マーボー豆腐は、レシピを見ると、かなりの種類の中国調味料が使われるのが普通。陳建一による、現在のほぼ標準と思われるレシピを見ても、
- 豆板醤(トーバンジャン)
- 甜麺醤(テンメンジャン)
- 豆チ醤(トーチジャン)
- 花椒粉(ホワジャオフェン)
の4種類が使われる。
このうち豆板醤に関しては、僕もヘビーユーザーで使い出がものすごくある。「豆板醤なしでは料理ができない」とすら思うくらいだ。
でもその他のやつについては、あまり使えないのではないだろうか。甜麺醤は、マーボーの他にはホイコーローに使われるのは知っているけれど、それ以外は分からない。豆チ醤、花椒粉に至っては、マーボー豆腐以外に使われる料理を知らない。それでは調味料を買ったはいいが、冷蔵庫の肥やしになって朽ち果てるのは、目に見えている。
でも実は、マーボー豆腐を作るのに、そのような使い道の分からない中国調味料を買う必要は、一切ないのだ。豆板醤と、あとは家にある普通の調味料で、実においしいマーボー豆腐ができるのである。
甜麺醤の原材料をスーパーで見てみると、
- 中華大豆みそ
- 砂糖
- ごまペースト
- 醤油
となっている。
大豆みそとは、要は「八丁味噌」のことなわけで、なので甜麺醤は、八丁味噌に砂糖とゴマ油、醤油を加えれば代用できることになる。
「豆チ醤」は、陳建一の説明によれば、「蒸した大豆を塩漬けにして発酵させてから干した豆チを刻み、香味野菜などを加えたもの」なのだそうだ。「蒸した大豆を塩漬けにして発酵させた」ものは八丁味噌に他ならないわけだから、これも八丁味噌で代用可能。
それから「花椒粉」は、実は粗挽きコショウで代用できる。山椒も胡椒も「椒」の字がつくくらいで、「ピリッと辛い」という意味では似たようなものだ。
もちろん粗挽きコショウでは、あの中国山椒の華やかな風味や、口の中が痺れる食べ応えは再現できない。でも別にそこまでこだわらなくたって、家でマーボー豆腐を作るくらいなら、十分なのだ。
さらに、マーボー豆腐にみそを使わず、醤油で作る手がある。八丁味噌も、家に常備していない人は多いだろうから、醤油で作るマーボー豆腐はさらに手軽で、しかもこちらの方がうす味でサッパリとした味になり、酒には合う。
きのうはこのやり方で、「うす味マーボー豆腐」を作った。
これが実にうまいから、試してみた方がいいのではないかと思う。
味つけの中核は、みりんと醤油。みりんは中国では使わないと思うのだが、日本の感覚で普通に使って問題はまったくない。
マーボーだから、スープを入れて豆腐を煮込むことになり、だしが必要。このだしは、鶏ガラの顆粒スープでもいいのだが、それよりも、カツオ節を入れてしまうのが大変おすすめ。豚肉と醤油の味に魚介だしを入れるのは、ラーメンのダブルスープで分かる通り相性がとてもいいのだ。
その他の作り方は、わりと普通。マーボーを作るには、ひき肉をしっかりと炒めるのがコツとなる。
豆腐は下ゆでしてもいいが、しなくても大して問題ない。
フライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- 豚ひき肉 100~150グラム
を入れ、弱めの中火で5分くらい、しっかりと焼色がつくまで炒める。
つづいて、
- サラダ油 大さじ1
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 豆板醤 大さじ1
を加え、さらに弱火で2~3分炒めて味をひき出す。
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 醤油 大さじ1
- カツオ節 2.5g入りパック1袋
- コショウ 1~2振り
を加え、弱火で1~2分さらに炒め、味をなじませる。
- 水 1カップ
- 木綿豆腐 1丁 (2センチ角くらいに切る)
を加えて煮立て、フタをして、弱火で10分くらいコトコト煮る。
味をみて塩を加え、
- 長ねぎ 5センチくらい (みじん切り)
を入れる。
- 片栗粉 大さじ1強
- 水 大さじ1強
を溶き混ぜた水溶き片栗粉を、スプーンで少しずつ加えては混ぜしてトロミをつけ、
- ゴマ油 小さじ1
を垂らして火を止める。
粗挽きコショウをたっぷりかける。
これはたまらん……。
クドすぎず穏やかな、日本人好みの味。
味がしみ、ふんわりと柔らかくなった豆腐は、言うまでもなく死ねる。
そしてこのうす味マーボー豆腐が言うまでもなく、酒が何杯でも進むやつなのだ。
料理が上手くなってしまうと、酒を飲み過ぎるのが欠点だ。
「関係ないよ。」
そうだよな。