肉じゃがを、マーボー味で作ってみた。これは要は、おとといの家常豆腐を、味つけは全くおなじままで、具材だけを豚肉とジャガイモ、にんじんなどにしたものだ。
味つけと具材は、分離して考えることができる。味つけがおなじでも具材がちがえば、おでんにも厚揚ににもなり、また逆に具材がおなじでも味つけがちがえば、肉じゃがにもカレーにもなるというわけだ。
家常豆腐も、マーボー豆腐と味つけはおなじで、具がひき肉と豆腐から、うす切り肉と厚揚げに変更されたと考えることもできる。だったらば、さらにそれをジャガイモやにんじんに変更しても、問題はないというものだ。
豚肉は、カレー用の角切り肉をつかうことにした。
ゴロゴロとした肉は、うす切り肉より食べ応えがあって、やはりいい。
ただし、角切り肉をつかう場合、料理の仕方にちょっと工夫が必要だ。
肉は火が通って硬くなると、味が入りにくくなる。うす切り肉やひき肉の場合なら、それでもまだ何とかなるが、角切り肉を味付けしないで火を通してしまったら、肉の中には味がまったくつかないことになる。
それだとやはりおいしくないから、西洋や中国の場合だと、肉にはあらかじめ下味をつけ、それから火を通すようにする。
もちろん下味をつけてから火を通すことで問題はないけれど、韓国にはそれをもっと手軽にやる方法がある。それが「炒め煮(ポッカ)」で、調味料の濃い原液で煮るようにして炒め、味をしみ込ませながら火を通す。
今回は、この方法で肉に火を通してみた。
ポッカはさすが肉を扱い慣れている韓国ならではのやり方だから、覚えておくのはおすすめだ。
青みは今回、細かく刻んだ水菜にした。水菜はサッパリとしているから、こういうコッテリとした料理の薬味にするには、とても適していると思う。
つくるのは、難しいことは何もない。材料を順番に入れ、炒めて煮るだけだから、初心者にもおすすめだといえると思う。
フライパンに、
- サラダ油 大さじ2
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 豆板醤 大さじ1
を入れて弱火にかけ、2~3分じっくり熱して味をひき出す。
一度火を止め、
- 八丁赤だしみそ(または普通のみそ) 大さじ1
- しょうゆ 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 酒 大さじ2
- オイスターソース 小さじ1
をよく溶き混ぜて、
- 豚角切り肉 200グラム程度
を入れ、よく絡める。
このまま10分くらいおいておけば、まさに「下味をつける」ことになり、さらによく味がしみる。
弱火をつけ、5~10分、じっくり炒め煮して火を通す。
- ジャガイモ 2個 (皮をむき、2~3センチ大に切る)
- にんじん 1本 (2センチ大の乱切りにする。皮は別にむかなくていい)
を加え、中火にしてさらに1~2分炒め煮したら(野菜は煮ながらでも味がしみるので、ここは簡単でいい)、
- 水 2カップ
を入れる。
煮立ってきたら、弱めの中火くらいの火加減、ある程度しっかり煮立つようにしながら10~15分くらい、ジャガイモが好みのやわらかさになるまで煮る。
味をみて塩加減し、
- 片栗粉 大さじ2
- 水 大さじ2
の水溶き片栗粉を、混ぜながら少しずつ加えてトロミをつける。
- ゴマ油 小さじ1
- 酢 小さじ1~2
を加え、ひと混ぜして火を止める。
皿に盛り、1~2センチのざく切りにした水菜と、粗挽きコショウをかける。
好みでパルメザンチーズをかけてもいい。
これは、ウマイ……。
肉にも野菜にも、コッテリとしたピリ辛味がしっかりとしみている。
ほくほくとしたジャガイモが、また死ねる。
これが実は、食べていて、非常にカレー粉を入れたくなった。実際、これはカレー粉を加えると、完全に「おいしいカレー」になるのはまちがいない。
その場合カレー粉は、大さじ1くらいを炒め煮するときの調味料に入れるのがいいと思う。
あとは、アサリのみそ汁。
これも、ニンニクを1かけ入れると大変うまい。
- アサリ 200グラム
は、
- 水 2分の1カップ
- 塩 小さじ2分の1
の塩水に30分~1時間ほどひたし、両手で殻をガシガシとこすり合わせながら、水を4~5回替えてよくあらう。
鍋に、
- 洗ったアサリ
- 水 2~3カップ
- 酒 大さじ2
- ニンニク 1かけ (尻の硬い部分をおとし、軽く押しつぶしてうす皮を取る)
を入れて中火にかけ、出てくるアクを取りながら、殻が全部ひらくのを待つ。
殻がひらいたら火を止めて、味をみながらみそを溶き入れる。
そしてこのマーボー味の肉じゃがも、アサリのみそ汁も、酒にこの上なく合うわけだ。
これだけ酒に合う肴があれば、飲み過ぎてしまうのは、「雨が降れば濡れる」というようなものだから、仕方ないのではないかと思う。
「ちがうから。」
そうだよな。