ゴーヤといえば「ゴーヤチャンプルー」と、バカの一つ覚えのようになってしまいがちなわけで、もちろんスパムか豚肉に豆腐、卵のゴーヤチャンプルーはうまいのはまちがいないけれど、夏は毎日のようにゴーヤを食べないといけなくなる。
メニューのバリエーションが必要だ。
そこできのうは、ゴーヤと豆腐の炒め煮。
具材はゴーヤと豆腐、それに豚肉で、これはゴーヤチャンプルーの基本トリオだけれども、卵は外す。かわりにタケノコと玉ねぎで、まずここで、ゴーヤチャンプルーとのちがいができる。
そしてこれらの具材を、中華的しょうゆ味で「炒め煮」にするのである。
炒め煮は韓国でよくつかわれる料理法で、日本で近いのは「すき焼き」や「きんぴら」だ。調味料の原液をはじめにすべて鍋に入れ、そこに肉や野菜を入れて、炒めるのでもなく、煮るでもなく、まさに両者の中間のように火を通す。
中国は炒め物の国、日本は煮物の国、韓国は地理的にその中間に位置するから、料理法も中間になるのかと思うとおもしろい。
調味料の濃い原液だから、炒め煮だと肉や野菜にしっかりと味がつく。炒め物のように表面に味をからめるだけでなく、中までしっかりしみる。
この炒め物的なのに、味がしっかりしみるところが、炒め煮の特徴だ。
豆腐は、この炒め煮に、まさにうってつけなのである。
豆腐の身上は、やはり味を吸いこむことだ。豆腐の炒め煮は、日本でいえば炒り豆腐。
強力に味を吸った豆腐に、苦味があるしゃっきりとしたゴーヤというのが、実はきのうはじめてやってみて、完璧に死ねるとり合わせであることを確認した。
まずフライパンでニンニクを炒めてから、調味料をぜんぶ入れ、肉や野菜を順番に炒め煮し、最後に片栗粉で閉じるだけだから、つくり方は非常に簡単。弱めの火でやれば、フライパンを火にかけながら野菜も切れるし、焦げついて失敗するなどのこともない。
ポイントは、野菜を入れるタイミングで、豆腐がホンワリやわらかいから、野菜はシャッキリとさせてコントラストを出したい。
タケノコは、はじめから入れてもしゃっきり感を失わないが、ゴーヤと玉ねぎは豆腐に十分火を通してから入れ、火が通りすぎないうちに仕上げてしまうのがいいと思う。
あとは豆腐は、炒めるとどうしても崩れてくる。今回は形を残したけれど、なんなら完全に崩してしまい、ドロドロにしてしまうのも悪くないのではないかと思う。
フライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 豆板醤 小さじ1
を入れて弱火にかけ、2~3分じっくり炒めて味をひき出す。
火を止めて、
- 酒 大さじ2
- みりん 小さじ2
- 薄口しょうゆ 大さじ2 (これは薄口にしないと、でき上がりがまっ黒になるので注意)
- オイスターソース 小さじ2
- コショウ 少々
を入れ、
- 豚こま肉 100グラム (食べやすい大きさに切る)
- 水煮タケノコ 2分の1個 (3ミリ厚さくらいに切る)
を入れて5分くらいひたしておく。
強めの弱火くらいをつけ、2~3分炒め煮して豚肉に火が通ったら、豆腐・1丁(400グラムとか)を、どうせ崩れるのだから、スプーンで適当な大きさにすくい取って入れる。
フライ返しなどで上下を返しながら、強めの弱火で10分くらいじっくり炒めて豆腐の水気をひき出し、味を吸わせる。
- ゴーヤ 2分の1本 (タテ半分に切り、スプーンでわたをかき出して、3ミリ幅くらいの輪切りにする)
- 玉ねぎ 2分の1個 (2センチ幅くらいのくし切り)
を入れ、さらに5分くらいかかるのではないかと思うが、火加減は弱めのままで、ゴーヤが適度なやわらかさ(しゃっきり感を残すのがコツ)になるまでじっくり炒める。
- 片栗粉 大さじ1
- 水 大さじ2
の水溶き片栗粉を、混ぜながら少しずつ加えてトロミをつけ、
- ゴマ油 小さじ1
- 酢 小さじ1
を加えてひと混ぜし、火を止める。
皿に盛り、粗挽きコショウをかける。
これは、たまらん……。
すべての具材に味がしみまくっている。
ゴーヤもこうして、しゃきり感と苦味を残しながら味を吸わせると、最高にウマイ。
そしてこれが言うまでもなく、酒に合うのだ。
ここまで酒に合ってしまうと、「酒を飲みすぎない」ということは、「もはや非常識」ともいえる、単なる幻想にすぎないのではないかと思う。
「あきれるね。」
ほんとだな。