関東人だからなのだと思う。僕はウスターソースに興味がない。
決してマズイと思わないし、お好み焼きやたこ焼きも大好きなのだが、たとえばとんかつを食べるなら、とんかつソースは使わずに、いい肉なら塩だけか、ふつうのやつならカラシじょうゆ。
冷蔵庫にもウスターソースは入っているが、もう何年も使わずにそのままになっているから、たぶんとっくに賞味期限が切れているはずだと思う。
ウスターソースは明治時代に、とんかつを食べるために編み出されたものだ。魚ならしょうゆをかけて食べればうまいが、豚肉はしょうゆとの相性が悪いから、とんかつにただしょうゆをかけてもおいしくない。
そこでしょうゆに代わり、とんかつに合うように日本で開発されたのがウスターソース。しょうゆに酸味とスパイスが足されたような味になっている。
明治になり、それまで禁止されていた肉食が解禁された日本では、やはりすき焼きととんかつは「文明開化」のシンボルになったのだろう。また終戦後も、焼け跡でお好み焼きや焼きそばを売る店がたくさんできたから、ウスターソースは「復興」や「経済成長」のシンボルにもなったのではあるまいか。
だからウスターソースに強い思い入れをもつ人がいまでも多いのは当然のことだと思うし、実際ヨーロッパなど外国人は、日本でウスター(中濃)ソースを知ってハマる人が多いそうで、日本のおみやげにウスターソースを買って帰る人も多いと聞く。
だから決して、ウスターソースを否定するわけではないのだけれど、僕は興味がないのだから仕方がない。
それで焼きそばを作る場合も、ソースではなく、しょうゆ味。
肉は豚肉を使っている。豚肉としょうゆの相性の悪さは解決するやり方が色々あって、ウスターソースの例のように「酸味とスパイス」を加えるのも一つなのだが、「ニンニクと魚介だし」を加えることもある。
だから通常のしょうゆとみりんの日本風の味つけに、ニンニクとオイスターソースを加え、さらに粗挽きコショウでも振ってみれば、これはあくまで僕の好みなのだが、ソース焼きそばより26倍はぜったいうまい焼きそばができ上がる。
入れる野菜は、焼きそばにはキャベツが定番なのだが、これはキャベツがソースに合うからだ。しょうゆ味にした場合には、今回のようにニラや長ねぎ・玉ねぎなどが合う。
作り方
フライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- ニンニク 1かけ
を入れて中火にかけ、ニンニクがきつね色になってくるくらい、2~3分炒めて味をひき出す。
それから
- 豚こま肉 100グラムくらい (食べやすい大きさに切る)
を入れ、色が変わるまでじっくり炒める。
ここで一回、火を止めてもいいのだ。調味料を入れる。
一日に一食しか食べず、最近は夜はベビーチーズをかじりながら酒だけ飲む僕の場合、一日分のカロリーとして、焼きそばだと2玉が必要だ。そこで焼きそば2玉分の調味料は、
- 酒 大さじ2
- しょうゆ 大さじ2
- オイスターソース 小さじ2
- みりん 小さじ2
となる(1玉の場合はこの半分)。
調味料を入れ、ふたたび中火をつけて、まず、
- ニラ 2分の1把 (ざく切り)
- しめじ 2分の1ふさ (冷蔵庫に余っていれば)
を入れて、ひと混ぜする。
次に、
- 焼きそば麺 2玉
を入れ、箸でほぐしながら3分くらい、じっくり炒める。
皿に盛り、粗挽きコショウをたっぷりかける。
しっかりとしたコクがあり、豚肉との相性もバッチリで、まったくのところ文句がない。
そして焼きそばには、やはりビールが必要だ。
「焼きそばとビール」は、「ご飯とみそ汁」「おでんと熱燗」などのように、切っても切れない仲なのだ。朝だからとはいえ、ビールなしに焼きそばを食べることは不可能だ。
おかげでこれを食べたあと、2時間も昼寝した。
「ちゃんと仕事もしてよ」
そうだよな。