ナスもそろそろ終わりだから、今のうちに食べておかないといけないのだ。夏の露地物のナスと、冬場のハウスのナスとでは、味が100倍くらいはちがう。
何がちがうのかといえば、太陽の光をきちんと浴びて育ったナスは、どういうわけか知らないけれど、アクがほとんどないのである。甘くてみずみずしく、軽く塩もみするだけでも、調味料はまったくなしで十分おいしく食べられる。
といっても最近僕は、和風のアッサリとした惣菜は作らないのだ。スタミナが足りないからで、やはり年を取ってくると疲れやすくなってくるし、体も冷えやすくなってくるから、豚肉のビタミンB1とニンニクのアリシンをガッツリ取って、代謝を上げることは必要だ。
となれば最強だと思えるのは、「ナスミート」なのである。
「豚肉とニンニクを使ったナスの料理」というと、マーボー・ナスも思い浮かぶ。しかしマーボー・ナスの欠点は、ビタミンがまったくないことだ。
ナスは栄養に関しては、めぼしいものはほとんど含まれていないようだ。なのでマーボー・ナスの栄養は、ほとんど「豚肉とニンニクだけ」に由来するものになってしまう。
それではやはり、片手落ちだ。
そこでナスミートが登場するというわけだ。
ナスミートはトマトがたっぷり入っている。トマトはビタミン豊富だし、「トマトを食べれば医者はいらない」といわれるほど、ほかにも豊富に栄養が含まれているそうだから、ナスの栄養不足を補ってあまりあるのだ。
しかもナスとトマトはおなじ系統に属するそうで、味の相性もバッチリだ。
ただしナスミートについては、問題が一つある。洋風にそのまま作ってしまうと、「白めしに合わない」ということだ。
ミートソースは、やはりパスタかバゲット、ご飯の場合もドリアとなる。でも僕は、やはりガッツリいくなら「白めしを食べたい派」なのである。
ミートソースが白めしに合わないのは、味つけにタイムやオレガノなどのハーブを使うことが原因だ。なのでハーブは、白めしに合わせるためには一切使わないことがおすすめ。
しかしそれではちょっと間の抜けた味になるから、しょうゆとみりん、オイスターソースを使う。
唐辛子にはチリペッパーではなく豆板醤を使うから、これは「限りなくマーボーに近いナスミート」になるわけだ。
油はオリーブオイルを通常通り使う。これがしょうゆやオイスターソースに合うのかと思う人もいようけれども、オリーブオイルはバターをあっさりとさせた味であるわけで、これとしょうゆやオイスターソースは「バターじょうゆ」の組み合わせとなり、相性としては最高なのだ。
それから玉ねぎについては、べつに普通にミートソースを作るのとおなじように、入れていい。
でもついマーボーを作るときのクセで玉ねぎを入れ忘れ、最後にマーボー式に長ねぎのみじん切りを入れてみたら、ますますマーボーに近くなって、ウマかった。
ミートソースは、本来牛肉を使うものだと思うけれど、やはり栄養的には豚肉が望ましい。
豚ひき肉は臭みが出るから、しっかりと炒めるのがコツとなる。
作り方
フライパンに、
- オリーブオイル 大さじ1
- ナス 1本 (ヘタを落として縦半分に切り、1~2センチ幅の輪切りにする)
を入れて弱めの中火くらいにかける。
フタをして、時々フライパンを揺すって混ぜながら、5分くらいか、ナスがやわらかくなるまで蒸し焼きにし、皿にとり出しておく。
あらためてフライパンに、
- オリーブオイル 大さじ2 (カロリー的には「大さじ1」と思うところだけれど、オリーブオイルは多いほうがうまいのだ)
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 豆板醤 小さじ1
- 豚ひき肉 100グラムくらい
を入れて弱めの中火くらいにかけ、ひき肉をスプーンなどで押し潰してほぐしながら、やはり5分くらいだと思う、ひき肉からでる水気がすっかり飛んで、さらにかるく焼き色がつくまでよく炒める。
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 薄口しょうゆ 大さじ1 (薄口を使うのは色を黒くしないため)
- オイスターソース 小さじ1
- コショウ 少々
を入れて、さらに1~2分炒めて味をなじませる。
- カットトマト 1缶 (=400グラム)
- とり出しておいたナス
を入れ、火を強めて煮立てたら、また弱火にし、フタをせずに15分、水気を飛ばしながら煮る。
長ねぎ・10センチくらい(みじん切り)を入れてひと混ぜしたら、ご飯をよそった皿に盛り、パルメザンチーズと粗挽きコショウを好みでかける。
味つけのベースはマーボーだから、白めしには294回は死ぬほど合うのだ。
味がしみ、やわらかく煮えたナスは、たまらないっす。
そして今朝も、この限りなくマーボーに近いナスミートは、白めしだけでなく酒にも比類なく合うというのに、「朝だから」というだけの理由で酒を飲まなかったのだ。
「夜飲むのだから朝は飲まなくていい」などというのは、まさしく甘えた考えであるわけで、こんなことだと、僕はこれから人生の荒波を乗り切っていけないのではないかと心配だ。
「心配ないよ」
そうだよな。