マーボー豆腐が家庭料理として人気なのは、やはり「安くできる」からだろう。豆腐が安いのはもちろんのこととして、豚のひき肉も、100グラムで100円ほどだから、豚こま肉よりさらに安い。
しかも豚肉も豆腐も栄養があるのはいうまでもないわけで、特に豚肉はニンニクとあわせると、体をあたため、疲労を回復する効果がハンパない。
その豚ひき肉を、もっとも簡単に、しかもおいしく食べる方法がマーボー豆腐となるわけだから、これは食卓にしょっちゅう上がることになっても仕方ないというものだ。
とはいえおなじものばかりを食べ続けるわけにもいかないから、マーボーも、やはり変化をつけることは必要だ。
そのためには、一つは、具材をちがうものにする手がある。豆腐のかわりにナスや春雨などを使うのは定番だし、そのほかにも大根やカブ、白菜やほうれん草、さらには牡蠣やイカなど、マーボーには、やわらかいものなら何でも合う。
それから、調味料を変える手もある。マーボーは、通常みそベースで作ることが多いけれど、これをしょうゆベースで作ると、また大変うまい。
今回の「マーボーうま煮」は、そのような、マーボーの変種の一つだ。
味はしょうゆベースのうす味で、辛さも控えめ、具材は豆腐のほかに白菜、ニンジン、たけのこと、色々入っている。
「中華風うま煮」に近い感じで、これがまたとてもウマイから、絶対に作ってみたらいいのではないかと思う。
マーボーは、工程はやや多めになるが、作るのは決してむずかしいことはない。具材や調味料を順番に入れ、炒めたり煮たりするだけだから、初心者でもあまり失敗はないと思う。
コツは、まずひき肉をよく焼くこと。ひき肉の火の通りが足りないと、味にシマリがなくなるからだ。
あとは弱めの火でじっくり煮て、肉や野菜にしっかり味をふくませる。
中華料理店が強火でやるのは、少しでも早くつくって効率を上げるためで、家庭ではほとんどの場合、弱めの火でやるほうが失敗が少ないし、煮たりする時間が長めのほうが、そのあいだに野菜を切ったり、調理器具を洗ったりもできるから、やりやすい。
フライパンに、
- サラダ油 大さじ2分の1 (テフロンなら、べつに入れなくてもい)
- 豚ひき肉 150グラムとか
を入れて弱めの中火くらいにかけ、5分くらい、スプーンや木べらで押しつぶしてほぐしながら、肉汁が完全に飛び、さらに焼色がついてくるまで、じっくり炒める。
サラダ油・大さじ1くらいを足し、
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 豆板醤 小さじ1
を入れ、弱火で2~3分、じっくり熱して味をひき出す。
- 酒 大さじ2
- みりん 小さじ2
- 薄口しょうゆ 大さじ2
- オイスターソース 小さじ2
- コショウ 少々
を加え、弱火で1~2分炒めて、肉に味をふくませる。
- 白菜の茎 1枚分程度 (2センチ幅くらいのそぎ切りにする。まっすぐ切ってしまってもいいのだけれど、そぎ切りにしたほうが、味がしみやすくなる)
- ニンジン 細いところ4センチほど (ニンジンは、入れすぎると全体がまっ赤になってしまうから、少なめにするのがコツ。皮をむく必要はなく、2ミリ厚さくらいの短冊にする)
- タケノコ 4分の1~2分の1本 (2ミリ厚さくらいに切る)
を加え、さらに1~2分弱火で炒め、野菜に味をからませる。
- 水 2カップ
- 豆腐 2分の1丁 (好みの大きさに切る。きのうはスプーンですくい、ちょっと大きめにした)
を入れ、5分くらい、弱めの火でコトコト煮る。
白菜の葉・2枚分(ざく切り)を加え、さらに5分ほど、ニンジンがやわらかくなるまで煮る。
小口切りの青ねぎ(または白ねぎ)を、1つかみほど、ドバっと加え、ひと混ぜしたら、
- 片栗粉 大さじ2
- 水 大さじ2
の水溶き片栗粉を、混ぜながら少しずつ加えてトロミをつける。
- ゴマ油 小さじ1
- 酢 小さじ1~2
を加え、ひと混ぜしたら火を止める。
皿に盛り、ご飯を添えると、もちろんいい。
これは、たまらん……。
味を含み、トロミがまとわりついた豆腐は、ひとくち食べると思わず気を失いそうになるほど死ねる。
ほっくりと煮えた野菜と、ひき肉がからんだのは、まさにこの世の極楽だ。
そしていうまでもなく、これがまた死ぬほど酒に合う……。
飲み過ぎるのは「体に悪い」といわれるが、その分、体にいいものを食べておけば、ちょっとくらい飲み過ぎたって平気なのだ。
「そんなことないよ。」
そうだよな。