酒は毎日おなじものを飲むのが一番うまいのである。

PiPi 酒について

 
昼酒は「PiPi」でするようになっている。

PiPi

酒は毎日おなじものを飲むのが一番うまいのである。

 

 

昼酒は家でなければもっぱら「PiPi」でするようになっていて、週に3回くらい、ランチをアテにビールを飲む。

PiPi

おかずは毎回工夫が凝らされ、サイドメニューも3品、かなり手の込んだものが付いていて、しかもそれらがどれも「うす味」なのがいい。

店主のマチコちゃん自身が「うすい味が好き」ということもあるようだが、それだけでもないらしい。PiPiは毎日ランチを食べるお客さんも少なくなく、「濃い味だと飽きるから」とのことだ。

それでもマチコちゃん自身の好みよりは少し濃いめにしているそうだ。

 

きのうもランチを食べたのだが、きのうは夜も、PiPiのイベントに参加することになっていたから、マチコちゃんは、

「1日2回もここで食べて飽きないですか?」

と心配する。しかしたまにしか食べないお客ならともかく、ちょくちょく食べているお客なら、心配は無用だろう。

おなじ店に通い続けるお客にとって、「味」は、もちろん一定の水準以上である必要はあるけれど、「特別うまい」ことは必要としないだろう。多くのお客は、味をほかのお店と比較すらしていないはずだ。

そうではなく、味は「おなじである」ことが大事なのではないだろうか。

 

一つの味を食べ続けると、体の方が、だんだんその味に馴染んでくる。味を憶え、「ああ、またあの味が食べたい」と思い出すようになる。

そうして実際にそれを食べ、それが憶えていた通りの「おなじ味」だった時、「幸せ」を感じるものではないだろうか。

幸せは、「思っていた通りのものが実現する」時に感じるものであるように思う。食事の場合、それは自分で作るのならばともかく、外食なら、おなじ味、お馴染みの味を食べる以外に感じる方法はないだろう。

 

テレビ番組などの場合も、おなじような事があるのではないだろうか。このごろPiPiで土曜の午後、「吉本新喜劇」がかかっていて、それを見るともなく見るようになっているのだけれど、毎度おなじ調子である。マチコちゃんは、「特別おもしろいとは思わないけど、この『安定感』がいい」という言い方をしていた。

関東なら「笑点」や「サザエさん」になるのだろうが、予定調和の、新しさのかけらなど何もないところにこそ、人気の秘密があるのではないかという気がする。

 

酒の場合は、特にそれが強いのではないかと思う。

酒を飲み慣れない人が甘い酒しか飲めないことからもわかるように、酒の味は「味覚」で感じるものではないだろう。舌を含めた体の全体が酒によって反応する、その変化を楽しむものだと思う。

その変化は酒独特だから、飲み慣れないうちは体がそれをうまく迎え入れることができずに気持ちが悪くなったりする。でもそれを飲み続けることで、体が酒の反応に慣れ、「心地よい」と思えるようになるわけだ。

 

酒の中でも日本酒は、さらにそれが強いものであると思う。酒を飲み慣れている人でも、「日本酒は飲めない」という人は、少なくないのではないだろうか。

独特の「臭み」があり、さらに体におよぼす影響が強いから、すぐに眠くなったりする。

しかし日本酒こそは、飲み続けることで初めてうまさが分かってくるものだろう。臭みも、慣れると「それがいい」という話になる。

 

しかも日本酒の場合には、酒の銘柄によって体への影響が異なる。「酔い心地」がそれぞれに独特なのである。

「きき酒」などはその「ちがい」を楽しむものだろうが、ぼく自身はそういうことにはあまり興味が持てないタイプだ。

それよりは、おなじ銘柄を「ひたすら飲み続ける」のがいい。

 

飲み続けることで、体がその銘柄の酔い加減をしっかり憶え、それに合わせるようになる。

「古女房」のような感覚となり、この上ない酔い心地を得られることになるのである。

 

酒は、ある水準以上である必要はあるけれど、とくべつ上等である必要はない。

ぼくは京都へ来てから「月桂冠上撰」にしているが、「これが全ての酒の中で一番うまい」と思っている。

 

蛇足だがおなじ理由で、「休肝日」もあまり意味がないのではないだろうか。

よっぽど飲み過ぎた翌日などなら別だけれど、体は決まった時間になると酒が入ってくるのを待つようになるのだから、だったら規則正しく、毎日飲むようにした方が、むしろ体にいいのではないかと思っている。

 

「それでも飲み過ぎは体にはよくないよ。」

チェブ夫

そうだよな。

 

 

 

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