京都大宮へ飲みに出た。
飲めば「まさかの展開」もあるのである。
今週はそこそこ仕事を頑張り、大宮へ飲みに出るのは一週間ぶりである。といっても飲んでいないわけではなく、昼にはマメに、「PiPi」でビールを飲んでいる。
きのうも昼は、PiPiでビールだったから、今週は都合4回PiPiで飲んだ。
昼酒は、たかがビール1本で「よく飲んだ感」が味わえるから、お得である。また飲みすぎて翌日を棒に振ることがないのもいい。
外飲みが週イチペースだと、「どこで飲むか」はよくよく考えないといけない。数少ない機会で、飲み屋への義理をそれなりに果たさないといけないからだ。
「常連」としての立場をキープするためには、やはり「週一回」顔を出すのが最低ラインとなるだろう。しかし義理がある飲み屋が5~6軒になってしまうと、一回でまわるのは難しくなる。そこで前の週に飲んだ飲み屋は今週ははずすようにして、「2週に一ぺん」のペースを維持しようとするわけである。
家をでる時間がもう9時になっていたから、12時までとして、3軒ではなく、2軒の飲み屋へ行くことにした。これなら時間的に無理なくまわれる。
先週は行かなかった立ち飲み「てら」と、一杯しか飲めなかった「スピナーズ」へ行こうと決め、それをつい、ツイッターに書き込んでしまったところ、ソッコウで返事が来た。
マチコちゃんである。
「壺味あいてるよ・・・」
たこ焼き「壺味」は日曜に行っていたから、今週は「失礼しよう」と思っていたのだけれど、お世話になっているマチコちゃんからの誘いとあれば仕方ない。
家を出る前からいきなり予定が狂ってしまったわけだが、それはそれで、いいのである。
壺味では、まずビール。
それから「たこキュウ」、
それにサーモンのたたき。
サーモンのたたきは、初めは頼むつもりがなかった。しかし壺味には、週末になるとかわいらしい女性の店員がいるのである。見つめられ、ニコリとされて、「おすすめですよ」と言われてしまい、断る方法があるのなら教えてほしい。
しかしもちろん、壺味は料理はどれもおいしく、サーモンのたたきもうまかった。たっぷりの青ネギをかけるのが、おいしく食べるポイントとなる。
壺味では、マチコちゃんと、その仲間たちと話をした。飲み屋もこうして、「飲み仲間」といえるような人ができるとラクである。自動的に居場所があり、居心地よく時間をすごせる。
壺味は飲み屋のなかでは「ゆっくり」とした空気が流れる場所だ。話しても、また話さずひとりで飲んでいても、家にいるかのようにくつろげる。
ビールを飲み終わって壺味を出て、「てら」へ向かった。
ここにも知り合いが何人かいたので、ぼくはその横に立たせてもらった。
頼んだのは、豚天はきのうも売り切れだったので、鶏天おろしポン酢。
それにスパサラ。
スパサラは、取り放題のキャベツで巻いて食べるとまたうまい。
大宮には、常連さんの一人として、ブルース・ウィルスに似た若いアメリカ人がいる。日本に来てまだ数年だそうだが、流暢な京都弁をあやつり、ぼくなどよりはるかに大宮の店や常連さんについて詳しい。
きのうも横で、彼が他のお客さんと達者に「ツッコミ」を入れ合うのを、ぼくは目を丸くして眺めていた。京都に来て4年になるが、ぼくはいまだに「ボケとツッコミ」がうまくできない。おそらくだが、アメリカなど西洋の「ジョーク」は、ボケやツッコミと似たところがあるのではないだろうか。
さて酎ハイを2杯飲んでてらを出て、早めの時間に「スピナーズ」へ向かった。
ここで、飲めば「まさかの展開」があることを、あらためて実感したのである。
スピナーズで頼んだ赤い飲み物は、「トマト酎ハイ」だ。スピナーズには数カ月前から、酎ハイのサーバーが導入されている。
これがまず実にうまく、ぼくがこれまで飲んだ全てのトマト酎ハイのなかで、スピナーズのが一番うまい。トマトジュースとレモン酎ハイの配合がいいのだろう、コクはしっかりとありながら、すっきりとして飲みやすい。
またトマト酎ハイがいいところは、「ツマミを兼ねてくれる」ことである。
酒がそれほど強くないから、ぼくは酒を飲むときには、タンパク系のツマミをかならず頼む。そうしないと悪酔いしてしまうからだ。
ところがトマト酎ハイを飲むときにはツマミが必要ない。トマトに含まれるアミノ酸の作用だろう、それだけ飲んでも気持ち悪くなることがないのである。
飲んでいると、マチコちゃんの仲間たちが流れてきた。
みな若く、20代の前半だ。
大宮は、常連さんの年齢層が幅広い。20代から60代までがいて、多くの店で、それらの人たちが共存する。
年齢が高い方からしてみれば、それは何ともありがたいことである。年を取れば取るほど、若い人と知り合うことは貴重な機会になっていく。
カウンターの、若者と反対側には、ロバート・デ・ニーロ似の男性と北野大似の男性がいて、「関西弁」の話になった。
「関西弁の『おおきに』は、関東弁でいえば『どうも』に当たるのではないか」
とぼくが言うと、関西では「どうも」は「どうも」で、使われるのだそうだ。
お礼の言葉として、「どうも」「おおきに」「ありがとう」の順にていねいになり、「どうも」はどちらかと言うとそっ気ない印象があるとのこと。さらにそれらが、言葉が発せられるときのイントネーションによって、意味合いが大きく変わってくるという。
「『ちゃう』の5段活用というのがあるんですよ・・・」
ロバート・デ・ニーロ似の男性は言う。「ちゃう」ひとことの、イントネーションを変えることで、様々なニュアンスを表現できるのだという。
「世界でもっとも短い『愛を告白する言葉』が何だか知っていますか?」
ぼくが口ごもっていると、
「関西弁で、『・・・な?』というのがあるんですよ」
とのこと。相手を見つめ、グッと間をためて、そのあげく、「・・・な?」と同意を求めるそうだ。
「関西は、さすが京都が千年以上都だっただけあって、表現の奥行きが深いですよね・・・」
ぼくは言った。お礼の言葉にしても、関東では「どうも」「ありがとう」の2つだろうし、イントネーションで「感情を込める」ことは考えるにせよ、「ニュアンスを言い分ける」ことまでは、関東では考えないのではないだろうか。
そう言うと、北野大似の男性が、都「だった」というところに反応し、
「京都人は、天皇さんはただ江戸へ『出かけている』だけで、いずれ『帰ってくる』と思ってますから」
と、笑いながらやんわりと釘をさしてくる。
京都には「御所」があり、遷都の勅旨も出ていないのだから、その通りなのである。
トマト酎ハイを飲み、話をしながら、ぼくはチラチラと後ろを見ていた。おきれいな女性が二人、テーブル席に座っていたからである。
カウンター席ならまだしも、テーブル席に座っている知らない女性客に、気安く話しかけないことは飲み屋の「マナー」といえるだろう。ぼくもそれを守ってチラ見するだけにして、話しかけないようにしていた。
しかしもうかれこれ1時間以上、女性客はそこにいる。そろそろ退屈していてもおかしくはない。
おまけにぼくは、もう酎ハイを3杯のみ、だいぶ気分がよくなっている。酔っ払いが多少ちょっかいを出したとしても、もうマスターに叱られたりはしないはずだ。
そこでぼくは、女性客を振り返り、小首をかしげ、満面の笑みで手を振ってみた。
するとその女性客・・・。
「高野さんですか?」
「・・・・・・???」
まさしく、「まさかの展開」である。
聞くと二人はぼくのブログを見てくれていて、それでスピナーズへ初めて来てみたのだそうだ。
そうなれば、もう遠慮することはない。
ぼくは席を移動して、早速二人と話し込んだ。
二人は京都の大学時代の友達で、一人は大宮の近くへ住み、もう一人は名古屋に住んでいるそうだ。名古屋はぼくも2年ほどいたことがあり、常連だった店を言うと、「行ったことがある」という。
これは話が盛り上がらないわけがないだろう。それからさらに1時間以上、ぼくは夢のような時間を過ごすことになったのである。
二人とは連絡先も交換し、再会を期して別れた。
帰宅予定としていた12時はとうに過ぎていたのだが、もちろんそれは、何も問題ないのである。
しかし飲み屋は、何が起こるかわからない。
だからこそ、飲み屋通いは「やめられない」わけである。
「デレデレしちゃって見てられなかったな。」
ほんとにな。
◎関連記事
出会いが広がるのはありがたいのである。(鯛とタケノコのご飯、池井健建築事務所3周年)
飲み屋は行けば長くなるのである。(酒房京子、Kaju、スピナーズ)
人格は欠落にこそ宿るのである。(新福菜館三条店、スピナーズ、酒房京子)
コメント
いつも楽しく読んでます。
今度京都にいった際はお会いできたら嬉しいです。
名古屋に住みはじめたのですが、どこか高野さんのように飲みに行けるとこを探してます。
名古屋でいきつけだったお店を教えていただけませんか?
久屋大通駅から北へ行ったところにある、ブラッサリー・アブサンという店なんですよ。
オーナー森さんか、チーフ池戸くんにぼくの名前を言ってもらえば、よくしてもらえると思います(^_^)
http://tabelog.com/aichi/A2301/A230103/23002725/dtlrvwlst/793757/
四条大宮で飲んでみたいです!!
ぜひぜひ。おすすめですよ。
ありがとうございます!
お食事も雰囲気も素敵なお店ですね!
行ってみます♪
ぜひぜひ。
よろしくお伝え下さい。