東京では、首相官邸前でおこなわれた抗議行動に参加した。
安倍首相に想いをたっぷりぶつけたのである。
東京での2日目は、まず蒲田でとんかつを食べに行った。
蒲田といえば、何をかくそう、ひと言でいえば、
「とんかつ」
だ。
なにしろ、とんかつ屋「丸一」がある。
この店のとんかつは、「世界最強」といっても、まったく憚りがないのである。
場所は、蒲田駅東口ロータリー横から、京急蒲田方面へのびる「東口中央通」をずっと先へ行ったところ。
いつ行っても、30分くらいは並ぶとおもうが、それだけの価値は十分ある。
まず、値段がすごい。
ランチなら、ロースカツ定食が1,100円。
それで、半ライスとキャベツがおかわりできて、、、
しかも肉の厚さは、「3センチはあろうか」というほどである。
そして味は、こんなにうまいとんかつは、まずほかでは食べられない。
「無菌豚」をつかっているから、中がまだピンク色の加減に仕上げてくる。
やわらかくてジューシー、「モソモソ」とした食べ応えは、一切ない。
しかも、この肉、「臭みがまったくない」のである。
だから、ソースもしょうゆもかけずに、「塩」だけで食べるのが、一番うまい。
ご主人も奥さんも、まじめで愛想もよく、本当にいい人たち。
ぼくが蒲田に越したころからやっているから、オープンして20年以上になるとおもうが、その間、消費増税などもありながら、一度も値上げしていない。
蒲田へ行ったら、この店に立ち寄らなければ、何のために蒲田へ行ったか、わからないくらいである。
今回も、この店のとんかつを食べ、あまりのうまさに、ぼくは思わず泣きそうになった。
ぜひ末永く、頑張ってほしいとおもう。
夜は、埼玉県の「上福岡」で、知り合いとのんだ。
上福岡は、川越の手前にある急行も止まらない小さな街だが、じつは日本を代表する飲み屋街なのである。
駅前から奥へ歩くと、ぼくが好みの、「個人経営・どちらかといえばうす汚い店」が山ほどある。
こんな小さな街に、どれだけ酒好きがいるのかと、あきれるほどだ。
もともと、新河岸川からの流通拠点で、酒の荷揚げも多かったとのこと。
単位面積当たりの飲み屋の数では、日本で第4位なのだそうだ。
今回いったのは、「酒蔵 力(RIKI)」。
駅からだいぶ離れたところに、煌々と光を放っている。
レバー焼に、ロース焼、、、
イカ焼。
それに、もつ鍋。
どれも大変、うまかった。
知り合いとも、話は盛り上がったわけである。
そして、翌日、、、。
イスラム国の人質になっていた、湯川遥菜さんが、72時間の期限がすぎ、殺害されたことを知った。
はじめに知ったのは、宿のテレビ。それから、ネットを詳しくみた。
8月に誘拐されて、4ヶ月あまり。「いつ殺されるのか」と、毎日おびえながら暮らしていたことだろう。
それが最後に、あのような無残な形で命をうばわれる。
その無念さたるや、いかばかりであったかとおもう。
今回の件については、人質になっている二人は、危険を承知でシリアに入国したのだから、「自分が悪い」という自己責任論を言いたてる人もいるようだ。
しかしそういう輩は、「国家」のことを、何一つとしてわかっていない。
国民の「生命」は、日本国憲法にもうたわれているように、政府が最大の努力をはらって守らなければいけないものだ。
火事があり、失火原因を本人がつくったからと、消防士が火の中にいる人を助けないなどあり得ないことだろう。
そのような観点でみたときに、
「政府は今回、人質を助けるために、本当に最大の努力をしたのか?」
ぼくは報道をみながら、疑問におもった。
身代金の要求があったのだから、それを素直に、払えばよかったではないか?
元はといえば、イスラム国に捕らえられていた二人が殺害予告をうけたのは、安倍首相の配慮がたりなかったのが原因だ。
人質がいるのにもかかわらず、日本の首相が、それと敵対する勢力に一方的に肩入れすれば、このような事態になりえることは予想できたはずだろう。
湯川さんは8月に、そして後藤健二さんは10月に、イスラム国にとらえられ、身代金の要求はすでにされていたのに、交渉は遅々として進んでいなかったと聞く。
フランスのテロがあり、外務省も、今回の中東訪問は「タイミングが悪い」といっていたのに、首相は、
「フランスのテロ事件でイスラム国がクローズアップされている時に、ちょうど中東に行けるのだからオレはツイている」
と、うれしそうに語って出発したという話も漏れつたわってくる。
そうして自分の失敗により、人質が殺害予告をうけることになったのに、予告後の記者会見、第一声は、
「テロには屈しない」
と、強硬な姿勢にでる。
テロリストたちに、ほとんど、
「どうぞ人質を殺してくれ」
と、言っているようなものではないか。
湯川さんの殺害後、テロリストがのこる後藤さんを解放する条件は、「ヨルダンに捕らえられているテロリストを解放すること」に変わった。
これは他国が関係する分、ただ身代金を払うより、ハードルは上がっている。
日本政府には、人質の命を最優先にして、あらゆる可能性を排除せず、交渉してもらわなくてはいけない。
そのためには、
「安倍首相に、きちんとやるよう、ひと言いっておかなくてはいけない、、、」
ぼくは、おもった。
ちょうどそのとき、ツイッターのタイムラインに、きのう、首相官邸前で抗議行動がおこなわれるという報せがながれてきた。
ちょうど予定をあけてあったぼくは、そこに参加することにしたのである。
行きしなに、新宿で中村屋の「インドカリー」を食べていく。
これが何とも品のいい味、またうまいのだ。
この手の抗議行動は、わりと「古め」のものと、「新しめ」のものがある。
どちらでも、参加しないよりは、した方がいいのだが、新しめのやつの方が、ぼくのような初心者には参加しやすい。
古めの運動は、これまでの「左翼」のながれを汲んでいて、独特の古臭い、内輪なかんじが鼻につく。
それにたいして新しめの運動は、そのような左翼のながれと切れていて、運動の仕方が新しく、ぼくにはより「しっくり」とくるのである。
今回、ぼくが参加したのは、「怒りのドラムデモ」というもの。
これははじめて参加したのだが、「新しめ」の運動で、とてもよかった。
まずこの運動には、「ドラム隊」がいるのである。
このドラムが、「ドン、ドン、ドン」と、ちょうどロックの、8ビートのリズムをきざむ。
「安倍晋三は、健二をまもれ!」
「安倍晋三は、辺野古をこわすな!」
などのシュプレヒコールは、このロックのビートにあわせて叫ぶ。
古めのシュプレヒコールが、
「安倍首相は~、後藤健二さんを~、ま~もれ~~!」
などと、ちょっと間延びした感じなのとくらべると、タイトでいいのである。
それからマイクをもってシュプレヒコールをする人も、古めのやつなら、きれいな声の女性だったりして、印象として、「主張」を叫ぶ感じがする。
それにたいして怒りのドラムデモは、男性が、ドスのきいた声で先導し、「怒り」の感情を直接表明するもので、主張として「思想」のニオイをもたないぶん、運動の素人には叫びやすい。
きのうはこのシュプレヒコールを、2時間にわたって延々と、首相官邸にあびせかけた。
官邸前から、歩道を数百メートルにわたって1000人以上の人がうめつくし、やはりツイッターをみて来たのだろう、運動には素人の、「いかにも一般人」という人も多かった。
声を上げながら、ぼくがつくづくおもったのは、
「やはり東京は、首相官邸があるからいい」
ということ。
京都だと、安倍首相にたいする抗議デモをおこなっても、安倍首相はそこにはいない。
抗議の声は、沿道の、一般の人だけが聞くことになるから、どうも「怒り」を、むき出しで表明するのは憚られるところがある。
ところが東京なら、首相官邸前で抗議すれば、安倍首相は、すぐ近くにいる。
シュプレヒコールの先導者は、大きな拡声器をつかうから、その声は、安倍首相にも十分とどくのだ。
ぼくもきのうは、自分の想いを、安倍首相にたっぷりぶつけることができた。
2時間の抗議がおわり、参加者は三々五々、かえっていく。
ぼくも、食事をすることにした。
行ったのは、渋谷の台湾料理店「麗郷」。
台湾料理を食べるのなら、東京なら、ここだろう。
麗郷の名物は、「しじみ」。
ニンニクのきいたしょうゆ味で、大変うまい。
あと食べたのは、豚肉入りのちまきと、、
五目そば。
ビールのあとは紹興酒の熱燗をのみ、2時間、屋外で抗議をし、冷えきっていた体もあたたまった。
深夜0時発の夜行バスで、京都へかえる。
京都駅に着いたのは、朝7時。
最後に京都で、「旅のシメ」をしていくことにした。
この時間のこの場所なら、完全に、京都駅からすぐ近くにある「第一旭・たかばし本店」一択だ。
第一旭たかばし本店は、京都を代表するラーメン。
澄んだ豚骨スープが特徴で、きりっとした男らしい、しかも上品な味がする。
しかもこの店、
「早朝の開店直後が一番うまい」
として知られている。
深夜2時に閉まってから、スープを仕込むからだろう、5時半の開店には、いつもお客さんがズラリと行列をつくるそうだ。
早朝の第一旭は、ぼくははじめて食べたのだが、いや、スープがいかにも「作りたて」という感じ、味が澄みきっていて、死ぬほどウマイ。
ビールものみ、旅はようやく、終わりとなったわけである。
久しぶりの東京だったが、旧交をあたため、新しい出会いもあり、抗議にも参加でき、得るものは多かった。
ただし飲み食いに金を使いすぎたので、これからどうやって生活したらいいのか、途方に暮れているところである。
「調子に乗るのがダメなんだよね。」
そうだよな。
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