ニンニクには、どっぷりとハマっている。もう絶対ぬけられない。
何しろ、体が温まる。今年はまだ、寒さをまったく感じない。
たしかに去年は今ごろ、異様な寒さだったことはある。もう鍋しか食べる気がせず、寒くて寒くて縮こまっていた。
しかし今年は、去年よりはだいぶ暖かいにせよ、体がポカポカしているのである。これはニンニクのおかげではなかろうかと思っている。
年を取ると、とにかく体を温め、疲れを取るのが何より大事。
そのために絶大な効果があるニンニクは、ちょっと手放す気にはなれないのだ。
そこでおれは、キャッチフレーズを考えた。
「ニンニクを取り戻せ!」
「TAKE BACK NINNIKU!」
これはもちろん、SEALDsの「民主主義をとりもどせ!」の二番煎じだ。すぐこうして、訳の分からないキャッチフレーズを考えるのは、おれの悪いクセである。
しかし、かなり真剣だ。
日本ではニンニクは、民衆の手から、権力によって奪われたのだ。
鎌倉時代、禅宗のお寺は「不許葷肉入山門」として、ニンニクやニラ、ねぎなど「五葷」と肉をもちいることを禁じた。もちろんべつに、禅宗のお寺が禁じたからといって、一般大衆は自由に使えはしただろう。
でも禅宗は、たぶん今なら東京大学。権力と結びつき、芸術・文化の中心をになう役割を果たしたわけだ。
料理にしても、禅宗から生まれた精進料理が、懐石料理の源流となり、「日本料理」の土台をつくった。
そこからニンニクが排除されれば、ニンニクを使った料理は、発展しようがなかったはずだ。
ニンニクは、朝鮮・中国はもちろんとして、世界中で、料理に使わない地域はないのではないか。それもニンニクの強力な滋養効果を考えれば、食事はもともと「医薬同源」、当然のことと思える。
そのなかで、日本だけが、ニンニクを使えなかった。そのため一方では、世界に類を見ない、独自の料理が生まれるにいたった。
でももう一方で、日本人は体を温めるために、ニンニク以外でさまざまな方法を工夫しないといけなかった。
風呂や酒、鍋料理などは、そのために発展したものではあるまいか。
明治になり、ニンニクと肉は解禁された。戦後になって、日本でもニンニクは積極的に使われるようにはなった。
しかしいまだ、日本人はニンニクを、本当には、自分のものにしていないと思えるのだ。
ニンニクを使う料理は、焼き肉など朝鮮料理、ラーメンなど中国料理、あとはカレーや欧風料理など、いずれも外国のもの。その一方で、「日本料理」は、ニンニクを使わない領域として保ちつづけている。
この日本料理に、ニンニクを使うようになってこそ、日本人は本当の意味で「ニンニクを取り戻した」と言えるのではなかろうか。
そこで、「TAKE BACK NINNIKU」なのだ。
権力の手で奪われたニンニクを取り戻してこそ、日本料理は現代に、新たに蘇るのではないだろうか。
とまあ、意気だけは盛んなのである。
なのでこのブログでも、しばらくはニンニク料理がつづくと思います、スイマセン。
というわけで、きのう作ったニンニク料理は、「さんまのキムチ煮」。
さんまもそろそろ、ほんとに終わりだ。そこで食べ納めをしようと思った。
「今年一番うまかった食べ方にしよう」と思うと、やはりこれなのだ。
考え方としては、普通にさんまを煮付けるところに、キムチを加えるというだけのこと。さんまは梅煮や山椒煮をするわけで、この梅や山椒がキムチに置き換わったと思ってもいい。
このさんまとキムチが、空前絶後、超絶必死に合うのである。
これは、ほんとにスゴイのだ。
さんまなどの青魚には、独特のクセがある。梅や山椒は、このクセを中和するために入れるわけだが、ちょっと力が足りなくて、やはりまだクセは残る。
ところがキムチは、このさんまのクセを完璧に中和して、さらに新たな味の高みに持ち上げる。
この食べ方を知ってしまうと、もう、梅煮や山椒煮にはもどれないと思うほどだ。
作り方は、ふつうに魚を煮付けるのと基本はおなじと思っていい。ただしキムチは、はじめにゴマ油で炒め、コクを出すようにする。
大根を合わせてもおいしいと思うし、きのうは豆腐を合わせたのが、またイケた。
さらに、もやしやらエノキやらニラやらを加えると、大変うまい。
鍋に、
- ゴマ油 大さじ2くらい
- キムチ 300g入りパック3分の1(=100g)くらい
- キムチの汁 あるだけ
- 包丁の腹で押しつぶしたニンニク 1かけ
を入れる。
フタを閉めて弱火にかけ、ときどき混ぜながら、5~10分蒸し焼きにして、キムチの味をしっかり引きだす。
さんま・1尾は頭と尾びれを切り落とし、腹を割いてわたをかき出し、さらに背骨についている血合いを包丁の先でこそげ落として、水でよく洗う。
3センチ幅くらいの筒切りにし、キムチの上に乗せ、弱火のまま、表と裏を1~2分ずつ焼く。(さんまを鍋肌に直にあてると焦げ付くので注意)
さんまを焼くのは、油の味をつけるためで、火を通すことは考えなくていい。
- 水 2カップ
- みりん 大さじ1
- 淡口醤油(色をきれいにするため) 大さじ2~3
を味を見ながら入れて、さんまと同じくらいの高さに切った焼き豆腐・2分の1丁を入れる。
落としブタをし、中火にし、煮立ってきたら弱火にして、15分くらい煮る。
15分煮たら落としブタをはずし、もやしとエノキ、ニラをさっと煮て、火を止める。
さんまと豆腐をくずさないように気を付けて、皿に盛る。
味がしみた豆腐が、またマジでた・ま・ら・な・い。
あとは、ウインナーとじゃがいもの赤出しみそ汁・ニンニク入り。
頭とわたを取った煮干しに、押しつぶしたニンニクでだしを取り、赤出しみそで味付けする。
ウィンナーとじゃがいもを煮て、生卵を落としてお椀によそい、青ねぎと、ほんのちょっとのゴマ油、それに一味をかける。
チゲ的な味になり、これも大変うまかった。
それに、白めし。
酒は、焼酎水わり。
このさんまのキムチ煮が、また酒が進んでしまうわけで、きのうもやはり、飲み過ぎる。
となればきょうは、酒が残って、頭がボッとしているに決っているのである。
「仕事もちゃんと取り戻してね。」
そうだよな。