沖縄の北部にある東村・高江地区では、米軍基地のヘリパット建設を阻止するための戦いが、日々つづいている。本土の人による支援と協力が求められている状況だ。
沖縄県内の米軍基地をこれ以上増やさず、できれば減らしていくことについて、沖縄の人は政治的には、できることはほぼ限界までしているといっていい。何しろ沖縄県知事、沖縄選出の衆参の国会議員全員を、基地建設に反対する人を当選させているからだ。
にもかかわらず安倍政権は、その沖縄の人たちの思いを無視し、辺野古で、そして高江で、基地建設を強引に進めようとしている。だったら沖縄の人たちも、基地建設を実力で阻止するしかないということになる。
その場合の具体的な方法は、僕が高江にいた1週間ほど前までの時点ではおもに2つ。
- 工事の作業員が米軍基地内に入るのを止める
- ヘリパッド建設のための砂利がトラックで米軍基地内に運ばれるのを止める
もちろんそれを、暴力に訴えるのではなく、非暴力でやらなくてはいけない。
1. 工事の作業員が米軍基地内に入るのを止める
作業員が米軍基地に入るのを止めるためには、米軍基地への入り口の南北2ヶ所で、プロテスター(抗議者)たちが検問をおこなう。一般の車両なら通し、作業員が乗った車両なら、Uターンして帰ってもらう。
作業員は、朝早く米軍基地にやってくる。なのでプロテスターも5時にポイントに集合となっていて、僕も毎朝3時に起きていた。
パトカーがやって来たりはするのだが、それは無視。パトカーの警官は、「交通の妨害ですからやめてください~」と言うだけで、プロテスターを排除するための具体的な行動は取らないからだ。
プロテスターを排除するのは、機動隊。機動隊はこの方法を始めたころは、作業員の車とまったく連携が取れていなくて到着するのが遅かったから、作業を半日以上止めることもできた。でもだんだん来るのが早くなってきて、効果が薄くなってきたところはある。
機動隊がやってきたら、何台もの車で機動隊に追い抜かれないようにしながら、車をノロノロ運転させて作業員の車が基地に入るのを遅らせる。でもそれも、パトカーに止められたら、これは止まらないと違反になるから、それで終りとなる。
2. ヘリパッド建設のための砂利がトラックで米軍基地内に運ばれるのを止める
方法1 車を何台も路上に停める
砂利を積んだトラックは、機動隊の車と隊列を組んでやってくる。だからこれを止めることは実際問題としては難しく、ある程度遅らせるしか方法がない。
そのための方法の一つが、トラックが通る道に車を何台も、たがいちがいに停めること。
もちろんすぐに機動隊がやってきて、車はレッカーで移動される。
またプロテスターたちは囲い込まれ、それ以上邪魔ができないようにされる。
そのあいだにトラックは通過してしまうことにはなる。
でも車の台数が多ければ、レッカー移動するにも時間がかかる。これでトラックの通過を2時間以上遅らせることもできる。
方法2 座り込む
それからトラックを停めるためのもう1つの方法が、座り込むこと。これももちろん、人数が多ければ多いほど効果がある。
機動隊が、これも排除しにやってくる。
何しろ機動隊は、沖縄県警だけでなく、警視庁・福岡・大阪・愛知・千葉と全国から集められているから、すごい人数なのだ。
僕も座り込んだこの日は、4人の警官に抱えられて排除され、警察バスのあいだに囲い込まれてしまった。
しかしそれでもやはり、こうして座り込みを全員排除するためには時間がかかり、砂利を積んだトラックを遅らせることはできる。
プロテスターは警察の動きを見て、ちょっとでも効果がありそうなことを考え、実行する。すると警察は対策を練ってくるから、その手は数日で効果がなくなる。
するとプロテスターは、また新しい手を考え、実行する……。まさにイタチゴッコみたいなものだ。
さらに警察は、全く何もしていないプロテスターを「公務執行妨害だ」と不当に逮捕したりもする。また基地近くに設けられているプロテスターの拠点のテントを撤去しにきたりする。
プロテスターは、その一つ一つに対応していかなくてはいけない。だから僕も2週間の滞在中、朝4時に宿を出発し、帰るのが夕方6時頃になったりすることもザラだった。
僕はパソコンとネットがあればどこでも仕事ができるから、沖縄でも半日は仕事するつもりにしていた。でも仲良くなったプロテスターが不当に逮捕されたとなれば、それは警察署まで抗議に行かなくてはいけないし、テントが撤去されそうだとなれば泊まり込みもしないといけない。
なので2週間の滞在中、仕事もブログの更新も、まったくする時間がなく、かなりキツイ状況だった。おなじようにギリギリのところで頑張っているプロテスターは、たくさんいる。
なので今、本土の人の支援と協力が求められている状況だ。米軍基地の問題は、沖縄だけのことではない。日本人がみんなで考え、引き受けていかなければいけないことだ。
高江に応援に行かれる人は、ぜひ行ってほしい。それが難しい場合には、ぜひ支援のお金を送ってほしい。
反差別の団体である「男組」が全国のプロテスターを沖縄へ送るべく、沖縄に拠点を作るために動いているなど、いま沖縄に向けた新しいいくつもの動きが生まれ始めている。
沖縄では、80歳を超えた「おばあ」が何人も、基地の抗議に参加している。高齢の人たちは、沖縄で米軍による犠牲者が何人も出て、それから沖縄が米軍に占領され、その後日本に復帰しても、いまだ沖縄に圧倒的に多くの基地が置かれ続けてきているのをすべて見て、その上で戦争のための基地に反対している。
基地を押し付けられている沖縄は、現在の日本が持っている問題を、もっとも鋭い形で表しているといえると思う。
日本人の誰にとっても、それは決して他人事ではないはずだ。