きのうも飲めなくなるまで酒を飲んだ。
酒を途中でやめるのは、酒に失礼なのである。
酒は、人によっては「相棒」とも言うけれど、ぼくにとっては「恋人」のようなものだ。ひとりの寂しさを忘れさせ、気分をよくさせてくれる、ありがたい存在である。
と言って、恋人ができれば、酒を飲まなくなるかといえば、そうではない。
好きな女と酒を飲むと、ひとりで飲むより楽しいから、酒はさらに進むことになる。
この酒なのだが、「適量を飲む」という考え方がある。健康診断などへ行くと、問診で、
「適量を飲むのは体にいいが、それ以上になるのは良くない」
などと、医師がもっともらしく言うわけだ。
こちとら飲み過ぎが体に悪いことくらい、百も承知なのだから、そんなのは屁みたいな話で、一切無視するのはもちろんのこと、健康診断も、もう受けないことにした。
適量主義は、医学的には正しいだろうが、酒の立場に立ってみれば、これほど失礼なことはないのである。
酒は、飲み始めると、こちらを一生懸命、気持よくしてくれる。毎日おなじ種類を飲み続けると、古女房のようなもので、こちらの体を知り尽くし、隅々まで行きわたる。
たしかに毎晩、
「十分気分がよくなったから、もうやめようか・・・」
そう思うタイミングはある。それだって、すでにかなり飲み過ぎてはいるのだが、ここで飲むのをやめるのは、まあ常識的な判断だとはいえるだろう。
しかしここで、よくよく考えてもらいたい。自分一人が気持ちよくなったからといって、それで行為をやめるのは、自分勝手ではないか?
相手があることなのである。
自分の都合で、勝手に途中で切り上げるのは失礼で、やはり頑張れるところまでは、頑張らないといけないだろう。
だから酒は、飲めなくなるまで、最後まで飲むのが、「礼儀」なのだ。
毎晩きちんと、頑張って飲み過ぎないといけないのである。
「つくづくアホだね。」
ほんとにな。
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