京都大宮の顔見知りの送別会に参加した。
京都の人の「察する文化」は雑談が苦手でポツンとしているのが好きなぼくにはありがたいのである。
予定が続くときは続くもので、土曜日の晩に妹と会い、日曜は昼から「ハカピス祭」、そして夜は送別会だった。京都大宮で顔を合わせる男性が郷里に帰ることになったからで、ぼくも呼んでもらったのだ。
男性は30歳くらいで、家はお寺なのだそうだ。仏教系の大学を出、その大学の職員をしばらくし、いわば着々と準備してきたという事なのだろうが、いよいよ住職を継ぐそうである。
お寺の事情はよく知らないが、京都などのお寺はともかく、田舎のお寺は経営も大変らしい。熱心な檀家さんは別なのかも知れないけれど、多くの人は葬式のとき以外、お寺と接することはないだろう。
でも今は、社会も大きな変革期となっていて、ひとり暮らしの人も多いし、心の拠りどころを求める人はこれから増えていくのではないか。ネットを活用したりして、お寺がそういう人たちの受け皿になることだってできそうな気がする。
男性は聡明で人当たりもよく、おまけに二枚目ときているから、檀家のおばさんウケもよさそうだ。
ぜひ頑張ってもらいたい。
送別会が行われたのは、京都藤井大丸裏にある「CONGRATS Fine Music&Dining」。
最近出来たところらしいが、2階はレストラン、3階はバー、そして屋上でバーベキューができるようになっている。
夕方からのスタートで、季節的にもまだそれほど暑くなく、風もさわやか。まわりのビルを眺めながらのバーベキューもいいものだ。
3時間で、2時間の飲み放題、肉も野菜もたっぷりあって料金は5千円だったから、悪くないのではないかと思う。
会場に少し遅れて到着したら、バーベキューはすでに始まっていた。
バーベキューは「焼き場」を担当するかどうかが、考えるべきこととして大きいと思うけれども、今回は料理好きの若い男性諸君も多く、人手は足りていそうだし、おまけにこちらは昼からの酒でかなり出来上がっていたから結局お任せさせてもらった。
酒とフォークを手に持って、うろつき回りながら酒を飲み、焼き上がったものが出てくると、その皿に近寄ってフォークを突き刺して食べ、それでまたうろつき回る。このごろ立ち飲みに慣れたせいか、そういう落ち着きのない飲み方が性に合うようになった。
そのうち腹が落ち着くと、みんなからは少し離れたところに座る。
ぼくは「雑談」が苦手なのだ。
これはほんとに昔、中学くらいの時からそうで、話せば語り出してしまうクセがある。それも「人生」について語ってしまうものだから、大学時代は「人生」とあだ名を付けられ、煙たがられたこともあった。
それは今もまったく変わらず、語るような場でないときは、人が楽しくしている様子を離れて眺めているのが楽しい。
しかしこうして一人で「ポツン」としていることは、京都へ来て、ようやくできるようになった気がする。それまでは、一人でいると「寂しそう」と思われるのだろう、何かとかまわれることになったし、実際そうして人の輪に入っていないと、居場所がなくなってしまうことも少なくなかった。
でもきのうは、たまにマチコちゃんなどが寄ってきてはくれるけれど、すぐいなくなり、心置きなく一人にしておいてくれる。こちらは楽しんでいるのだから、それでいいのである。
ほかにも年配の夫婦がいて、やはり端の方にポツンと二人で座っているが、ニコニコと楽しそうにしているから、あまり誰もかまわない。
このことは、「京都の美点」だとつくづく思う。人を一人ひとりきちんと見て、その人の気持ちを推しはかる。
「ポツン」としているのが、「誰かと話したいのだけれど、知らない人ばかりできっかけがつかめない」と見れば、誰かがそこへ寄って行くし、そうでなく、「一人でいたいのだろう」と見れば、そのままにして放っておく。十把一からげに「輪に入れる」ようなことはしない。
飲み屋でも、社交辞令で話しかけてくる人は、京都では少ないのではないかと思う。「仕事でもないときに社交辞令で話したくはない」と思うぼくにはありがたい。
このことは、京都以外の人から見ると「京都人の冷たさ」として捉えられがちなところだろう。
でもそうではなく、「察する文化」の高度な現れなのだとぼくには思え、それが「居心地よい」のである。
バーベキューは10時で終わり、二次会にはそこから北へ少し上った「麦潤」へ流れた。
地ビールを出す店で、10種類以上のビールがある。
きのうは昼からの長丁場だったけれども、飲み過ぎて寝てしまうこともなく、適度に酒をさましながら雰囲気を楽しむことができた。
こういう時間の過ごし方も、京都へ来てからできるようになったことである気がしている。
「みんないい人達でありがたいね。」
ほんとにな。
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