。
鶏すき。
やはりハモのだしを使った炊き込みご飯。
それにいちじくの煮たの。
ぼくが深く満足したのは言うまでもない話だが、レストランバーに勤務する若者二人も、作り方を女将に聞いたりもしながら、楽しんでくれたようである。
中盤からは、若者たちと同世代のギャルも登場。
男だけでは、ちょっと間が持たないところもあったから、助かった。
そしてカラオケ。
ひとしきり歌って、店を出た。
昨日はこれだけのものを食べ、酒はフルに飲み、さらにカラオケも歌いまくって、一人5千円。
激安だと言えるだろう。
それからさらに、酒房京子の斜め向かいにある、ダイニングバー「Kaju」へ。
マスターは若い頃、名古屋にいたこともあり、若者たちと共通の知り合いもいるようで、話が弾んだ。
店を出て、まだ門限の11時には間があったけれど、若者たちは前日寝ないで京都へ来たとのこと、もう眠くて抜け殻のようになっている。
タクシーまで送り、ここで別れた。
時間が早かったから、さらに、Kajuの斜め向かいにある、「へそまがり」で一杯飲んだ。
ここは牛テール、牛すじを味噌で煮込んだものが売り物だ。
牛すじを頼んだが、コックリと柔らかく、酒がまた進んでしまう。
さらに味噌煮込みおでん。
見た目は名古屋のものと似ているが、京都のは、それよりも甘みが控えめになっている。
きのうはぼくも、久しぶりに一日飲んだ。
やはり京都は、はしご酒をするに限るのである。
ちなみに「たつみ」や「寛遊園」をはじめとする、京都のディープな飲み屋については、ぼくも案内人として登場している「Men’s Leaf」
でも紹介されている。ぼくもきのうは、これを見て店の営業時間を調べたりもして、重宝した。
「名古屋もまた行きたいね。」
ほんとだな。
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